エンタメ
2026-10-25 18:00
動画配信サービス「Netflix」オリジナル作品、Netflixシリーズ『俺のこと、なんか言ってた?』が10月22日より世界独占配信がスタート。本作のテーマは“承認欲求”。大物俳優・高瀬川玄(役所広司)が2年ぶりに帰国すると、世間からも家族からも完全に忘れられてしまっていたことから始まるヒューマンコメディーだ。オリコンニュースでは、主演を務める役所と脚本を手がけた宮藤官九郎にインタビュー。承認欲求の塊である高瀬川を演じた心境や“業界あるある”をデフォルメした要素がふんだんな脚本を読んでの感想、作品の配信後だからこそ明かせる裏話など、主演と脚本家という視点から語ってもらった。(取材・文:遠藤政樹)
【動画】『俺のこと、なんか言ってた?』役所広司&宮藤官九郎 インタビュー
■宮藤官九郎は「意地悪な目で観察している?」 役所広司が絶賛する脚本のリアリティ
――作品の脚本を初めて読まれた際、役所さんはどのような点に魅力を感じられましたか?
【役所】 宮藤さんはご自身が脚本家であり演出家であり俳優でもあるから、これまでにたくさんの役者を見てこられているので、「こういう人いるな!」という切り取り方が本当にお上手です。普段から“意地悪な目”で観察されているのではと思うくらい(笑)。それほどリアリティがありました。
――具体的にはどのようなあたりでしょうか。
【役所】 例えばスタッフ同士の関係性や、エキストラの方でも「あんな感じで怒られている人を見たことあるな」といった状況を彷彿させるシーンがたくさんあって、読んでいてドキドキしました。
――視聴者の目線でも、もしかしたらあるかもと思わされる絶妙なリアリティ感が最高でした。宮藤さんがこういったテーマに決めたきっかけは何だったのでしょうか。
【宮藤】 僕もそうですけど、この仕事は顔や名前を知られていくことが醍醐味でもあり宿命。一方で知られてしまったら忘れられない限り、そのイメージを背負い続けることにもなります。傲慢な考え方もしれませんが、「誰も自分を知らない状態にリセットされたら俺はどうなるのだろう?」と、表現に関わる人なら一度は考えると思うんです。初期段階では、これだけ芝居が上手いのに何で誰にも知られていないのだというシーンが面白くなればいいな、ぐらいに考えていましたが、いろいろアイデアが出てきて。忘れられた人が再び認識されていくことで、物語として想像以上に転がっていくのだと思いました。
――その役を役所さんが演じられているというギャップがたまらないですね。
【宮藤】 作り手としては魅力的で楽しかったですね。
――お二人が脚本家と俳優という関係でご一緒されるのは、NHK連続テレビ小説『いだてん~東京オリムピック噺~』以来だと思います。
【宮藤】 あのときは嘉納治五郎という、その世界では神様のような方をチャーミングな人にするにあたって、役所さんだからという説得力があると、作り手としても面白がれますよね。
【役所】 そういえば当時も『嘉納治五郎だぞ』って言っていましたけど、そういうセリフが似合うってこと?(笑)
【宮藤】 いやいや!(笑)。そんなことがないから書けるんです。
■「このために1話からやってきた」 役所が最も印象的な劇中劇のクライマックス
――役所さんは高瀬川玄を演じていかがでしたか。
【役所】 高瀬川は正直な男。きっと多くの俳優の性根は同じだと思います(笑)。ただ普通は承認欲求を隠しますが、高瀬川はあからさま。「俺を誰だと思っているんだ」というセリフがあるけど、実際にそれを言う人はなかなかいないですよね(笑)。
――演じるうえで、最も大切にされたアプローチや意識とは何だったのでしょうか?
