いま、現場で働く「ブルーカラー」の人たちの収入が増え、一部の職種では「ホワイトカラー」との逆転現象も起きています。転職を考える人も増加していて、この流れをAIが加速させるかもしれません。
【写真で見る】2030年までにAIに代替される可能性のある仕事 10個
AI台頭で・・・ 米・大手テックでリストラも
人型ロボット「ヒューマノイド」。今や生活のあらゆる場面に登場し、病院の案内も駅での観光案内も、AIを搭載したロボットが担う時代になりました。
イギリスの転職支援企業は、AIに代替される可能性が高い10の仕事として、データ入力やコールセンター、法律事務などを挙げています。
大学3年生
「就活もAIにできないことをアピールする流れになると思う。そういうのが増えてくるのはちょっと怖い」
ーー仕事をAIにとられたくないと思うか?
新社会人(営業職)
「世の中数字だけじゃないので。人と人の対話でお客様との絆をつくって頑張っていきたいと思います」
実際、アメリカの大手テック企業では、AIが要因のリストラが次々と発表されています。
アマゾンはAIの導入などを理由に、全世界で約3万人の人員削減を発表。マイクロソフトもAI投資に伴う再編で、全従業員の4%にあたる約9000人を削減するとしています。
アメリカで注目!ブルーカラー=肉体労働が人気の理由
「ブルーカラー」とは、建設、運送、製造など、現場作業が中心の仕事を示した言葉。逆に、事務やシステムエンジニアなど、オフィスが中心の仕事は「ホワイトカラー」と呼ばれています。
米・マサチューセッツ州に住むエイダンさん(21)
「手を使って何かを作るのが好きです。『これ自分が作ったんだ』と思える瞬間がある」
エイダンさんは、ヨットなどの補修を営む会社で溶接などの仕事を担当しています。
この仕事に就いたのは3年前。実は大学に合格していましたが、入学の2週間前に進路を変えました。
エイダンさん(21)
「金融を専攻するつもりだったが、『ちょっと待てよ』と。金融なんてAIに奪われる。断言するが10年以内に金融の仕事の9割はAIに取って代わられるはず」
アメリカの若者の間では、技能職など「ブルーカラー」の仕事が人気となっています。
エイダンさんが勤める40人あまりの職場にも、ひと月で3人の若者が加わったそうです。
エイダンさんの上司 ジェフさん
「現場仕事の需要は山ほどあって、人手は全く足りていない」
エイダンさん(21)
「これからもずっと100%この仕事をしたいと思っている。でも同時に、スキルさえあれば自分の好きな場所へ行ける。どこだって仕事ができる。大学に行くことと比べて、『スキルを持つこと』の一番の魅力はそこ」
AIによる代替が難しいと言われる「ブルーカラー」の仕事。人手不足も相まって、「現場労働」や「技能労働」の価値が再評価されています。
アメリカの経済紙・フォーブスによると、エレベーター・エスカレーターの技術者の年収の中央値は約1640万円(日本円に換算)、送電線の設置・修理業者は約1420万円となっています。
こうした現象を比喩した「ブルーカラービリオネア(億万長者)」という言葉も生まれました。
日本でもブルーカラービリオネア!? 年収2000万を目指す「とび職人」
「ブルーカラービリオネア」はアメリカだけの話ではありません。日本でもコロナ渦以降、ブルーカラーの給与額は上昇を続けています。
都内の住宅で足場を組む「とび職人」の関孝秀さん(33)。16歳でこの世界に飛び込みました。当時の日当は6000円ほどだったといいますが・・・
ーー今の日当は?
とび職人 関孝秀さん
「2万3000円~2万4000円くらい」
17年前と比べ、日当が4倍に上がったといいます。
足場会社「saaave」星山忠俊代表
「雇用もコンスタントには進んでいるが、業界的にはかなり厳しい。なかなか人が少ない。人手がいない状態。人を集めるためには、良い給料を渡すというのが必要になってきている」
建設業の労働需給は需要に対して供給が足りておらず、リクルートワークス研究所のシュミレーションでは、2040年には約66万人の労働力が不足する見通しだといいます。
ただ、建物の工事に欠かせない足場は、高所での作業を支える“命綱”。現場ごとに異なる建物の形状や構造を見極め、最適な足場の組み方を判断する、まさに職人技が求められる現場です。
とび職人 関さん
「やってみないと分からないことがどの現場でも絶対にある。そこが人の判断じゃないとできないと思う。(AIに)助けてもらえる部分はあるかもしれないが、人の手でしかできない作業がメインだと思うので、なくなることはないと思っている」
日本足場会・代表理事でもある星山代表によれば、今やとび職は年収1000万円以上が目指せる仕事。
ーー年収どこまで目指す?
