今年活躍した陸上選手を表彰する「日本陸連 アスレティックス・アワード2024」(19日)で、2人のスーパー高校生が新人賞を受賞した。ともに、800mで日本記録を更新した落合晃(18、滋賀学園)と久保凛(16、東大阪大敬愛)だ。落合は7月31日のインターハイで1分44秒80をマーク。久保は7月15日に日本人女子初の1分台となる1分59秒93で、19年ぶりに記録を更新した。
そんな陸上界期待の星ふたりを、シドニーオリンピック™マラソン金メダリストで、10年間800mの競技経験がある高橋尚子さんがインタビュー。お互いの存在についてや、来年東京で行われる世界陸上への思いを聞いた。
【写真を見る】スーパー高校生・落合晃&久保凛「刺激いただいた」「もっと記録出るのかな」800m日本記録保持者の二人が語るお互いの存在
日本の陸上界の歴史を動かしたお互いの存在
高橋:こうやって2人で揃ってインタビューを受けるのは初めて?
落合:初めてです。
久保:初めてです。
高橋:私も10年間800mをしていたので、800mで日本記録って神です!まずは日本記録、そして新人賞もおめでとうございます。色々あった1年でしたけれども、どんな1年でしたか?
久保:自分はシニアの舞台や世界の舞台に今シーズン初めて出場させていただいて、たくさん経験をすることができたシーズンだったと思っています。そして、日本記録を更新することができて、より成長できた1年だったかなと思います。
落合:今年はパリオリンピックってところを目指して1年間取り組んできて、結果は叶わなかったんですけど、その1か月後のインターハイで日本記録を更新出来て、すごくいろんな事にも挑戦できましたし、一喜一憂した1年だったかなと思います。
高橋:2人揃って800mで日本記録。歴史的な1ページを刻んでくれたかなというふうに思うんですけれども、同じ7月だったんですよね。久保選手が7月15日、落合選手が7月31日。落合選手は、自分が記録を出す前に久保選手が出したことで、刺激になりました?
落合:先に日本記録を出されて、本当に僕もやらないといけないなっていう気持ちになりましたし、すごく刺激をもらいました。
高橋:久保選手も同じ高校生が日本記録を出した事は、また大きな刺激になりました?
久保:まず、日本選手権で高校記録を出されて、自分も絶対に出すっていう風にその時に思いましたし、インターハイでは日本新記録を出されて。大舞台で出されることがやっぱりすごいなと感じていたので、とても刺激をいただいていました。
高橋:大舞台で日本記録を出した落合選手と記録会で独走して出した日本記録と全く違う日本記録の出し方ですが、お互いを見てすごいなって思うところは?
久保:やっぱり、前半からの落合選手の勢いと、ラストで絶対に競り負けないっていう部分がとてもすごいなと感じます。
落合:記録会で単独で一人で走り切っての日本記録は、相当力がないとできないことですし、僕が達成できたのは、留学生のムティアニ選手(山梨学院、2年)と競い合ってだったので、競い合ったら、もっともっとタイムは出るのかなっていう期待もあります。
東京2025世界陸上に「絶対出場」
高橋:日本記録を出したことで、世界っていうものが身近になってきたと思います。日本記録を出してから、いくつかの試合に出て大会で優勝しても、涙を流したり、悔しい姿を見ることが多かったかなと思うんですが、自分で何ができたら笑顔で「やったな!」というふうに思えますか?
