
約80兆円の対米投資の第1弾が決まったが、日本側のリターンはどうなるのか?一方国内では高市総理が「押して、押して、押しまくる」と語った成長戦略。実現への課題は?
対米投資第1弾決定「ビジネスチャンス大きい」
アメリカが一方的に課した関税を引き下げるため約束した、約80兆円(5500億ドル)もの対米投資。
トランプ政権は17日、第1弾となる3つの案件が決まったと発表した。
<対米投融資 第1弾合意>
▼AI基盤整備を支える“史上最大規模”の【ガス火力発電所】の建設
⇒中西部・オハイオ州
⇒事業費(想定):約333億ドル(約5.2兆円)
▼【米国産原油の輸出インフラ】整備
⇒南部・テキサス州
⇒約21億ドル(約3300億円)
▼半導体生産にも使われる【人工ダイヤモンド】製造
⇒南部・ジョージア州
⇒約6億ドル(約900億円)
大統領選の“激戦州”や“共和党の牙城”であるテキサス州が選ばれているが、総額360億ドル(約5.6兆円)もの投資は、日本の利益になるのだろうか?
番組のコメンテーターで、25年12月から内閣官房参与として政府に助言を行っている細川さんは―
『明星大学』教授 細川昌彦さん:
「“必ずしも日本企業はアメリカに投資するのではなくて”、アメリカ企業あるいは第三国の企業がアメリカに投資し工場を作る。そこに“日本企業が装置や材料を供給する”、あるいはその工場から“物を買う”という形で日本の企業が関与する。3つのうちの2つ(原油輸出インフラと人工ダイヤ製造)はこのパターン」
――ガス火力発電所は、事業主体がソフトバンクグループ。日本にとって当然メリットがある?
細川さん:
「これにJBIC(国際協力銀行)は融資をする。これは国民の税金が使われているということなので、“出融資したものが回収できるかどうか”を、日本政府としても精査した上で踏み出さないといけない」
――テキサスの原油積み出し施設は、米国企業が事業主体だが?
細川さん:
「原油の積み出しのタンカーを誘導する船を供給するとか、設備を供給するというのは“ビジネスチャンス”で大きい」
人工ダイヤ製造は「経済安全保障上メリット」
「人工ダイヤモンド」は半導体や自動車の製造に欠かせないものだが、人工ダイヤ製造企業の代理店『クオドシックス』によると、「世界シェアの“9割以上が中国”」とのこと。
その製造は、日米で利害の一致があると細川さんは指摘する。
『明星大学』教授 細川昌彦さん:
「2025年10月に、中国は“人工ダイヤモンドの輸出規制”をやると言って、米中首脳会談の結果1年延期になっただけなので、いつ何時、刀が振り下ろされるか分からない。人工ダイヤを何とか確保したいとアメリカも日本も同じ思惑なので、“経済安全保障上のメリットがある”」
そして、今後の投資プロジェクトを巡る“トランプ政権との向き合い方”については―
細川さん:
「トランプ大統領は“実利優先”。アメリカの経済安全保障に貢献しているかがものすごく大事。“日本はアメリカの経済安全保障に不可欠な存在”だということを、いかにトランプ大統領にアピールできるかが鍵になってくる」
ポイントは「お金が回収できるか」
国際経営論と経営戦略論が専門の入山さんも、対米投資は「日本にとって大きなビジネスチャンス」だと話す。
『早稲田大学ビジネススクール』教授 入山章栄さん:
「今アメリカは、インフラ、例えば発電所を作ったり港湾のところの力があまりない。そういった会社が海外に出ちゃったので。かといって中国とも組めない。そうなると、製造業とかリアルなところのオペレーションの力を持っているのは、やはり日本企業。なので双方にとって実は結構いいこと。しかも比較的額が大きいから、民間だけでやろうとすると相当時間がかかるが、政府が思いっ切り入っているので一気に決められた」
――アメリカだからこそできるプロジェクトもある。巨大なガス火力発電所は日本ではなかなか作りにくいだろうし、人工ダイヤも高温高圧の装置が必要で電気が安くないとできないから一緒にアメリカで作った方がやりやすいと、そういう側面もある
入山さん:
「こういう形で両国が緊密になってビジネスを作っていくという意味では決して悪いことではない。ただ、問題は“利益回収”。きちんとビジネスとして成立させて、日本がお金を回収できるかという。そこがほぼポイントなので、慎重に計画を立てて数字を作ってからやるべきだと思う」
「成長のスイッチ押しまくる」企業の課題は?
