9月25日、パナソニックサイクルテックが発表した「漕がない自転車」。電動モーターで走りますが、免許は不要です。こうした手軽さから、いま街中で「電動モビリティ」が急増。交通事故の増加が課題となっています。利便性と安全性の両立をはかるには、どうすればいいのでしょうか。
【写真で見る】歩道走行ができるモードも…“漕がない”電動自転車
「漕がない自転車」登場 歩道を走行できるモードも
25日、パナソニックサイクルテックが発表したのは“漕がない”電動自転車。
喜入友浩キャスター
「すごい推進力!一気にいきました、スムーズですね」
手元のハンドルを回すとモーターで動く、電動モビリティ。時速20キロ以下で車道を走ることができます。
モードを切り替えて、時速6キロ以下などの条件を満たせば、歩道も走行できます。
喜入キャスター(時速6キロ 歩道モード)
「早歩きぐらいのスピード。このスピードですと歩道を走行できます」
ヘルメットは努力義務。1回の充電で、約40キロ走ることができるということです。
パナソニック サイクルテック 稲毛敏明社長
「新しいモビリティとして伸びる可能性を秘めていると。(自転車を)漕ぎたくないという一定のお客様がいる。その選択肢として、特定小型原付があるんじゃないかと。(Q.手応えはある?)手応えはあります。『あります』と言うしかない。これからですけど」
社長も期待を寄せるこの乗り物、道路交通法では2年前に新設された「特定小型原動機付自転車」に区分。16歳以上が運転でき、免許は不要です。
急速に普及「電動モビリティ」 LUUPは2年で5倍に
2023年7月の法改正をきっかけに、いま急速に普及しているのが電動キックボードなどの電動モビリティです。
シェアリングサービスを展開するLUUPでは、車両を借りたり返したりするポートの数が、2023年3月の約2900か所から、2025年9月は5倍の約1万5000か所に拡大。電動キックボードと電動アシスト自転車を合わせ、3万台の車両が稼働しています。
大学生
「返すところがどこにでもある。便利だと思うし、大学生だから車が持てない」
「終電がなくなったら結構助かる。バスも早い時間に終わるので、そこで移動ができると考えたら、あったら自分も使いたい」
そこに目を付けたのが自治体です。東京・板橋区が運営する植物館の近くにLUUPのポートを設置。
9月17日から10月31日までの期間で、LUUPの利用が10分間無料となるクーポンを配布し、利用促進を図っています。
板橋区都市計画課 伊東龍一郎課長
「バスとか移動手段ありますけど、やはり運転手不足などの関係で減っている状況がありますので、それを補うという面もあります」
「便利」普及の一方で増える事故
新たな移動手段として期待が高まる一方で、増えているのが交通違反や事故です。
東京・渋谷区では、電動キックボードが首都高速道路に進入し、約1キロにわたって走行しました。
また、韓国では違法に2人乗りをしていた電動キックボードが車と衝突。2人は軽傷ですみましたが、重大事故につながりかねない場面でした。
タクシードライバー
「(Q.電動モビリティは見かけますか?)見かけます、邪魔です、はっきり言って。信号全然守ってくれないんですよ」
「脇を走っていたりすると駐車車両があるときに出っ張ってくる、向こうが。そういうときは鬱陶しいなと」
警察庁によりますと、制度が始まった2023年7月から2024年6月までの1年間で、電動モビリティの事故件数は219件。さらに、2024年7月から2025年6月までは367件と1.5倍に増えています。
どうすれば交通事故を減らすことが出来るのでしょうか。
東海大学 鈴木美緒准教授
「車との衝突とかを防ぐために、急に飛び出るようなことをしないで、ちゃんと左側を走るというんですかね。車の人から見つけてもらいやすいように走るということ。電動キックボード利用者自身の安全に繋がるかなと思います。
2026年の4月に自転車の青切符導入されますけれども、そういったものできちんと駄目なものは駄目というのが浸透してこないと、なかなか厳しいのかなって感じはします」
便利さの裏で…「飲酒運転」は自転車や原付バイクより多く
藤森祥平キャスター:
警察庁によると、「電動モビリティ」について、2024年1月から6月に起こった事故のうち、全体の17%が「飲酒運転」によるものだったということです。