久保:日本選手権(6月)やインターハイ(7月)が終わってから、記録を出さないといけないっていう気持ちがすごく多く出ちゃっていた部分があって。国スポ(10月)でも優勝は出来たんですけど、やっぱり悔しさの方が大きかったり、記録が出せないと思い通りにいかないっていう、「陸上を楽しむ」って心を忘れてしまっていた部分があったんですけど。その中で、野口監督と話した時に、やっぱり改めて気付いた部分があって。陸上を楽しんで取り組めるっていう部分が、自分のいいところかなと思うので、やっぱり「楽しめた」っていう部分かなと思います。
落合:まずは(来年9月に行われる)東京の世界陸上の出場っていうところがまだ決まっていないので、1分44秒50の標準記録を切って、まずは出場したいなっていう気持ちがあるので、タイムを切れた時は嬉しくなると思います。
高橋:落合選手はあと0.3秒、久保さんは0.93秒ですよ。1秒はないそんな距離だと思うんですけれども、そこを超えるためには何が必要ですか?
久保:世界の舞台でも経験したんですけど、その中で、どの試合も「自分のレースをする」っていう部分がやっぱり大事だと感じて。世界の決勝では全然自分のレースをすることができずに、何もできずに終わってしまったっていう部分があった(U20世界陸上で6位)。2周目で落ちてしまう部分があるので、そのラストで絶対に競り負けないところを磨いていかないといけないと感じています。
落合:今年の冬に取り組もうと思っている事があって。やっぱりパワー。今月、韓国に行かせてもらって、そこでウエイトトレーニングとかも教えてもらって、今後800mをやっていく中で、すごく大切になってくるなって思いましたし、海外の選手は凄くパワフルで、スピードもあるなと感じたので、この冬場のウエイトトレーニングとかバイクのトレーニングで補って、また来シーズンパワフルな姿が見せられたらいいなと思います。
高橋:今後の目標を教えてください。
落合:標準は突破できていないんですけど、世界陸上が東京であるので絶対に出場して、そこで走るだけで終わるのではなく、入賞やメダルとかを獲れるような選手になりたいなって思います。
高橋:800mは「日本は戦えない」ってずっと言われてきた種目ですよね。そこでやっぱり自分がという思いは大きいですか?
落合:そうですね、大きいです。
久保:自分はまだ標準記録までも全然なんですけど、自国開催ということで、東京でたくさんの方に見ていただけるって部分ですごく嬉しく思う部分もあるので、必ず出場して、出場するからにはやっぱり高い目標ではあるんですけど、メダルを獲るということを意識して取り組みたいなというふうに思います。
高橋:同じ年代の選手が同じ目標に向かって進んでいるというのは、ホッとするじゃないけれども、力になるという感じになりますね。
久保:日本記録を更新できたのも、やっぱりその落合選手の姿を見て、刺激をいただいた部分があったので、同じ年代で同じ目標に向かって進めることが出来るというのはとても嬉しく思います。
高橋:日本の歴史をどんどん変えていってください!
高校3年間で落合は800mの自己ベストを12秒37も更新。久保も2年間で10秒03更新するなど、まだまだ成長が止まらない二人。東京世界陸上が行われる2025年は、落合は駒澤大学に進学、久保は高校ラストイヤーで迎える。大舞台を目指す二人に注目だ。
■落合晃(18)
2008年8月17日生まれ、滋賀県・高島市出身。今津中~滋賀学園高。水泳、スキー、フットサル、トライアスロンなど様々な種目を経験し、中学から本格的に陸上競技を開始。6月の日本選手権男子800m決勝で優勝。7月31日のインターハイでは1分44秒80で日本新記録をマークすると8月のペルー・リマで行われたU20世界陸上では銅メダルを獲得した。卒業後は陸上の名門・駒澤大学への進学が決まっている。
■久保凛(16)
2008年1月20日生まれ、和歌山・串本町出身。潮岬中~東大阪大学敬愛高。小学6年生までは、サッカークラブに所属し、中学から本格的に陸上競技を開始。3年時に全日本中学陸上女子800mで優勝。24年日本選手権女子800m決勝でも2分3秒13で初優勝。7月15日の関西学連・長距離記録会(奈良・橿原公苑陸上競技場)で1分59秒93の日本新記録をマーク。05年に杉森美保が記録した2分00秒45を上回り、19年ぶりの記録更新。日本女子初の2分切りを果たす。
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