一方、国内では―
「とにかく成長のスイッチを押して、押して、押して、押して、押しまくってまいります」
20日、施政方針演説に臨んだ高市総理は、日本に圧倒的に足りないのは“国内投資”だとし、その促進に「徹底的なてこ入れをする」と語った。
<施政方針演説>(20日)
▼責任ある積極財政実現で予算編成見直す
▼複数年度予算や長期的基金で投資促進策進める
▼対GDP比で政府債務残高を引き下げる
▼重要物資のサプライチェーン強靭化進める
また、重点投資対象の17の戦略分野に関して3月から官民投資の工程表を提示する方針を示しているが、肝心なのは、これを呼び水にして“民間の投資”が出てくることだ。
<重点投資17分野>
▼合成生物学・バイオ▼航空・宇宙▼創薬・先端医療▼海洋▼デジタル・サイバーセキュリティ▼AI・半導体▼造船▼港湾ロジスティクス▼コンテンツ▼フードテック▼防衛産業▼情報通信▼フュージョンエネルギー(核融合)▼防災・国土強靭化▼量子▼資源・エネルギー安全保障・GX▼マテリアル(重要鉱物・部素材)
――日本企業はずっと内部留保が多い状態。本来はこれを投資や賃上げに回さなければいけないのに、なぜそうならないのか
<企業の株主還元>2024年
【日本】▼配当35%▼自社株買い26%▼内部留保39%
【アメリカ】▼配当35%▼自社株買い53%▼内部留保11%
※野村証券市場戦略リサーチ部などより野村證券投資情報部作成
『早稲田大学ビジネススクール』教授 入山章栄さん:
「すばり経営の問題。日本の上場企業の最大の課題の1つは、多くの企業で社長の任期が決まっていること。成長投資や賃上げは中長期的な成果を求めるものだから、自分の任期が数年で終わるとわかっている社長はやらない。そもそも社長というのは、株主総会で毎年諮られていてある意味1年任期なので、うまくできている社長だったら10年でも20年でもやればいい。そうなれば長期のための成長投資が必要なので、内部留保なんかしている場合じゃないとなる」
勝ち筋産業は“AI時代ゆえ”の3つ
入山さんは、日本企業が成長するための“3つの条件”をあげる。
<日本企業 成長の3条件>
【勝ち筋産業】▼リアル+AI▼エンタメと食▼ブランド
【必要なこと】▼圧倒的な雇用の流動化▼人材の能力の大幅なシフト▼世界に売っていける経営力
人材のシフトについて競争力強化の鍵は“仕事のスマイルカーブ化”だ。
⇒横軸は仕事のプロセスで上流~中流~下流
⇒縦軸は付加価値
上流・下流は高付加価値・中流は低付加価値となり、グラフが人が笑った口のような形になる
『早稲田大学ビジネススクール』教授 入山章栄さん:
「仕事を上流中流下流と分けたときに、上流は【答えがない中で長期方針を決める】ところ。つまり経営の仕事でAIはできない。だから価値が上がる。下流は【リアルな現場の仕事】。ここもAIがやりきれないので価値が上がる。実際に建設現場では給料が上がっているし、ファミリーレストランのガストも店長は1000万円。丸亀製麺も店長に最大2000万円出すと言っている。それくらい実は下流の仕事は価値が上がっている」
それに対して、価値が上がらないのが「中流」だ。
入山さん:
「上からの情報を下に流す。あるいは現場からあがってきた情報を整理して上にあげる。これは中間管理職とバックオフィスの仕事だが、ほとんどAIができる。日本の企業の課題はこの“人材のシフト”で、今は幸か不幸か人手不足。なので大リストラをして中流の人たちを会社から追い出すというよりは、むしろ上流や下流に移ってもらうことが必要になってくる」
――【エンタメと食】・【ブランド】も勝ち筋産業だと
入山さん:
「便利なものはAIがやっちゃうので価値がない。むしろこれからは、なんだか知らないけどお金を払っちゃうと。その代表が推し活で、これはエンタメ。食もAIに取られないので価値が出る。また、AI時代だからこそブランドに価値が出る。日本は歴史が長い国だからそういう潜在性がある。私は京都発のブランドなんかがもっといっぱい出てくるといいなと思う」
(BS-TBS『Bizスクエア』 2026年2月21日放送より)
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