
東京を中心にマンション価格が歴史的な高騰を続ける中、異例のスピードで事業を拡大させている『オープンハウスグループ』。戸建て・マンション・ホテルの“三刀流”で挑む狙いとは。
【写真を見る】ホテル事業にも参入「オープンハウス」の“三刀流”成長戦略とは?【Bizスクエア】
箱根にホテル開業で「新たな顧客を」
11月、日本有数の温泉地にオープンしたホテル『KÚON 箱根強羅』(神奈川県)。
一歩足を踏み入れると“大人の隠れ家”とも呼べる雰囲気の空間が広がり、全室に源泉かけ流しの温泉を設えた14の客室は、伝統的な「和」と「モダンデザイン」が融合。(1泊1人4万2000円~)
<お茶と和菓子で五感をひらく、唯一無二のデザイナーズホテル>をコンセプトとし、宿泊者限定のティーラウンジでは、和菓子作家監修の和菓子と目の前で淹れるお茶も楽しめる。
宿泊客(20代カップル):
「和菓子とお茶で日本文化を楽しめる、そういうのがいいなと。非日常で」
単なる宿泊ではなく、“非日常的な体験”を宿泊者に提供するというこのホテルを手がけるのは、戸建て販売を主力としている不動産ディベロッパー『オープンハウスグループ』(本社・東京都千代田区)だ。
“便利地・好立地”なマイホームの提供を掲げてきたオープンハウスが、なぜホテル事業に参入したのかー
『オープンハウス・ホテルズ&リゾーツ』渡部達也社長:
「いままで利便性をそんなに求めていない方にも『オープンハウスグループってありかも』と思ってもらえるきっかけにはなりうる。“いままでリーチできていなかった顧客”に対して良い面のブランド認知を伝えていける」
既存物件を取得しリノベーションを行うことで“コストを大幅に圧縮”し、構想からわずか1年という“スピード開業”が実現できたという。
設計力で「好立地・手が届く」戸建て
オープンハウスグループは、売上高が2023年に1兆円を突破。その後も右肩上がりの成長を続け25年9月には1兆3364億円に。
その強みは「変形地」と呼ばれる住宅を建てにくい土地や狭い土地の活用。他社が敬遠しがちな土地をあえて取得し、独自の設計力で「都心の好立地」のマイホームを「手の届く価格」で提供してきた。
神奈川・川崎市の「3階建ての一戸建て」を2024年に約5000万円で購入したのは、独身男性の高橋大貴さん(38)。
廊下の壁一面には、VTuber(バーチャルYouTuber)のグッズが飾られ「毎日目にする所なので、ここを見ながら『今日も会社頑張るぞ』と出かける」と話す。
おひとり様の一戸建て購入ー
オープンハウスによれば独身世帯の購入比率は増加傾向とのことで、その理由の1つが「マンション価格の高騰」だ。
独身で戸建てを購入・高橋さん(38):
「中古マンションでもけっこう価格は高くなるので、そうするとそんなに大きくは変わらないのかな」
土地の面積はわずか14坪(47㎡)だが、高橋さんはそこまで“狭さを感じない”と言う。
バルコニーをなくす代わりにリビングを「勾配天井」にしたことで、高さのある解放感のある部屋に。他にも、階段のつくりを工夫して「床面積を増やす」などスペースを有効活用している。
独身で戸建てを購入・高橋さん(38):
「住み心地は最高。自分のこだわりができるような家にしてもらったので、そこは本当にすごく良かった」
“廊下レス”で「居住空間を確保」
一方、オープンハウスは一戸建てだけでなくマンションも手がけているが、価格の高騰にどう対応しようとしているのか。
『オープンハウス・ディベロップメント』マンション開発事業部長・川上智宏さん:
「急激な価格上昇や投機目的の売買が増えていて、本当にその街に住みたい実需の客の手が届かなくなりつつある。どうすれば“適正価格で届けられるか”を追求していき、その問いに汗をかき続ける」
戸建てで培ったノウハウを武器に、オープンハウスが新たに打ち出したマンションブランドは「イノバス」と「イノベシア」の2つ。
“合理性を徹底的に追求し理想のライフスタイルをかなえる”という「イノバス」ブランドのマンションでは、コンパクトタイプの部屋の一番の特徴が“廊下レス設計”。廊下を最小限に抑えることで居住空間を確保している。
例えば、1LDK(35.85㎡)の物件。
廊下は玄関を上がってすぐのタテ1m×ヨコ1mほどのスペースのみで、廊下の左右がトイレと風呂・洗面所。
短い廊下の先にキッチン(約2.6畳)とリビングダイニング(約6.3畳)があり、リビングダイニングに面したキッチンシンク上部の「吊り戸棚」を正面から背中側に移動することで、圧迫感を解消している。
リビングダイニングの隣は収納式の仕切りを備えたベッドルーム(約4.3畳)という間取りで、価格は品川区・台東区などの都心で「6000万円」前後。相場より“500〜1000万円割安”だという。
『オープンハウス・ディベロップメント』マンション開発事業部 丹保祐一さん:
「企画の段階から購入しやすい価格帯に収めることを前提に部屋の広さを決めている。買いやすい価格帯で提供することを考えると、高騰する資材や人件費に対応するには、“部屋は狭くなっていく”と思う」
良いモノを「値ごろ感を出せる」価格で
もう1つのブランド「イノベシア」は、港区や中央区など東京の中心部で展開する高価格マンションだ。
『オープンハウス・ディベロップメント』マンション開発事業部長・川上智宏さん:
「“坪単価で1000万円以上”の物件。プラスαで素材にこだわったり、共用部にアートを取り入れたりしている」
「安さ」だけでなく、「高付加価値」の高い価格のマンションにも力を入れるオープンハウス。今後についてはー
川上さん:
「良いものを“値ごろ感”を出せる価格で出すのが一番のポイント。同じエリア内では他社より値ごろ感が出る、“良いものを安く”ということは変わらずやっていく」
「客のニーズに応えて」事業拡大
これまでは戸建て販売が中心だったオープンハウスが、マンション、そしてホテルと事業を拡大する理由は何なのだろうか。
『オープンハウスグループ』サステナビリティ推進部副部長 横瀬寛隆さん:
「メインのニーズは、当初は“若い世代の手の届く都心の立地の良い戸建て”だったが、だんだん“ニーズのバリエーションが増えてきた”。マンションやアメリカ不動産などの延長線上に今回のホテルもある。全て共通しているのは“客のニーズに合わせて”価値ある不動産を届ける」
そして今後も新事業への参入を続けていくという。
横瀬さん:
「地方都市のまちづくりなども積極的に取り組み始めている。『都心の好立地の家もいいけど自然豊かな場所でゆっくりできる場所も欲しい』といったニーズもあるので、どちらの商品も提供できるように“都心も地方も両方”しっかり盛り上げていく。“総合ディベロッパー”として成長していきたい」
(BS-TBS『Bizスクエア』 2025年12月13日放送より)
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