【役所】 一番大事にしたのは高瀬川が持つバカ正直さです。たいていの人はエゴやプライドを隠して、いい人として振る舞いますが、高瀬川は隠そうとしているのにバレてしまう。その隠しきれない正直さこそが高瀬川のチャーミングなところだなと。浮気がバレそうになったときの必死な言い訳にしてもバレバレなのが、逆にいいヤツだなって感じがしました(笑)。
――現実で近くにいたら大変そうですが、確かに愛すべきキャラクターではありますね。
【宮藤】 忘れられてあたふたしているから可愛く見えていますけど、そうじゃなかったらヤバい人(笑)。「俺だよ」「ハムの」というのはなかなかだなと思いますけど、清々しいほど正直。今はそういうことは言わない方がいいみたいな風潮ですけど、それをこの人知らないのかな、ぐらい言っていますよね(笑)。
――役所さんの高瀬川はいかがでしたか。
【宮藤】 面白かったです。とにかく早く観たいと思ったのは、高瀬川がインタビュー中に女性問題を追及されるシーンです。「止めてください」「(カメラを)回してください」「あっ、止めてください」というくだりは本当に面白かった(笑)。それを元奥さんが見ているという構造が最高ですね。
――役所さんは特に印象に残っているシーンはありますか。
【役所】 クライマックスの実際の舞台公演を挟みながら、出演者のリアクションとその間に挟まれるインタビューです。このために1 話からやってきたのだなという感じがしました。
■役所&宮藤、世間の評価は「気になる」と本音を吐露
――高瀬川のように世間の評価、ご自身に関する噂話などは気にされますか?
【宮藤】 気にはなります。検索して「俺のこと誰も何も言ってないな」「俺、出ているのに」って無駄に傷ついたり(笑)。だから劇中で高瀬川が主役なのに「『リア王』観に行きましたけど、あなた出ていました?」って言われるのは究極だなと思います。
――高瀬川は主演ですからね。
【宮藤】 気にしない人はいないと思いますけど、僕の場合は褒められると恥ずかしくなっちゃう。というか何かつらくなります(苦笑)。すごくうれしいけど、いま褒められたということは次褒められなかったら、前よりダメってことだよなとかマイナスの方に考えちゃいます。ところで、役所さんはエゴサーチをされることは……?
【役所】 しますよ(笑)。映画が公開されたりすると「みんながどう思っているのかな」って気になるので、評判とか見ます。
――なんと!びっくりしました。では高評価を見聞きされたら?
【役所】 うれしいけど、(本人の手前)一応褒めてくれているのだろうなとか、思いますね。
――ご本人に感想を伝えるにはどうすれば真意が伝わるのか。難しい部分ではあります。
【宮藤】 直接ではなく、たまたま自分の噂を聞いたときは本当なのかなと思います。
――役所さんはどういう方向から感想を言われるとうれしいですか。
【役所】 深いね(笑)。上手いとかではなく(感想を)言ってもらえることがうれしいかな。
■役所、濵田雅功の第一印象は「怖いしセリフも適当かと(笑)」 豪華キャストの裏話
――壬生大也(みぶ・だいや)役の濵田雅功さんら共演者の方々も豪華ですが、特に印象に残っている方はいらっしゃいますか。
【役所】 みなさん素晴らしい俳優で(演技で)笑わせてくれて、適材適所だなと感じました。濵ちゃんも「テレビ界の巨匠みたいな感じで怖いし、セリフなんて適当に言っておけばいいのだろう」と勝手なイメージをしていましたけど(笑)。素敵な演技をされていました。
【宮藤】 もっと変えてくるのかなと思ったら、脚本に書いてある順番で言ってくださって。もちろん当たり前のことではありますが、なんとなくやらないのではと思っちゃう(笑)。すごくナチュラルに演じてくださっていたのがうれしかったです。
――賀来賢人さんが演じている岡本哲も味のあるキャラクターですが、共演されてみていかがでしたか。
【役所】 彼はもともとコメディのセンスが抜群ですけど、岡本のセリフのスピードがとにかく早い。よく言えたなと感心するくらいでした。
――それと松山ケンイチさんが演じた助監督の川島一機と高瀬川の関係性もグッときました。
【役所】 ああいう助監督はたくさんいます。僕自身、成島出監督と助監督時代に会って、脚本を書いて監督になったときに「出てほしい」と言われて出演した経験があります。
【宮藤】 助監督をやっていた人が監督になって呼んでくれるというのは、とても感慨深いエピソードですね。
■宮藤「自分なら絶対イヤ(笑)」 賀来賢人が挑んだ一発勝負の小道具ハプニング
――特に見逃してほしくないシーンやエピソードを教えてください。
【宮藤】 忘れられる前の高瀬川が面白いので全部観てほしいし、運転手をしているときの高瀬川も好きですね。腹の中では絶対思っていないだろうに、後部座席のドアを開けて「どうぞ」って恭しくやっている(笑)。それなのに「すいません。CMなので何日か休ませてください」と言うのは気持ちいいだろうなって。観ていて最高に気持ちよかったです。
【役所】 やっぱり舞台公演のシーンです。みんなのリアクショアンが素晴らしくて、チヂミ姉さん(坂井真紀)も大笑いしていました。途中で帰るのに(笑)。すごく良いシーンになったなと思います。
――「劇団ウイスキーボンボン 第7回公演『誰も知らない大物俳優』として東京のザ・スズナリで上演されたものですね。こちらも話題となりました。
【宮藤】 劇中劇でやろうと思えばできたし、本当にやっているように見せることもできましたが、結果的には実際に上演して良かったと思います。客席にいるキャストのリアクションも感激している様子をGoProで撮影していて、生のリアクションがある素晴らしいシーンになりました。
――撮影秘話などがあれば聞かせてください。
【宮藤】 岡本が最後、小道具が出ていなくてドンとダンボールを倒してペットボトルを持ってくるシーン。実は(公演ではドラマに使った)あの回しかやっていないので、失敗したら台無しじゃないですか。俺ならやるのはイヤだなって思いましたけど(笑)。バッチリで面白かったです。
■解釈をぶつけ合うから面白い 役所のスタンスに宮藤「すごくありがたい」
――高瀬川はある意味ブレない男でもありますが、長年活躍されているお二人が仕事に臨む上での軸やこだわりを教えてください。
【役所】 演じる前に現場で監督と事前に相談しすぎない、ということですね。先にディスカッションする方もいますけど、事前に「自分はこう考えていて」と話し合ってからやる必要はないと思っています。
――どうしてでしょうか?
