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「ハーイ」ベッカム夫婦の“神対応”…「完全アウェイ」の英ウィンザー城、カズオ・イシグロ氏単独取材までの全舞台裏

海外
2025-11-16 06:01

2025年11月4日、ロンドン郊外・ウィンザー城でチャールズ国王から勲章を授与された長崎県出身のノーベル賞作家カズオ・イシグロさん。


【写真を見る】ベッカムさんと妻のヴィクトリアさん


式典の後、イシグロさんは単独インタビューの中で、チャールズ国王と「AIの脅威」についての会話をしたことなどを語ってくれました。この単独インタビューに至るまでの舞台裏をお伝えします。(前編・後編のうち後編)


「返信がない…」不安なまま迎えた当日

すべての始まりは、式典の数日前にイギリス王室から届いた一通のイベント案内メールでした。 「ウィンザー城で叙勲式典」。名簿を見ると、サッカー元イングランド代表のデイビッド・ベッカム氏、そして、日本とゆかりが深い、カズオ・イシグロさんの名前がありました。


通常、イギリス王室が主催するイベントは英国メディアの代表取材になることがほとんどで、後から配信される映像や写真をもとにニュースを伝えています。しかし、今回はイシグロさんが授与されるとあって、ダメ元で自分たちも取材ができないか問い合わせをしました。


返ってきたのは「2名限り参加可能。ただしイシグロさんが取材に応じるかは不明」という、なんとも言えない答え。


私たちは、急いで氏名や自宅住所の情報を送って正式な取材申請をしたものの、それきり広報担当者からの返信はありません。


「本当に入れるのか?」「取材はできるのか?」 明確な答えがないまま、私たちは取材当日を迎えました。


完全アウェイのウィンザー城

支局から車でおよそ40分。ウィンザー城には、すでに着飾った人たちが集まっています。


私たちがパスポートで本人確認を済ませてウィンザー城の門をくぐると、既にBBCなどのメディア10社ほどが集まっていました。


他のメディアは全員、デイビッド・ベッカムさん狙い


今回の授与式で集まったメディアは私たちを除いて、全メディアがナイトの称号を授与されるデイビット・ベッカムさん狙い。日本メディアで唯一参加していた私たちだけがカズオ・イシグロさん狙いで完全にアウェイです。


この時点で、広報担当者からは 「カズオさんにお話してみますが、インタビューに答えて下さるかはわかりません。その時の気分や時間がないといった事情があるかもしれませんから」 と、期待薄な一言。それでも、成功を信じて建物の出口でスタンバイします。


「あわよくばベッカムさん夫婦も…」希望を打ち砕く広報担当者の“配慮”

事前に入手したスケジュールによると、式典の終了後、イシグロさんが先にメディアの前に現れ、その20分後にベッカムさんが出てくる予定でした。 「イシグロさんへのインタビューに成功し、その後あわよくばベッカムさんにもインタビューもできないか」と考えていましたが、 そんな甘い希望は、広報担当者の配慮で打ち砕かれました。


「静かな場所でインタビュー出来た方がいいでしょう」


私たちはベッカムさんを待つメインの取材陣がいる場所と、出口を挟んで「別の場所」に分けられてしまったのです。


「欲張ってはいけない、イシグロさんの取材に集中すべし」 頭ではわかっていますが、相手はあのベッカム様です。このチャンスを逃せば、次いつ取材できるかわかりません。なんとか両方を取材できないのか…葛藤が続きました。


イシグロさんの穏やかな笑顔と紳士な対応

緊張しながら待ち構える中、予定より少し遅れてイシグロさんが登場しました。


「まずはイシグロさんへのインタビューを成功させよう」


穏やかな笑顔で、メダルを片手にスチールカメラマンたちの記念撮影に応じているイシグロさんに英語で話しかけました。


「日本のテレビ局のTBSです。この後少しインタビューをお願いできますか?」


すると、イシグロさんは笑顔でこう応じてくれたのです。


「いいですよ。でも私はご存じだと思いますが、日本語があまりうまくないのです。なので、英語でお願いしたいのです」


「英語でもちろん構いません。私の英語もうまくないのでご容赦ください」


こうして式典直後のイシグロさんに単独でインタビューすることができました。優しく穏やかで、思ったよりも気さくだったのが印象的でした。


(※インタビューの詳細は第1回の記事をご覧ください)


「できません」鉄壁の広報とベッカム夫婦の「神対応」

イシグロさんへの単独インタビューが無事に終わり、次はベッカムさんです。


私たちをサポートしてくれる広報担当者に、ベッカムさんを待つ取材陣に合流できないかと聞きますが、「できません」の一点張り。そこで「移動しないで、出口を出てくるところだけでも撮影させて欲しい」とお願いしたり、同行したカメラマンが「学生時代、ベッカムヘアだったんです。日本では大流行していたんですよ」などと食い下がりましたが、広報担当者は苦笑するばかり。やはり「撮影NG」でした。


こうなれば、肉眼と脳裏に焼き付けるしかありません。


ベッカムさんと妻のヴィクトリアさんは私たちの反対側で地元メディアの取材を受けているようですが、建物に阻まれその様子は全く見えません。待つこと20分。ついに2人が城から出るために私たちの前に姿を現しました。


こちらに向かって歩いてきたベッカムさん夫婦。ともに年齢を重ねた大人の魅力が神々しく、凄まじいオーラをまとっています。


およそ2メートルほどの至近距離にも関わらず、ただ見つめることしかできない私たちが、日本メディアだと気づいたのか。ベッカムさんが私たちを見つけると手を挙げて「ハーイ」と声をかけてくれたのです。


いい人だ…!


興奮してしまった私は、「叙勲おめでとうございます」といった気の利いた一言も言えず、ただ「ハーイ」と返すことしかできませんでした。 隣にベッタリついた広報担当者のマンツーマンディフェンスがなければ「少しだけ撮影してもいいですか」と直接交渉していたところでしたが、それも叶わず。


それでも、私の中でベッカムさんの好感度は爆上がりしました。


カズオ・イシグロさんの知性と誠実さ、そしてデイビッド・ベッカム夫婦のスター性と優しさ。 英国を代表する二人の「紳士」の姿に触れた、忘れられない一日となりました。


(TBSテレビ ロンドン支局 岡村佐枝子)


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