自転車や原付バイクは、事故全体のうち飲酒運転は1%にとどまっているので、数が多いといえそうです。
東海大学の鈴木美緒准教授は「お酒を飲んだ後に終電がなくなっても借りることができる。歩くより楽なので乗ってしまう」とみています。
クイズプレーヤー 伊沢拓司さん:
罰則をきちんと知らせることが大事で、モラル頼みや性善説では、もう回らなくなってきてるのかなと思います。
3年で2回違反すると違反者講習行きということで、面倒くさい場所が用意されていると思うのですが、あまり周知が行われていない感じがします。そういう点を事業者や自治体には広報してほしいと思います。
ただ、使える地域と使えない地域で差があるので、広報を行いづらいというのもあるかもしれません。
藤森キャスター:
伊沢さんは、電動モビリティに乗ることはありますか。
クイズプレーヤー 伊沢拓司さん:
乗るときは乗りますし、便利なのは間違いありません。
でも、“そういう目”で見られているという意識はあるので、余計に危ない使い方をしないように、と思います。
小川彩佳キャスター:
ヒヤッとすることはありますか。
クイズプレーヤー 伊沢拓司さん:
たくさんありますよ。私は(車の)運転をするので、やはり危ないと思うこともいっぱいあります。
使う側が気をつけないといけないとは思いますが、厳罰化されていることを知らないと意味がありません。アプリ上でポップアップで出てきても、急いでるからクリックして終わりで現実的ではないと感じます。
海外では規制強化の動き 「時間で計算」から「距離で計算」に
藤森キャスター:
海外では、規制を強化する動きが相次いでいます。
▼フランス・パリではシェアサービスを禁止(2023年)、▼ノルウェーでは夜間の使用を禁止(2021年)、▼韓国ではヘルメットや免許を義務化(2021年)などがあるということです。
ベルギーでは事業者側が事故を減らす取り組みを行っていて、▼新しい利用者には「初心者モード」として、最初の5回は最高速度15キロに制限。▼料金システムも「時間で計算」ではなく「距離で計算」しているということです。
時間加算で「早く行けば料金がかからなくて済む」という気持ちが働くことをなくす目的です。これにより、時間加算より平均速度は9%減少したということです。
鈴木准教授も、距離での料金加算には賛成で、繁華街など人通りの多いところでは、GPSを使って、強制的に速度を落とすなどの対策も考えられるといいます。
小川キャスター:
日本ではルールが追いつかないまま、利用が拡大してしまっている印象はありますね。
クイズプレーヤー 伊沢拓司さん:
「新しい駅前を作る」というコンセプトで、電動モビリティが使われるのは、今の都市の再活性化にとって意味があると思います。
ただ、今の状態だと安全な技術が生み出される前の段階で、反感が広がったり、危なすぎる事故が起ったりと、ブレイクスルーを待たずして、事業が止まってしまう可能性もあると思います。
今対策しないと、理想が実現されなくなる可能性もあるように感じます。国や事業者についても、1回しゃがむ時期が来ているのかもしれません。今のままでは危ないですよね。
小川キャスター:
お年寄りが使うことも想定されるなど、移動手段の可能性はありますからね。
電動マイクロモビリティについて「みんなの声」は
NEWS DIGアプリでは『電動マイクロモビリティ』について「みんなの声」を募集しました。
Q.電動モビリティ どう思う?
「さらに普及すべき」…2.8%
「歩行者との事故が心配」…23.1%
「他との共存ルールが不十分」…30.9%
「免許を義務付けるべき」…41.4%
「その他・わからない」…1.8%
※9月25日午後11時11分時点
※統計学的手法に基づく世論調査ではありません
※動画内で紹介したアンケートは26日午前8時で終了しました。
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<プロフィール>
伊沢拓司さん
株式会社 QuizKnock CEO
クイズプレーヤーとして活躍中
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