【役所】 監督の話を聞くと、当然ながらそうしなければいけなくなりますよね? だからこそ何か言われる前に、自分が本を読んで考えた解釈をやった方がいいと考えていますし、後から「こうしてほしい」と言われたら合わせていけばいいと思っています。
【宮藤】 それは(作り手側にとっても)すごくありがたいかもしれません。確かに「こうしてほしい」「わかりました」となったら、そのとおりにやる必要が出てきますよね。
【役所】 現場での話し合いといえば(ドラマにも出てきた)「壬生さんがまた始まったよ」みたいな状況も実際にありますしね。
【宮藤】 現場で監督と俳優の話し合いが長引いて待つことはありますよね。ただ6話で古田新太さんと生瀬勝久さんが間違った芝居をして待ちになるシーンは、高瀬川としては元カノと一緒にいられるので「もっと揉めろ!」でしたよね(笑)。
【役所】 好いたらしいという言葉はいいよね。流行るかな(笑)。
■もし自分が知られていない世界になったら?「下手なフリして演じてみたい」
――改めて本作の見どころは?
【宮藤】 役所さんとコメディ作品をご一緒するのは念願でした。劇中では高瀬川玄という男のいろんな面が見られますので、楽しんで観ていただければと思います。
【役所】 取材などで「面白かった」と言っていただけたのが何よりうれしいです。僕のテーマは(脚本の)宮藤さんに「面白かった」と言ってもらえること。自分が出演している以上、客観的な関係にはなりきれない部分もありますが、最終回に向けてどんどん盛り上がるドラマに仕上がっています。見届けていただければ幸いです。
――念願だったという宮藤さん、現場で驚いた役所さんのエピソードは何かありますか。
【宮藤】 すごいなと思ったのは、役所さんは最初の本読みや稽古の段階から常に100%の全力、本息で芝居をしてくださること。そうやろうと決めていらっしゃるのでしょうか。
【役所】 決めているというか。最初は軽くやってみましょうと言われてもダメで、そのテンションで実際にやってみないと、芝居が成立するかどうかわからない。上手い人で本番に向けて体力をとっておける人もいますけど、僕にはそれができないんですよね。
【宮藤】 映像の撮影後に舞台の稽古をしたときも、ずっと本息で演じられていて、吸入器を使われているのを見て大丈夫かなと心配になるほどでした。また「こういう風にやってください」と伝えたことも、次の稽古では何となく試すのではなく全力で演じてくださって。おかげで違うと感じた部分にすぐ気づけて助かりましたが、本息でやり続けるのは大変だろうなと。そう思いつつも観ている方としては楽しいし圧倒されました。
――高瀬川のようにある日、自分が忘れ去られてしまったらどうしますか?
