E START

E START トップページ > 経済 > ニュース > 「いい事しながら利益がでれば」ジャパネット2代目社長が1000億円かけて挑む“地域創生”【Bizスクエア】

「いい事しながら利益がでれば」ジャパネット2代目社長が1000億円かけて挑む“地域創生”【Bizスクエア】

経済
2025-05-08 07:00

通販大手『ジャパネットホールディングス』が手がけた複合施設、長崎スタジアムシティ(長崎市)が開業から半年を迎えた。46歳の2代目社長が描く「民間企業が挑む新たな地域創生のカタチ」とは。


【写真を見る】「いい事しながら利益がでれば」ジャパネット2代目社長が1000億円かけて挑む“地域創生”【Bizスクエア】


「日本で最も選手を近くに感じる」スタジアム

2024年10月にオープンした「長崎スタジアムシティ」。
東京ドーム1.5個分の広さで、サッカースタジアムを中心にアリーナ、ホテル、商業施設、オフィスビルなどで構成される複合施設だ。


サッカーJ2の「V・ファーレン長崎」のホーム、<ピーススタジアム>の特徴は、観客席とピッチが近いという点。


『リージョナルクリエーション長崎』松岡智史部長代理:
「観客から選手達までの距離が最短で5メートル。正真正銘日本で最も選手を近くで感じられるスタジアム」


選手に一番近い席は“ピッチと同じ高さ”に設置され、実際に座ってみた播摩卓士キャスターも「こんな前に座ったことない。すごく近い」と驚きの様子だ。


松岡さん:
「選手たちよりも、もはや下の目線で試合を見ることができる。臨場感や圧倒的なインパクトはこのスタジアムならではの観戦体験になる」


試合がない日もスタジアムは“無料開放”されているため訪れる人も多い。
「芝生がきれいだなってボーッと見ていた」(来場客・福岡県から)
「今日私が入学式で、近くなので記念に写真を撮りたいなと思って」(来場客・県内から)


2代目社長が1000億円かけて挑戦

開業半年で約280万人(4月末時点)が来場しているという「長崎スタジアムシティ」は、『ジャパネットホールディングス』が約1000億円をかけて開発した。


ジャパネットといえば創業者・髙田明さんの印象が強いが、2015年に経営を引き継ぎ長崎スタジアムシティのプロジェクトを進めたのは2代目の髙田旭人さん(46)だ。


平日で9000人、イベントによっては週末で2~3万人が来場するようになり「思ったより浸透出来て良かった」と口にする。


『ジャパネットホールディングス』髙田旭人社長兼CEO:
「あとは持続可能に出来るか。単体で収益を生み続けられるかはまだ道半ばだが、
あと半年、1年で積み上げていけば大丈夫かなと。なんとかなりそうかなくらいの感覚。ホテルの稼働率が今は5割くらいだがそれが7~8割になってくると全体としての収益も見えてくるので頑張るしかない」


サッカースタジアムを部屋のテラスから見下ろせる<スタジアムシティホテル長崎>のスタンダードスタジアムビューキングルームは2名1室朝食付きで3万2600円から。


試合がない日も「収益を上げる」工夫

スタジアムに隣接する<ハピネスアリーナ>は、プロバスケットボール「長崎ヴェルカ」のホームだが、この日開催されていたのはアウェーで行われたサッカーの【パブリックビューイング】(モニター前の当日券:1500円/2階席:無料)。


縦10m×横18mの超巨大ビジョンに、派手な照明やパフォーマンスなどの演出でホームゲームさながらの“一体感”と“没入感”を楽しめる仕掛けだ。


観戦客:
「長崎全体が盛り上がっているので、人が全国からも集まってきていると感じる」


サッカーのホームでの試合がない日には、専門のガイドが案内する【スタジアムツアー】も開催(大人2500円・子ども1000円)。


普段入ることの出来ない選手ロッカーや、キャスター気分を味わえる中継スタジオ、さらには記者会見室まで見ることができる。


ツアー参加客:
「こういう舞台裏はなかなかのぞけないので楽しみにしていた。実際選手しか入れないところとか見られたので感激している」


そして、スタジアムの上空を滑走する長さ258mの【ジップライン】(2500円)は、「グラウンドの上を通ると芝のにおいもした」「あと5回やりたい」など満足度もかなり高い。


髙田社長兼CEO:
「お金を使う場所を作ることで積み上げていけるのではないかと。誰もやったことがないのでジャパネットらしく先頭に立ってやってみようかなという感覚。喜んでもらえたら気持ちよく払ってもらえるだろうという前提で、とにかくお客さんのためのことをみんなでやっている」


――通販事業と同じ線上にあるビジネスなのか?

