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39年ぶりの屈辱…“新横綱休場”に追い込まれた豊昇龍、師匠・立浪親方「理想と現実の違いを感じたのでは」【大相撲】

スポーツ
2025-03-31 12:04

エディオンアリーナ大阪で開かれていた大相撲・春場所は、大関・大の里が3場所ぶり3度目の優勝を果たした。23日の千秋楽に12勝3敗で並んだ前頭4枚目の高安との優勝決定戦を制した。8場所連続の満員札止めだった15日間で、1本7万円(力士の手取りは3万円)の懸賞総数は2152本となり、地方場所最多を更新。浪速の春は、大いに盛り上がりを見せた。


だが、そんな中、蚊帳の外とも言える途中休場となったのが新横綱の豊昇龍だった。1月の初場所は千秋楽で金峰山、王鵬との優勝決定巴戦を勝ち抜き、2度目の優勝と横綱昇進を手にした。勢い込んで臨んだ春場所だったが、4敗目を喫した翌日の10日目朝に、「右肘関節内遊離体、頸椎捻挫で約2週間の加療を要する」との診断書を提出。土俵から姿を消した。


初日から「硬さ」と「気負い」が噴出していた。ここ2場所は鋭い踏み込みから相手に圧力をかける取り口が目立って白星を重ねてきたが、2連敗中だった小結・阿炎戦は中途半端な張り差しで腰が浮き、一気に突き出された。2日目から3連勝したが、5日目に千代翔馬に初金星を献上すると、8、9日目にも平幕の高安、一山本に連敗。1964年春場所の栃ノ海以来4人目、昭和以降での最多に並ぶ新横綱での3個の金星配給を記録してしまった。


初めて横綱として臨んだ2月末の番付発表。「楽しみでもあり、怖いこともある」と話しながらも、「横綱で初めての本場所は勉強の場所。負けても休場はしない。最後まで取る」と宣言していたが、その公約を実践することは出来なかった。休場前夜に話し合ったという師匠の立浪親方(元小結・旭豊)は、「ふがいない相撲は取らせたくなかった。理想と現実の違いを肌で感じたのではないか。(25歳と)まだ若い。長い目で見て欲しい」と弟子に変わって苦しい胸の内をコメントした。


確かに場所前から右ひじの状態は万全ではなかったようだ。それを高安戦で悪化させたという。「雲竜型」にした横綱土俵入りの稽古や様々な行事にも駆り出されて、大阪での本場所に臨むにあたり、十分な準備が出来ていなかったことは容易に想像できる。だが、それでも番付の頂点に座る者としては寂しい姿だった。新横綱の休場は同じ立浪部屋所属だった86年秋場所の双羽黒以来、39年ぶりの屈辱だった。


本人は「プレッシャーをぜんぶ体で感じたい」とも話していたが、対戦相手も大きくは変わらない横綱と大関の最大の違いは何か。それは土俵上での黒星の重みだと思う。元横綱の故・北の湖理事長は、私たちによく話してくれた。「横綱の勝ち越しは12勝。どんなに体調が悪くても場所に出て、その勝ち星を挙げる責任がある」。逆に言えば、綱を張っている以上は、常に3敗までしか負けは許されない。単純な比較は出来ないが、初場所の豊昇龍、春場所の大の里の優勝成績と同じ星勘定を、最低ラインに置くということでもある。


八角現理事長(元横綱・北勝海)も「横綱は1敗の重みがある」と大関までとの違いを口にする。本人が出たい気持ちがあっても、負けが込むと醜態をさらすことは出来ないのが横綱という最高位の地位だということだろう。


こういう事態になれば当然、先場所後に審判部内でも意見が分かれた。「昇進の基準が甘かったのではないか」との批判も出てくる。昨年の名古屋場所以降の4場所を見ると9勝、8勝、13勝の優勝次点、12勝の優勝で昇進。「大関で2場所連続優勝、またはそれに準ずる成績」との横綱審議委員会の内規には当てはまるが、「もう1場所見ては」の声があったのも頷ける。照ノ富士(現親方)の引退や今秋に控えるロンドン公演への配慮なども考えると、幸運だったのは間違いない。相撲界には「地位は人を作る」という格言がある。期待を込めての昇進だっただけに、5月の国技館での夏場所以降は、文字通りその真価が問われることになるだろう。


相撲協会からの諮問に初場所後には「全会一致」で昇進の答申を出した横審も、同様の考えのようだ。新たに委員長に就任した大島理森委員(元衆院議長)が春場所後の会合で会見し、「新横綱の休場は残念だった。夏場所では捲土重来で心技体を整えて横綱として立派な成績をおさめてもらいたい」と話した。


不名誉な記録ばかりが並んだ豊昇龍の横綱デビュー場所だったが、一つ救いを提供できるとすれば、同じ新横綱の途中休場者の中に「小さな大横綱」と呼ばれた千代の富士がいるという事実だろう。81年秋場所の2日目に足を痛めて3日目から休場となり、豊昇龍以上に体格的には恵まれてはいなかった小兵横綱は、「短命だろう」と囁かれた。だが、続く九州場所で横綱としての初優勝、通算3度目の賜杯を抱くと、その後はご存じの通り。「ウルフ」の愛称と共に優勝回数を31度まで伸ばし、角界の第一人者に成長していった。


30日からの春巡業に参加する予定の豊昇龍。今後は、来場所に連続優勝で横綱昇進をかけてくる大の里の前に立ち塞がることができるか、が最初の試金石と言えそうだ。周囲の批判、雑音を封じるには本場所で結果を残すしかない。新横綱で喫した黒星(最終的には10日目の不戦敗も入れて5敗)をどうかみ締め、糧にするか。「負けて覚える相撲かな」とも言われる角界は、全てが本人の受け止め方と精進にかかっている。


(竹園隆浩/スポーツライター)


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