【役所】 何でもできる気がしますね。
【宮藤】 確かに。誰も自分のことを知らないなら、そのシチュエーションで堪能できることを堪能して、その後にどうするか考えます。
――街に出てもバレないわけですからね。
【役所】 シナリオを応募したりね。
【宮藤】 「どう思う俺の?」みたいなことですね(笑)。言われてみると、だからなのかな。今でもたまにラジオに投稿するんですけど、もしかしたらそれも超承認欲求なのかもしれないです(笑)。
【役所】 顔バレを気にしなくていいのは気持ちが楽ですよね。例えばどこかの職場に行って、わざと芝居が下手なフリをして演じてみたいかな。それで周りがどんなリアクションをするか見てみたい。ただ、大したリアクションが得られなかったらショックを受けるのでしょうけど(笑)。
【動画】『俺のこと、なんか言ってた?』インタビュー映像
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【動画】『俺のこと、なんか言ってた?』役所広司&宮藤官九郎 インタビュー
■宮藤官九郎は「意地悪な目で観察している?」 役所広司が絶賛する脚本のリアリティ
――作品の脚本を初めて読まれた際、役所さんはどのような点に魅力を感じられましたか?
【役所】 宮藤さんはご自身が脚本家であり演出家であり俳優でもあるから、これまでにたくさんの役者を見てこられているので、「こういう人いるな!」という切り取り方が本当にお上手です。普段から“意地悪な目”で観察されているのではと思うくらい(笑)。それほどリアリティがありました。
――具体的にはどのようなあたりでしょうか。
【役所】 例えばスタッフ同士の関係性や、エキストラの方でも「あんな感じで怒られている人を見たことあるな」といった状況を彷彿させるシーンがたくさんあって、読んでいてドキドキしました。
――視聴者の目線でも、もしかしたらあるかもと思わされる絶妙なリアリティ感が最高でした。宮藤さんがこういったテーマに決めたきっかけは何だったのでしょうか。
【宮藤】 僕もそうですけど、この仕事は顔や名前を知られていくことが醍醐味でもあり宿命。一方で知られてしまったら忘れられない限り、そのイメージを背負い続けることにもなります。傲慢な考え方もしれませんが、「誰も自分を知らない状態にリセットされたら俺はどうなるのだろう?」と、表現に関わる人なら一度は考えると思うんです。初期段階では、これだけ芝居が上手いのに何で誰にも知られていないのだというシーンが面白くなればいいな、ぐらいに考えていましたが、いろいろアイデアが出てきて。忘れられた人が再び認識されていくことで、物語として想像以上に転がっていくのだと思いました。
――その役を役所さんが演じられているというギャップがたまらないですね。
【宮藤】 作り手としては魅力的で楽しかったですね。
――お二人が脚本家と俳優という関係でご一緒されるのは、NHK連続テレビ小説『いだてん~東京オリムピック噺~』以来だと思います。
【宮藤】 あのときは嘉納治五郎という、その世界では神様のような方をチャーミングな人にするにあたって、役所さんだからという説得力があると、作り手としても面白がれますよね。
【役所】 そういえば当時も『嘉納治五郎だぞ』って言っていましたけど、そういうセリフが似合うってこと?(笑)
【宮藤】 いやいや!(笑)。そんなことがないから書けるんです。
■「このために1話からやってきた」 役所が最も印象的な劇中劇のクライマックス
――役所さんは高瀬川玄を演じていかがでしたか。
【役所】 高瀬川は正直な男。きっと多くの俳優の性根は同じだと思います(笑)。ただ普通は承認欲求を隠しますが、高瀬川はあからさま。「俺を誰だと思っているんだ」というセリフがあるけど、実際にそれを言う人はなかなかいないですよね(笑)。
――演じるうえで、最も大切にされたアプローチや意識とは何だったのでしょうか?
【役所】 一番大事にしたのは高瀬川が持つバカ正直さです。たいていの人はエゴやプライドを隠して、いい人として振る舞いますが、高瀬川は隠そうとしているのにバレてしまう。その隠しきれない正直さこそが高瀬川のチャーミングなところだなと。浮気がバレそうになったときの必死な言い訳にしてもバレバレなのが、逆にいいヤツだなって感じがしました(笑)。
――現実で近くにいたら大変そうですが、確かに愛すべきキャラクターではありますね。
【宮藤】 忘れられてあたふたしているから可愛く見えていますけど、そうじゃなかったらヤバい人(笑)。「俺だよ」「ハムの」というのはなかなかだなと思いますけど、清々しいほど正直。今はそういうことは言わない方がいいみたいな風潮ですけど、それをこの人知らないのかな、ぐらい言っていますよね(笑)。
――役所さんの高瀬川はいかがでしたか。
【宮藤】 面白かったです。とにかく早く観たいと思ったのは、高瀬川がインタビュー中に女性問題を追及されるシーンです。「止めてください」「(カメラを)回してください」「あっ、止めてください」というくだりは本当に面白かった(笑)。それを元奥さんが見ているという構造が最高ですね。
――役所さんは特に印象に残っているシーンはありますか。
【役所】 クライマックスの実際の舞台公演を挟みながら、出演者のリアクションとその間に挟まれるインタビューです。このために1 話からやってきたのだなという感じがしました。
■役所&宮藤、世間の評価は「気になる」と本音を吐露
――高瀬川のように世間の評価、ご自身に関する噂話などは気にされますか?
