乳牛を活用して高級食材の和牛を生み出す。そんな取り組みに静岡県の酪農家が挑んでいます。背景にあるのは、牛乳の問題。窮地に立たされる酪農家を救う役割が期待されています。
おいしそうな音を立てているのは、「イチボ」と呼ばれる和牛の希少部位。浜松市中央区の焼肉店「うしいろ」は、国内産の和牛を中心に厳選したメニューを提供しています。
浜松焼肉うしいろ 和田匡平 店長
「脂がしつこくなくて、その分うま味が強い。和牛というブランド力が強いので、有名な産地でなくても、しっかりしている」
この和牛をめぐる新たなビジネスを浜松市浜名区の酪農家が本格的にスタートさせました。
オーバーザレインボー 岩崎健太郎さん
「うちの和牛は和牛から産ませたものではなく、『受精卵』を取りまして、ホルスタインから生まれてきた和牛です」
こちらの牧場が進めているのが、和牛の受精卵を使って乳牛に和牛を生ませるという取り組みです。まずは和牛同士を交配させて、獣医師が受精1週間後くらいの卵子を胎内から取り出します。
森のどうぶつ病院 大場孝倫 院長
「入った液体が引き戻すと戻ってくるので、この中に子宮の中の受精卵が戻ってくる」
回収した液体を動物病院に持ち帰り、顕微鏡で確認しながら受精卵を回収します。和牛の受精卵をホルスタインに受胎させると、生まれてくるのは和牛になります。
こうして回収した受精卵を他の酪農家などに販売する許可をオーバーザレインボーは去年、取得しました。
こちらの牧場は乳牛の育成と牛乳の販売がメインの酪農家ですが、近年、経営に苦しんでいます。
オーバーザレインボー 岩崎健太郎さん
「近年、エサ代がググっと上がってしまって。でも、牛乳の乳価は上がっても10円とか15円」
近年の物価高と円安で、こちらの牧場では牛1頭の1日当たりのエサ代がこの4年間で1000円ほどアップ。一方、牛乳の卸値は少し上がっただけ。小規模の酪農家は現状、牛乳販売でほとんど利益が出ないため、和牛の生産を新たな収入源に入れてもらうことが岩崎さんたちの狙いです。
オーバーザレインボー 岩崎健太郎さん
「自分たちが他の酪農家さんのちょっとでも手助けになれればいい」
乳牛と受精卵を活用した和牛ビジネスは、酪農家の新たな選択肢となる可能性を秘めています。
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