アメリカのトランプ大統領はロシアのプーチン大統領との電話会談で、ロシアとウクライナの戦闘終結に向けた交渉を始めることで合意したと明らかにしました。
【写真を見る】握手するトランプ大統領とプーチン大統領(2019年)
トランプ大統領とプーチン大統領が電話会談 戦闘終結へ“交渉開始”
小林由未子キャスター:
12日、アメリカのトランプ大統領とロシアのプーチン大統領は電話で会談を行いました。その中で、ロシアとウクライナとの間で戦闘終結に向けた交渉を開始することで合意したということです。
また、トランプ氏は「(戦闘終結は)そう遠くない将来に実現できると思っている」としています。さらに、最初の直接会談については、遠くない将来にサウジアラビアで行われる見通しともしています。
現在のウクライナの状況ですが、クリミア半島と東南部四つの州の大部分をロシアが掌握している状態です。
これまでの両国の主張です。
【ウクライナ】
▼ロシア軍の撤退・領土奪還
▼被害の責任追及
▼NATOの加盟
【ロシア】
▼東部4州もロシア
▼ウクライナの非武装化
▼ウクライナのNATO加盟反対
こうした中、アメリカのヘグセス国防長官の12日の発言です。
まず、領土については「2014年以前の国境に戻ることは、非現実的な目標であると認識しなければならない」としています。
また、ウクライナのNATO加盟について「和平交渉での現実的な成果になるとは思わない」と発言しています。
そして、戦闘終結が実現したら、「平和維持部隊はNATOの枠組み以外で派遣。安全保障のためにアメリカ軍が派遣されることはない」としています。
ホラン千秋キャスター:
トランプ大統領が就任してから大きな動きが出てきたと思いますが、この動きに関して秌場さんはどのように分析されていますか。
TBS報道局 前外信部長 秌場聖治さん:
「バイデン氏が長期的にやって実現できなかった戦闘終結をあっという間にやる」とトランプ大統領はずっと言ってきました。まさにそこで動き出したという意味では、勢いはあるなと思います。
ホランキャスター:
その戦闘の終結の仕方も重要になってきますよね。
秌場聖治さん:
トランプ大統領が言っていることは、これまでゼレンスキー大統領や欧米諸国が言ってきたことに対してほぼゼロ回答です。みんな薄々は気づいていたことでもありますが、それをあえて言ってしまうのが、いかにもトランプ政権流だと思いますね。
井上貴博キャスター:
停戦することはとても重要だと思いますが、どこかに落としどころを見出さなければいけない。その中で、トランプ大統領が言っている、「ウクライナの一部をロシア領として認める」ということになると、中国や領土を拡張しようとしている国に対する危険なメッセージになってしまう。
結局のところ、大国が力で現状変更することを肯定してしまうことになり得ませんか。
秌場聖治さん:
肯定することになり得るので、これまで欧米諸国や日本も反対してきました。よくトランプ大統領は「コモンセンス」(常識的)という言葉を使いますが、今回プーチン大統領も「コモンセンス」という言葉を口にしました。
「現実をもっと見よう」と、「今までの手法では無理だから、こうやります」という、ガザのときと似たようなアティチュード(姿勢・考え方)だと思います。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
トランプ大統領は、バイデン氏と違う手法で問題を解決するということと、ワシントンの官僚たちが積み上げてきたことを否定して、自分は違う枠組みのところで解決するんだということをアピールしたいわけです。
しかし、ロシアが侵略行為をしたことは明らかで、国際法上それは認められません。プーチン大統領が無罪放免だということは、国際法から認められないと、ヨーロッパの国々ははっきりと言っているので、トランプ大統領の「とりあえずここで手を打ちましょう」という戦略はそう簡単には進まないと思います。
トランプ大統領は「とにかくこの問題を早く解決して、アメリカの最大のエネルギーを中国に向けたい」、「アメリカの当面の最大の向き合う相手は中国だ」というところが今回の判断の背景にはあると思います。
井上キャスター:
このままいくと、ウクライナだけが割を食ってしまう結果になりかねないと思います。欧米の言う通りにして歩んできても、結局大国が侵略してきたときに何もしてくれない、NATOにも入れてもらえない。二度とロシアが侵略しないような約束が欲しいはずですが、それはどのようにしていくのでしょうか。
秌場聖治さん:
まさにそれがここからの交渉のポイントだと思います。
ヘグセス長官も「今後再発しないための仕組みを作ることが大事」だと言っています。ただ、「そこに対するアメリカの関与は“ミニマム”」だと。ヨーロッパ諸国に対して、「ヨーロッパの安全保障はヨーロッパでやってください、もっと努力しなさい」ということも同時に言っています。
実際、平和維持部隊のようなものができるとしても、それはNATOの部隊ではなく、NATO憲章5条、つまり「集団的安全保障は発動しない」という発言もしているので、相当引いた立場で構えています。最終的にどこに落とすかはまだ読めないですね。
「ウクライナは明日の東アジア」岸田前総理は危機感も…
小林由未子キャスター:
一方で岸田前総理は、2023年3月、ロシアによるウクライナ侵攻について「力による一方的な現状変更の試みが行われている現実を目の当たりにし、私はウクライナは明日の東アジアかもしれないと強い危機感を覚えました」と発言をしています。
これについて、星さんは“台湾有事”を想定していると話していました。
星浩さん:
台湾はどこの国とも同盟関係がありません。今回のウクライナがNATOとの同盟関係に入っていなかったのと同様に、その隙を狙われました。仮に中国が台湾を武力統一しようとしてきた場合、同盟関係で台湾を守るという枠組みは残念ながらありません。
おそらくアメリカは中国と向き合う中で、アメリカには「台湾関係法」という台湾の問題を守るという法律がありますが、これは国内法であり、同盟関係ではありません。
そうするとアメリカは、「いずれはアメリカも対応するが、その部分は日本の関与も強めてくれ」とおそらく要求すると思います。
“台湾有事”となった場合は、単に危機感を煽るだけではなく、日本と台湾との関係や、中国との関係をどのように組み立てていくかを考えていく時期になっていると思います。
井上キャスター:
トランプ大統領は色々なところで仲介をして自分の手柄にはしますが、「最終的にどうするかという責任は自分たちで考えて。アメリカはそんなに介入しないから」と言っているようにも聞こえますね。
秌場聖治さん:
さらに忘れてはならないのは、ロシアは我々の隣国であり、北朝鮮との関係がこの戦争でかなり深まっているという点です。そうした点も含め、日本の安全保障に対して新たなフェーズに入りつつあるような気がしています。
井上キャスター:
このウクライナ侵攻を突破できそうなのは、今、トランプ大統領しか見当たらないというのも、また現実ですね。
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<プロフィール>
秌場 聖治
TBS報道局 前外信部長
ウクライナ侵攻を現地取材
星 浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島県出身
政治記者歴30年
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