【宮藤】 気にはなります。検索して「俺のこと誰も何も言ってないな」「俺、出ているのに」って無駄に傷ついたり(笑)。だから劇中で高瀬川が主役なのに「『リア王』観に行きましたけど、あなた出ていました?」って言われるのは究極だなと思います。
――高瀬川は主演ですからね。
【宮藤】 気にしない人はいないと思いますけど、僕の場合は褒められると恥ずかしくなっちゃう。というか何かつらくなります(苦笑)。すごくうれしいけど、いま褒められたということは次褒められなかったら、前よりダメってことだよなとかマイナスの方に考えちゃいます。ところで、役所さんはエゴサーチをされることは……?
【役所】 しますよ(笑)。映画が公開されたりすると「みんながどう思っているのかな」って気になるので、評判とか見ます。
――なんと!びっくりしました。では高評価を見聞きされたら?
【役所】 うれしいけど、(本人の手前)一応褒めてくれているのだろうなとか、思いますね。
――ご本人に感想を伝えるにはどうすれば真意が伝わるのか。難しい部分ではあります。
【宮藤】 直接ではなく、たまたま自分の噂を聞いたときは本当なのかなと思います。
――役所さんはどういう方向から感想を言われるとうれしいですか。
【役所】 深いね(笑)。上手いとかではなく(感想を)言ってもらえることがうれしいかな。
■役所、濵田雅功の第一印象は「怖いしセリフも適当かと(笑)」 豪華キャストの裏話
――壬生大也(みぶ・だいや)役の濵田雅功さんら共演者の方々も豪華ですが、特に印象に残っている方はいらっしゃいますか。
【役所】 みなさん素晴らしい俳優で(演技で)笑わせてくれて、適材適所だなと感じました。濵ちゃんも「テレビ界の巨匠みたいな感じで怖いし、セリフなんて適当に言っておけばいいのだろう」と勝手なイメージをしていましたけど(笑)。素敵な演技をされていました。
【宮藤】 もっと変えてくるのかなと思ったら、脚本に書いてある順番で言ってくださって。もちろん当たり前のことではありますが、なんとなくやらないのではと思っちゃう(笑)。すごくナチュラルに演じてくださっていたのがうれしかったです。
――賀来賢人さんが演じている岡本哲も味のあるキャラクターですが、共演されてみていかがでしたか。
【役所】 彼はもともとコメディのセンスが抜群ですけど、岡本のセリフのスピードがとにかく早い。よく言えたなと感心するくらいでした。
――それと松山ケンイチさんが演じた助監督の川島一機と高瀬川の関係性もグッときました。
【役所】 ああいう助監督はたくさんいます。僕自身、成島出監督と助監督時代に会って、脚本を書いて監督になったときに「出てほしい」と言われて出演した経験があります。
【宮藤】 助監督をやっていた人が監督になって呼んでくれるというのは、とても感慨深いエピソードですね。
■宮藤「自分なら絶対イヤ(笑)」 賀来賢人が挑んだ一発勝負の小道具ハプニング
――特に見逃してほしくないシーンやエピソードを教えてください。
【宮藤】 忘れられる前の高瀬川が面白いので全部観てほしいし、運転手をしているときの高瀬川も好きですね。腹の中では絶対思っていないだろうに、後部座席のドアを開けて「どうぞ」って恭しくやっている(笑)。それなのに「すいません。CMなので何日か休ませてください」と言うのは気持ちいいだろうなって。観ていて最高に気持ちよかったです。
【役所】 やっぱり舞台公演のシーンです。みんなのリアクショアンが素晴らしくて、チヂミ姉さん(坂井真紀)も大笑いしていました。途中で帰るのに(笑)。すごく良いシーンになったなと思います。
――「劇団ウイスキーボンボン 第7回公演『誰も知らない大物俳優』として東京のザ・スズナリで上演されたものですね。こちらも話題となりました。
【宮藤】 劇中劇でやろうと思えばできたし、本当にやっているように見せることもできましたが、結果的には実際に上演して良かったと思います。客席にいるキャストのリアクションも感激している様子をGoProで撮影していて、生のリアクションがある素晴らしいシーンになりました。
――撮影秘話などがあれば聞かせてください。
【宮藤】 岡本が最後、小道具が出ていなくてドンとダンボールを倒してペットボトルを持ってくるシーン。実は(公演ではドラマに使った)あの回しかやっていないので、失敗したら台無しじゃないですか。俺ならやるのはイヤだなって思いましたけど(笑)。バッチリで面白かったです。
■解釈をぶつけ合うから面白い 役所のスタンスに宮藤「すごくありがたい」
――高瀬川はある意味ブレない男でもありますが、長年活躍されているお二人が仕事に臨む上での軸やこだわりを教えてください。
【役所】 演じる前に現場で監督と事前に相談しすぎない、ということですね。先にディスカッションする方もいますけど、事前に「自分はこう考えていて」と話し合ってからやる必要はないと思っています。
――どうしてでしょうか?