髙田社長兼CEO:

「めちゃくちゃ近いと思う。通販はスピード感がすごいので、ショッピングが終わると直後から電話がかかって“今赤字がいくらか”リアルタイムで見られる。スタジアムも同じ仕組みを入れていて、試合をしたら今日はいくら赤字だったのか飲食店はいくら黒字だったのかをリアルタイムで見るようにしている。通販とすごく似ているし、親和性は高いと思う」


「客を待たせない」民間ならではの工夫

スタジアムとつながる商業施設には、食品スーパーをはじめスポーツブランドショップに温浴施設、学習塾まである。


『リージョナルクリエーション長崎』松岡部長代理:
「マネタイズしていく上で365日賑わいを作っていかないといけない。より交流人口を増やしていかないといけない」


<フードホール>には、「長崎ちゃんぽん」や「佐世保バーガー」の名店をはじめ、1皿にピラフ・ナポリタン・トンカツの3種がのる「トルコライス」発祥の店などの“地元の味”の他、長崎や九州初出店の店も並ぶ。


松岡さん:
「長崎の人にも楽しんでもらえるし、試合の時はアウェーから来た客にも長崎らしい食事を提供できるようなフードホールになっている」


そして、ここにも民間ならではの特徴がある。


力を入れているという「スタジアムシティアプリ」ではフードホール全店舗でモバイルオーダーが可能で、選んで注文し通知が来たら取りにいくだけ。


駐車場でも
▼アプリで事前予約⇒駐車場待ちを減らす
▼試合直後に出庫するより2時間後に出庫⇒料金がお得になるなど、客を“待たせない”工夫が施されている。


オフィスビルには、現在21社が入居。
最上階にはスタジアムシティや長崎の街が一望できる「入居企業専用のラウンジ」があり、企業間の交流の場となっている。


民設民営で“地域創生”の狙い

現地を取材した播摩キャスターが「一番感動した」と話すのは、基本的に【全部自前】でやっているところだ。


――ホテルの運営を大手チェーンに委託したり、ショッピングセンターもあれだけの規模になれば大手不動産デベロッパーに頼むのが普通。なぜ通販事業者のジャパネットが自分でやるのか。

『ジャパネットホールディングス』髙田旭人社長兼CEO:

「父の代から大事にしていることだが、基本的に自前でやるか外部にお願いするかの基準は【開業直後の精度ではなく、1年後2年後3年後にどっちの方が品質が高いか】という思考。ホテルは外部に頼んだ方が最初は楽だが、3年後どっちの方が磨かれていいホテルになっているかを考えたら、間違いなく自分たちで思いがある人がやった方がいいだろうと。迷わず自前という判断をした」


――民設民営のビジネス。1000億円の回収は大変だ。

髙田社長兼CEO:

「我々通販で2024年は2700億円くらいの売上高。おそらくスタジアムシティ単体だと年間売上は100億円位で全体の4%という世界。それでも自分たちの施設を使いながら収益をアイデアでのせていくので、何とか30年以内で回収できるのではないか」


また、【民設民営】にしたからこそのメリットもあると話す髙田社長。
例えば座席数や屋根の有無にしても社内会議で全部決められるため、“合理的”“スピード感”をもって判断できるという。


――ジャパネット全体の中で、この地域創生事業の位置付けは?

髙田社長兼CEO:

「一応ビジネスとしてやっている感覚はあって、全て奉仕的な感じでやっているつもりもない。一方で収益を上げるだけだったら他のことをやるので、バランスを取りながら感動とビジネスを両方実現することにチャレンジしている。これが成功すると日本中に広がって、日本中の地域が自然と民間企業の力で強くなっていく。“いいことをやりながらちゃんと利益が出たらいいな”という感覚のビジネス」


1000億円かけた挑戦には課題も

取材を終えた播摩キャスターは、“地域創生”というとどこか肩に力が入って『頑張らなければ』という印象がある一方で「髙田社長からは、ビジネスと両立させていこうと“自然体の感じ”を受けたのが非常に印象的だった」と話す。


また、期待と同時に課題を指摘する声も。


『東短リサーチ』社長 加藤出さん:
「税金を使わず“民間の知恵”で地域活性化をしていく成功例にぜひなって欲しい。どうしても日本の財政の限界があるから、民間の力でいかにやっていくかという大変重要な局面。ただオープン当初は客も一杯入るが、いかにリピーターを増やすかが課題だと思う」


(BS-TBS『Bizスクエア』 2025年5月3日放送より)


スマホのバッテリーを長持ちさせるコツは?意外と知らない“スマホ充電の落とし穴”を専門家が解説【ひるおび】
「水道水がおいしい都道府県」全国1位は?“蛇口からミネラルウォーター”の地域も【ひるおび】
「パクされて自撮りを…」少年が初めて明かした「子どもキャンプの性被害」 審議進む日本版DBS “性暴力は許さない”姿勢や対策“見える化”し共有を【news23】


情報提供元:TBS NEWS DIG Powered by JNN

ページの先頭へ