12月29日から兵庫県で開幕した第33回高校女子サッカー選手権。今大会から、全都道府県の総勢52チームが集結し、年末年始をまたぐ熱い戦いが繰り広げられている。なかでも、圧倒的強さで決勝まで勝ち上がってきたのは、2連覇中の静岡県代表、藤枝順心高校だ。
学校所在地の静岡県藤枝市は、元男子サッカー日本代表キャプテンの長谷部誠(40)ら、数多くのプロを輩出した強豪校がひしめく。駅前にはサッカーボール型の花が飾られるなど、サッカーの街だ。藤枝順心も選手権制覇は最多となる7回、今大会は前人未踏の3連覇に挑むなど、高校女子サッカーの歴史を刻んできた。
藤枝順心の選手たちの戦いは、お昼休みから始まる。昼休みのブザーがなると、サッカー部の寮生用のお弁当を手にするため、一気に教室を飛び出し行列が。その列は階段にまで及ぶ。
「今日は当たりデー。オムライス」。そう喜んだのはキャプテンのMF植本愛実選手(3年)だ。昨年の大会では全試合に出場したチームの絶対的司令塔で、卒業後はプロのWEリーグ、ジェフ千葉レディースに加入することが内定している。「自分がこのチームを動かさないと選手権で優勝できないと思っているので、チームに貢献していきたい」と話す彼女には相棒の”もう1人のキャプテン”がいる。
そのもう一人、佐藤ふう選手(3年)は、体を張ったプレーが持ち味の守備的MF。昨年の大会は出場1試合に終わったが「チームで勝てるように、自分自身もいろんなアクションをして貢献したい」と最後の冬を見据えている。
3連覇の夢に向かってチームを引っ張る2人のキャプテンは、この冬に向けてチームの意識改革に取り組んできた。部室に入室する際は、チームのスローガン「絶対王者」を口にして室内へと入る選手たち。考案者の佐藤選手は「常に目標を意識して練習に取り組みたいし、進化するためには現状を変えていかないと未来は変わっていかないので、今までとは違った行動をしないといけない、という発想になった」と語る。
“絶対王者シート”で意識改革
もう一つの意識改革は「絶対王者シート」。絶対王者になるために日々感じたことを記入する手書きのプリントを作成し、先輩後輩で確認しあっている。その一部を見せてもらうと「泣いていた3年生を見て完全に気合が入った。必ず3連覇を達成する」という後輩の記述が。部員全体がお互いの現状を把握しているという。「絶対王者となるために何が必要かというのを一人一人が認識するために、先輩から後輩に伝えていくというのは意識しながらやってきた」と植本選手は話す。彼女の先輩たちでも成し得なかった3連覇へ、必要なのは現状維持以上であるとにらみ、日々練習を積み重ねてきた。
チームの成長を担ってきた2人のキャプテンは同じポジションを争うライバルでもある。スタメンで出場できるのは2人だけで、去年の選手権決勝は、植本選手はピッチでプレー、佐藤選手はスタンドから見守った。「(佐藤選手の)考えて行動するという姿は一番尊敬している。選手権で一緒にピッチに立って活躍して、最後は優勝して抱き合いたい」と照れながら話すのは植本選手。佐藤選手も「愛実がいると心強い、2人キャプテンでよかった。プレーする彼女の姿はすごいと思う」とピッチ内外で絶大な信頼を寄せる。
前人未踏の3連覇へ
ライバル以上の絆を紡いできたこの1年、誰もがかなえたことのない夢をかなえるため、2人のキャプテンが引っ張る藤枝順心の冬が始まった。
1回戦、2回戦ともに大量得点、無失点と強さを見せた藤枝順心は、3回戦で大阪府代表の大阪学芸高校と対戦。植本選手はスタメンに名を連ね、佐藤選手はベンチでキックオフを迎えた。昨年ベスト4の強豪を相手に危なげなく3点をリードすると、後半アディショナルタイムに呼ばれたのは佐藤選手。試合をきっちり締めるクローザーとして今大会初めてピッチに投入され、2人のキャプテンがピッチに並び立った。佐藤選手は試合終了まで相手のチャンスの芽を摘み、役割を果たした。
試合後に「(佐藤選手が)ピッチに入ってきてくれて安心感があったし、最後しっかり締めようという気持ちになった」と振り返った植本選手。佐藤選手は「どこのポジションでも、何分から出場したとしても、チームのために最後自分がクローザーとしてやるべきことがあったので、少しの時間ではあったが全うできてよかった」と話した。
その後も準々決勝、準決勝と勝利を重ねた藤枝順心。決勝の相手は3年ぶり4度目の頂点を目指す鹿児島県の神村学園。1月12日午後、前人未踏の3連覇に挑む。
※写真は左から佐藤選手、植本選手
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