
10月3日、ドイツは統一から35年となる記念日を迎えました。ところが、東西で広がる格差が今、新たな分断を生んでいます。
ドイツ統一35年 残る東西の「格差」
3日、東西統一から35年を迎えたドイツ。記念式典でメルツ首相は、ロシアなどを念頭に国民に結束を呼びかけました。
ドイツ メルツ首相
「独裁国家の新たな同盟が我々に対抗して形成され、『自由民主主義』という在り方を攻撃している」
1989年11月、東西冷戦の象徴だったベルリンの壁が崩壊。
西ドイツ コール首相(1990年10月当時)
「喜びと感謝と希望の日である」
翌90年10月3日、ドイツは統一を果たしました。
市民
「統一は素晴らしいと思う」
「彼女は東ドイツ、自分は西ベルリン。統一はすばらしい」
それから35年。9月に発表された世論調査では、「東西ドイツの人々は一つの国民になっている?」との問いに、「はい」が▼旧東ドイツは23%にとどまり、▼旧西ドイツは37%となった。(ドイツ調査機関フォルザより)
また、2023年の調査では、旧東ドイツの住民の43%が「自分たちを2級市民だと感じている」との結果が出たのです。(インフラテスト・ディマップより)
実際、ドイツ統計局によると、平均年収も旧東側住民は、西側より2割以上低い状況です。
そのドイツで今、急速に支持を伸ばしているのが極右政党「AfD」です。
AfD(ドイツのための選択肢)ワイデル共同代表
「私たちは党のため、国のため、子どもたちのため、強く安全で豊かなドイツの未来のために選挙運動を展開します」
「格差」への不満を巧みに吸い上げたAfDが躍進 不満のはけ口は移民や難民へ
AfDは、2月の総選挙で前回から得票率を倍増させ、第2党に躍進。特に旧東ドイツ地域のほぼ全域で、得票率が首位に立ったのです。
旧東ドイツ地域のAfD支持者
「AfDのおかげで絶対に安全になる。それにもっと年金も良くなる。労働者の税金も下がる」
人々の「格差」への不満を巧みに吸い上げたAfD。その不満の矛先とされたのが、移民や難民です。SNSでも…
AfDのインスタグラム
「移民は経済を活性化させる?間違いだ!」
移民のために多くの税金が使われ、ドイツ市民の負担が増えている、などと訴えています。
AfDが支持を伸ばした背景について、専門家は…
高千穂大学(国際政治) 五野井郁夫 教授
「東ドイツ出身の方々にとっては統一をして、民主主義が入ってきた。それとともに入ってきたのは資本主義。バラ色の人生が待っていると思ったけど、グローバル化の“カモ”になってしまった。“2級市民”になっているんじゃないかという感覚に非常にさいなまれている。そこで、不満を持っている旧東ドイツの方々に目をつけたのがAfDという極右政党。右派ポピュリズムとして、移民のいないドイツに戻れば万事解決すると」
格差がもたらす不満のはけ口を、移民や難民に向けるポピュリズム。それはいまや、ドイツだけではありません。
格差による不満が「外国人」に… イギリスやアメリカでも
5月、イギリスでは右派政党「リフォームUK」が地方選挙などで躍進。彼らも、暮らしが良くならない人々の不満の矛先を移民に向けました。
リフォームUK ファラージ党首(9月30日)
「我々は、不法移民をわが国から退去させたいのだ。我々は福祉制度をイギリス市民のみに限定することを望んでいる」
イギリス市民
「移民が私たちを貧しくしている。住宅も医療もひっ迫している。移民を受け入れれば受け入れるほど、コストがかかる」
そして、格差が広がるアメリカでもまた、不満のはけ口は移民に向けられています。
トランプ大統領(6月)
「アメリカの都市が外国の敵に侵略され、占領されることは許さない」
そして日本でも、「外国人政策」が先の参院選や自民党総裁選でも、大きな論点となりました。
外国人など、特定の集団に向けられる人々の不満。背景の一つにあるのは、日本でも広がる格差です。
実際、2024年の国税庁の発表によると、日本でも給与所得が300万円以下の層が3割を超えています。世論調査では、「既存の政党や政治家は自分を気にかけていない」という問いに、68%が「そう思う」と回答しています。(イプソス「ポピュリズムレポート2025」より)
高千穂大学 五野井郁夫 教授
「欧米などの先進諸国においては、あるいは日本もそうですが、分厚い中間層が崩壊していき、富める者と貧しき者との二極化がかなり進んだ。本来は政治の側が適宜、財の再分配などを行うことによって不満を解消すればいいわけだが、人々に対する手当というものを打ち切っていく政策をこの30年ぐらいとっていた。政府は自分たちの方を向いてくれていないのではと非常に孤立感を感じる人がすごく多く、そうするとポピュリズム政党と一般的に呼ばれる政党は、世の中が急に変わるかのような幻想を抱かせる」
今、格差を背景に、ポピュリズムが世界に広がっています。
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