とび職人 関さん
「2000万円くらいで」
ホワイトからブルーへ 増えるミドルの転職
転職支援などを行う会社では、ブルーカラーへの転職を希望するミドル世代が増えてきているそうです。
きょう転職相談に来たのは、事務職の40代の女性。トラック運転手への転職を考えているそうです。
担当者
「一般的なトラックの仕事だと、体力面などの不安を話す方もいますが・・・」
トラック運転手に転職希望 女性(40代)
「今まで事務職でどうしても女の人が多いところで働いてきているので、全く苦手ではないけど、男ばっかりだとどうしようみたいなところは正直あります」
トラック運転手は未知の世界。それでも転職を希望した理由は・・・
トラック運転手に転職希望 女性(40代)
「離婚したので、収入が欲しいっていうのがまず1番で。子どももちゃんと進学させたいってなった時に、お金はいくらあっても困らないだろうっていうので、体力的に簡単な仕事ではないのはわかっているが、金銭面を考えると、今だったらまだできるかなという感じもして」
元夫の扶養に入っていた頃の年収は約130万円。ブルーカラーへの転職で270万円アップを目指します。
トラック運転手に転職希望 女性(40代)
「突然1人になったとか、突然(パートナーが)出ていってしまったときに、希望があるというか、助けてくれる業界なのではと思った」
女性が相談に来た、この会社がブルーカラー従事者を対象に行ったアンケートでは、約5人に1人がホワイトカラーからの転職だったといいます(レバレジーズ「レバジョブ」今年4月発表)。
なぜ今、30代・40代を中心にミドル世代はブルーカラーを選ぶのか。
レバレジーズ 事業責任者 森山智典さん
「ライフイベントが起こる中で、収入面を見直したいという方や、昨今AIが台頭していて、AIに奪われないような、手に職をつけたい方々が増えてきたところで(ブルーカラーに)転職したい人は一定数いるのかなと思う」
AIにできない仕事 ブルーカラーの年収は?
小川彩佳キャスター:
AIの代替が難しい、現場作業の仕事が人気ということです。
【米・ブルーカラーの年収 中央値】(フォーブスより)
・エレベーター・エスカレーターの技術者 約1640万円
・送電線設置・修理工 約1420万円
・航空機電子機器の整備士・技術者 約1220万円
・鉄道員 約1160万円
労働統計局によると、アメリカの全職種の年収の中央値が約790万円ですから、それと比べても1.5倍、2倍というような年収になっています。
この流れを象徴する言葉として「ブルーカラー“ビリオネア”」という言葉も出てきているようです。
地域エコノミスト 藻谷浩介さん:
そもそも現代社会において、きちんとした仕事をしないと事故が起きる・人が亡くなってしまうような事態を防ぐ技能を持つ人に高い給料が支払われるのは当たり前だと思います。
逆に、AIを見て検索しながらそれを書類に書くような仕事はAIでやればいいわけで、オフィスに座っている人の方が給料が高いというのは昔からおかしいと思っていました。
そうは言っても人手不足ですよね。
日本は国全体の失業率が2%台です。これだけ人が足りない国で現場に人がいない以上、給料を上げざるを得ないのではないでしょうか。
AIに代替されやすい仕事とは? 日本でもブルーカラーへの転職増加
藤森祥平キャスター:
あるイギリスの転職支援をしている企業の調査データによると、2030年までにAIに代替される可能性の高い仕事というのが以下の通りです。
▼2030年までにAIに代替される可能性のある仕事(LiveCareer UKより)
・データ入力事務員
・コールセンター
・カスタマーサービス担当
・小売店のレジ
・文章の校正、編集者
・パラリーガル、法務助手
・経理
・飲食店スタッフ
・倉庫作業員
・市場調査アナリスト
地域エコノミスト 藻谷浩介さん:
日本だと、小売店のレジや飲食店のスタッフといった接客は、心と心の交流をとても大事にしている。AIやロボットがやるというのは、一部では可能ですが、日本ではあまり好まれない。
むしろ逆に日本では、オフィスビルの中で何も付加価値をつけずに実はお金を中抜きしているだけの仕事や、なんなら会社の人事部や役員はAIで代替できるのではないかという気がします。
小川彩佳キャスター:
日本でも、事務職などのホワイトカラーからブルーカラーへの転職希望者というのも増えています。
地域エコノミスト 藻谷浩介さん:
一生懸命勉強をして良い学歴を取ってホワイトカラーになったのに、と思われる方もいるかもしれませんが、実態はその逆で、60歳でクビになって次に仕事がない、しかし90歳まで生きるという不安があります。
手に職がついていれば、現場の激しい仕事ができなくても、たまに出ていくとか、若い人を育てることができます。
小川彩佳キャスター:
どういうスキルが大事なのでしょうか。
地域エコノミスト 藻谷浩介さん:
人の心をつかむ能力ですとか、医者の手術などが典型ですが、機械でできるようでも手触り・肌触りでその人の感覚を蓄えていくような仕事は絶対になくならない。
日本は職人を重んじる国ですから、全員でブルーカラーになってもいいのではないでしょうか。
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<プロフィール>
藻谷浩介さん
地域エコノミスト 共著「東京脱出論」
(株)日本総研主席研究員
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