超人たちが34年ぶりに東京へ!今年9月に開幕する「東京2025世界陸上」を前に、これまで歴史に名を刻んだ伝説のアスリートたちを紹介。今回は2019年世界陸上ドーハ大会の1500m、ティモシー・チェルイヨトに注目、“世紀の大逃げ”での金メダルに「こんな1500m観たことがない」と実況したTBS・佐藤文康アナウンサーと圧勝のレースを振り返る。
戦略と駆け引きのレース男子1500m決勝
世界陸上ドーハ大会、男子1500m決勝。12人の選手がスタート位置にスタンバイした。リオオリンピック™ 、ロンドンオリンピックの金メダリストや全米チャンピオンなど蒼々たる面々が揃う中で、注目は2人の選手だった。
1人目は当時19歳のヤコブ・インゲブリクセン(ノルウェー)。自己ベストは3分30秒16で、優勝すれば最年少での金メダル獲得。そしてもう1人はケニアのティモシー・チェルイヨト(当時23)。前回大会の銀メダリストで当時のシーズンベストは3分28秒77。このシーズンで唯一3分30秒を切っていた選手だ。
速いだけでは勝てず、戦略が必要な1500m。(シーズンの)トップ10のタイムを持つ選手が2人しかいないこの決勝戦の状況が、それを物語っていた。
最初から飛ばしていたチェルイヨト
一斉にスタートした12人。駆け引きがうまい選手が多い中で、最初から逃げ切りを図ったのがチェルイヨトだった。集団にいてリスクが伴うよりも、自分でレースを引っ張るというのが彼の戦略だったのかもしれない。300mを41秒という非常に速いペースで先頭を走っていた。その後ろにぴったりとくっついて走っていたのが、同じケニア代表のロナルド・ケモイ。 縦長の展開になり、3位集団までは2秒ほどの差がついた。800mの通過タイムは1分51秒69。ハイペースで走り続けるチェルイヨト。一方、インゲブリクセンは5位で3位集団の3人目を走っていた。この時点で、前を追いかけるのか、3位狙いでいくのかを迫られる状況になってしまったのだ。
実況アナも驚愕したラスト1周
チェルイヨトがひとり抜け出して1000mを通過。残り1周を知らせる鐘が鳴り、独走態勢になった。当時、実況を担当していたTBS・佐藤文康アナウンサーもこの状況に驚愕した。佐藤アナ自身、中学・高校・大学と陸上の経験者で専門種目が1500mだった。出場した国内の大会でも、これまでに実況を担当した国際大会でも、こんなレース展開は初めてだったという。
実況:さぁ差が付いた。チェルイヨト先頭!
実況:これは世界陸上史上に残る大逃げを図っている!
実況:逃げている、逃げているチェルイヨト。まだ20mの差がある。他を寄せ付けない!
最後の直線に入っても縮まらない差。この光景に佐藤アナも「こんな1500mは観たことがありません。誰も寄せ付けない。影も踏ませない。ケニアのチェルイヨト、1500m独走の金メダル~!!」と実況。3分29秒26でゴールしたチェルイヨトは、2位に2秒12の差をつけ、まさに圧勝の金メダルとなった。
佐藤アナは当時を振り返り「“こんな1500mは観たことがありません”という言葉は大きな大会だけでなく、世界中のどの大会にもないと心の底から出た言葉です。元ランナーとしてあのレースをやり遂げたチェルイヨトには尊敬の念しかありません。長年、世界陸上を担当していて思い出に強く残っているレース、選手であることは間違いありません」と語った。
東京2025世界陸上が1500mのラスト!
現在29歳のチェルイヨト。去年11月、地元紙の取材で、10年間続けてきた1500mに区切りを付け、長距離レースとマラソンに転向することを明かした。1500mのラストランに選んだのが「東京2025世界陸上」。そしてこのレースを実況するのは佐藤アナの予定だ。彼の1500mラストランはどんな展開になるのだろう。
東京2025世界陸上 男子1500m「この選手に注目!」
【外国人選手】
◆ティモシー・チェルイヨト(29、ケニア)3分28秒28
東京五輪・銀/世界陸上ドーハ・金
◆ヤコブ・インゲブリクセン(24、ノルウェー)3分26秒73
東京五輪・金 パリ五輪1500m・4位、5000m・金
世界陸上オレゴン/ブダペスト1500m・銀、5000m・金
◆コール・ホッカー(23、アメリカ)3分27秒65
パリ五輪・金
◆ジョッシュ・カー(27、イギリス)3分27秒79
世界陸上ブダペスト・金 ※ワイルドカード
※東京世界陸上への出場は未確定
※名前の後ろは自己ベスト
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