【役所】 監督の話を聞くと、当然ながらそうしなければいけなくなりますよね? だからこそ何か言われる前に、自分が本を読んで考えた解釈をやった方がいいと考えていますし、後から「こうしてほしい」と言われたら合わせていけばいいと思っています。
【宮藤】 それは(作り手側にとっても)すごくありがたいかもしれません。確かに「こうしてほしい」「わかりました」となったら、そのとおりにやる必要が出てきますよね。
【役所】 現場での話し合いといえば(ドラマにも出てきた)「壬生さんがまた始まったよ」みたいな状況も実際にありますしね。
【宮藤】 現場で監督と俳優の話し合いが長引いて待つことはありますよね。ただ6話で古田新太さんと生瀬勝久さんが間違った芝居をして待ちになるシーンは、高瀬川としては元カノと一緒にいられるので「もっと揉めろ!」でしたよね(笑)。
【役所】 好いたらしいという言葉はいいよね。流行るかな(笑)。
■もし自分が知られていない世界になったら?「下手なフリして演じてみたい」
――改めて本作の見どころは?
【宮藤】 役所さんとコメディ作品をご一緒するのは念願でした。劇中では高瀬川玄という男のいろんな面が見られますので、楽しんで観ていただければと思います。
【役所】 取材などで「面白かった」と言っていただけたのが何よりうれしいです。僕のテーマは(脚本の)宮藤さんに「面白かった」と言ってもらえること。自分が出演している以上、客観的な関係にはなりきれない部分もありますが、最終回に向けてどんどん盛り上がるドラマに仕上がっています。見届けていただければ幸いです。
――念願だったという宮藤さん、現場で驚いた役所さんのエピソードは何かありますか。
【宮藤】 すごいなと思ったのは、役所さんは最初の本読みや稽古の段階から常に100%の全力、本息で芝居をしてくださること。そうやろうと決めていらっしゃるのでしょうか。
【役所】 決めているというか。最初は軽くやってみましょうと言われてもダメで、そのテンションで実際にやってみないと、芝居が成立するかどうかわからない。上手い人で本番に向けて体力をとっておける人もいますけど、僕にはそれができないんですよね。
【宮藤】 映像の撮影後に舞台の稽古をしたときも、ずっと本息で演じられていて、吸入器を使われているのを見て大丈夫かなと心配になるほどでした。また「こういう風にやってください」と伝えたことも、次の稽古では何となく試すのではなく全力で演じてくださって。おかげで違うと感じた部分にすぐ気づけて助かりましたが、本息でやり続けるのは大変だろうなと。そう思いつつも観ている方としては楽しいし圧倒されました。
――高瀬川のようにある日、自分が忘れ去られてしまったらどうしますか?
【役所】 何でもできる気がしますね。
【宮藤】 確かに。誰も自分のことを知らないなら、そのシチュエーションで堪能できることを堪能して、その後にどうするか考えます。
――街に出てもバレないわけですからね。
【役所】 シナリオを応募したりね。
【宮藤】 「どう思う俺の?」みたいなことですね(笑)。言われてみると、だからなのかな。今でもたまにラジオに投稿するんですけど、もしかしたらそれも超承認欲求なのかもしれないです(笑)。
【役所】 顔バレを気にしなくていいのは気持ちが楽ですよね。例えばどこかの職場に行って、わざと芝居が下手なフリをして演じてみたいかな。それで周りがどんなリアクションをするか見てみたい。ただ、大したリアクションが得られなかったらショックを受けるのでしょうけど(笑)。
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