
正社員はもちろんのこと、アルバイトなどの職場選びでも「福利厚生」が今、重要視されています。情報通信業社の株式会社エーピーシーズが行った3,000人を対象としたアンケートでは、およそ9割が「職場選びで福利厚生を重視する」と回答しました。
福利厚生サービスを企業に提供する株式会社ベネフィット・ワンの松田浩次常務執行役員は、「ここ近年は、パート・アルバイトの人に福利厚生を提供したいというニーズが、私どもの肌感覚では一昨年ぐらいから約3倍に高まっています」と話します。
【写真を見る】人材確保の新たな一手!丸亀・ヤクルトに学ぶ"家族も嬉しい"福利厚生の最前線【THE TIME,】
背景にあるのは、深刻な人手不足です。厚生労働省によると、パートタイム労働者の離職率は社員のおよそ2倍という調査結果。福利厚生を手厚くして離職率を下げることが労働力確保の直接的な解決策になるといいます。
こうした中、注目されているのが働く本人だけでなく、その“家族”も利用できるユニークな福利厚生です。例えば大手総合スーパー「イトーヨーカドー」では従業員に専用のカードを配布。本人だけでなく家族も5%引きで買い物ができます。また「カラオケ館」では従業員が家族と利用すれば40%引きで利用可能という制度も。今、拡大を続ける”家族も嬉しい”福利厚生、その最前線を取材しました。
「子どもの数だけ食事代を補助」丸亀製麺のユニークな“家族食堂制度”
全国に895店舗を展開する讃岐うどん専門店「丸亀製麺」(※2026年8月末時点)で、今年2月から導入されたのは「家族食堂制度」という、あまり聞き馴染みのない福利厚生です。この制度は、従業員の中学3年生以下の子どもを対象に、1人につき月額最大1万円の食事を補助する制度です。
パートスタッフとして働く船戸桃子さんは、子どもが学校に行っている間の時間帯に週1、2回勤務しています。
そんな船戸さんは、仕事が終わると、家族が迎えに来て、そのままお店で夜ご飯を食べるのが習慣だといいます。船戸さんのように子どもが4人いる場合は、毎月最大4万円の食事補助が受けられます(※勤務日数、勤務時間によって変動。申請が必要)
船戸さんはこの制度について、「仕事の後にご飯を作るのはすごく大変なので、とっても助かります」と笑顔を見せます。丸亀製麺では、この制度を設けてから、パートやアルバイトの応募もさらに増えたといいます。
ほかにも、丸亀製麺では年2回、店の業績に応じてパートやアルバイトにも賞与を支給しています。こうした手厚い福利厚生が、働きがいにも繋がっているようです。
ヤクルトレディを支える“ヤクルト保育所”の魅力
乳製品飲料大手の「ヤクルト」にとって欠かせない存在といえば、企業や家庭に直接販売を行う「ヤクルトレディ」。
全国におよそ3万人いるヤクルトレディは(2026年3月末日現在)、ヤクルトの乳製品売上数量の半分を占めるほどだといい(2025年4月~2026年3月累計)、会社としても人材確保が重要な命題になっています。そのために、ヤクルトが取り組んでいるのが「保育所の運営」です。ヤクルトグループが運営する保育所は全国で実に720か所(2026年4月1日現在)。一般の人も利用は可能ですが、基本はヤクルトレディのための保育所であるため、スタッフは優先的に利用することができます。今年4月、待機児童数が9年ぶりに増加し、保育所探しが再び課題となる中、これは大きなメリットです。
ヤクルトの保育所を利用するヤクルトレディの金子由美佳さんは2歳のあおいちゃんを週5日預けており、保育所に預けた後、職場に向かいます。
金子さんの職場は保育所からわずか5分ほどの距離にあり、「すぐに駆けつけられるところが一番いい」と話します。
保育所では、おやつにヤクルトが提供され、工作ではその空きカップが使われるなど、ヤクルトならではの光景が見られます。さらに、販売会社によっては、勤務日でない平日でも子どもを預けることが可能。週3日勤務の金子さんも、あおいちゃんを週5日預けているといい、「休みの日預かってくれるのが大きいですね。静かな家にいるのが今一番いいなと思ってて」と、自分の時間も大切にできているようです。さらに、保育料については認可保育所で平均1万円、認可外でも平均6,000円と、相場に比べて非常に安く利用できます。
ヤクルトの担当者は、「ヤクルトレディを選ぶ女性が増加し、働き手の確保や、長く働き続ける環境づくりにつながっています」と効果を語ります。
人材確保が企業の大きな課題となる中、働き手とその家族を支える福利厚生を充実させる動きは、今後もますます増えていきそうです。
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