
今年は日韓国交正常化60周年。日本と韓国の文化交流を深めるイベント「日韓交流おまつり」が、先週末、東京都内で開催された。
【写真を見る】「国、言語は違えど人間みんな一緒」ギンギラギンにさりげなく…“懐メロ”を通して日韓交流、トロット界の新星・住田愛子(18)が歌に込めた思い
夕方から、メインステージで日韓のアーティストによるパフォーマンスが行われた。出演者のひとり、住田愛子さんは、山口県岩国市出身の18歳。広島のご当地アイドルとして活動をスタートさせ、日韓合同オーディション「トロットガールズジャパン」で脚光を浴びた。
そして、韓国の音楽番組「韓日歌王戦」で「ギンギラギンにさりげなく」を歌唱し、その動画は617万回再生される大反響となった。そのほか韓国のトロット歌手との共演や小室哲哉氏がプロデュースするグループでの活動などで注目を集めている。
住田さん起用の意図は?キャスティング関係者に話を聞く
日韓交流おまつりで住田さんをキャスティングするに至った経緯について、イベントを運営する駐日韓国文化院の関係者に話を聞くと、「日韓の懸け橋になるような活躍をしている人」「お祭り向けの盛り上がる曲を歌える人」ということで、住田さんの名前が挙がったという。住田さんは韓国での日本歌謡ブームの火付け役のひとりで、韓国で住田さんのことを知らない人はいないくらいだと話していた。
記者は観客席の一角で住田さんの歌唱を聞かせてもらった。ほかのアーティスト目当てで来たお客さんもペンライトを振って応援し、会場からは「上手だね」という声も聞こえてきた。
住田さんの歌に込める想い「懐メロ通して懸け橋に」
ステージを終えたばかりの住田さんにインタビューを行った。
Q.なぜアイドルのオーディションではなくトロット歌手を目指したのですか?
住田愛子さん
私は絢香さんが大好きで、絢香さんのように人の心に届くような歌を歌える歌い手になりたいと思ってオーディションに応募しました。「そこまで歩いて行くよ」という歌に何度も励まされてきました。私も絢香さんのように、誰かの心にぽっと灯る明かりのような存在になれたらいいな、なんて思っています。
Q.住田さんの年代の女の子はアイドルが好きそうなイメージでした
住田愛子さん
アイドルを見るのも好きです。=LOVEさんが好きで、いつも画面上で拝んでます!
Q.2007年生まれの住田さんにとって昭和歌謡は生まれる前の曲ですが、惹かれたきっかけは何ですか?
住田愛子さん
小さい頃から母が昭和歌謡の楽曲を車の中で流していたので、なじみがありました。小学生の頃のカラオケの十八番は渡辺真知子さんの「かもめが翔んだ日」でした。
Q.住田さんにとって日本の昭和歌謡の魅力は?
住田愛子さん
私はその時代をリアルタイムで生きてはいないので、逆にすごく新しく聞こえるんです。昭和歌謡って歌詞の表現の仕方とかがすごく奥ゆかしくて、例えば“まわりまわって伝える”みたいな、遠回しな表現があったり、かと思えばすごく直接的な表現もあったりして、そういうところがすごく面白いです。
Q.住田さんは韓国の歌番組「韓日歌王戦」で「ギンギラギンにさりげなく」をカバーしたときの話を教えてください!
住田愛子さん
収録では、まずカメラの台数に圧倒されて、「これ本当に放送されるのかな?」って何か夢のような気持ちだったんです。番組には日本チームとして参加させていただいたので、「ちょっとアウェイな空気感だったりするのかな…?」っていう不安があったんですけれど、現地の方からコメントもいただいて、すごく優しく迎え入れてくださったので、のびのびと歌うことができました。放送後に反響をいただいてから、「本当に放送されたんだ、こんなにたくさんの方に見ていただけたんだ!」っていう実感が急に湧いてくると同時に、まだ何が起こったか自分で追いつけてないみたいな状況で、感情が忙しかったです。
Q.住田さんの歌う動画には、韓国語でも応援コメントがたくさん来ていますね。韓国語はもとから勉強していたのですか?
住田愛子さん
最初は韓国語が全くわからなくて。でも、韓国で活動するようになって、私ももっと私自身の気持ちを伝えたいっていう感情が芽生えてきて、それから勉強するようになりました。
Q.昭和歌謡の魅力は、国境を越えてどのように共感を呼んでいると思いますか?
住田愛子さん
私が日本語で韓国の方に歌って聞いてもらうのもそうですし、私が韓国の方の歌唱を聞いたときもそうなんですけど、言語や歌詞がわからなくても、何か心にくるものがあって、感情といいますか、切なさだったり込めた感情がすごく伝わってくるんです。それがやっぱり音楽の力なのかなって思って。国、言語は違えど人間みんな一緒だと思ってるので、私の込めた思いが少しでも伝わればいいなっていう気持ちでいつも歌ってます。
Q.住田さんはどのような歌手になりたいですか?
住田愛子さん
「日韓の架け橋」というのはおこがましいかもしれないんですけれども、日本でも韓国でも愛される歌手になれたら嬉しいなと思います。これからも1つ1つ心を込めて歌っていけたら。
「アイドルと同じくらい人気?」日韓つなぐ“懐メロ”
韓国のポップカルチャーに詳しい一橋大学大学院の権容奭(クォン・ヨンソク)准教授に、日韓をつなぐ“懐メロ”の役割について話を聞きました。
Q.そもそもトロットとは何ですか?
一橋大学大学院 権容奭准教授
植民地時代、近代的なポピュラーミュージックのなかった韓国に日本から演歌が入ってきて、トロットという韓国歌謡の1つのジャンルができました。元々は日本の演歌と同じような位置づけだったのが、2000年代に入ってから進化したんです。“Kトロット”と言われるアップテンポの曲やダンスを混ぜたもの、70~80年代の懐メロをトロット歌手がカバーしてすごくヒットしたりして、“韓国歌謡をトロット歌手が歌う”というジャンルが広がりました。
Q.韓国でトロットが人気になったのはなぜですか?
権容奭准教授
最近のK-POPはアイドルやアップテンポなダンスミュージック中心になってきてしまっている。かつてはバラードもメジャーなジャンルだったんですけど、最近ではもうあまり人気がない。メロディがあって歌詞があってそれを人が伝えて…みたいな歌謡曲が好きな人たちからすると、物足りないというか、何か居場所がないような。そこでトロット歌手たちがそういう曲を歌うことによって、トロットが人気になりました。イム・ヨンウンさんとかはビジュアルもすごくかっこよくて、韓国ではBTS級に人気です。
Q.韓国では、歴代政権による反日政策で日本の音楽や漫画などの大衆文化は厳しく規制され、レコードやCDの輸入は禁止されていました。そのような中、日本の80年代の楽曲である「ギンギラギンにさりげなく」が今バズったのはなぜ?
権容奭准教授
韓国の今の40~60代は日本の80年代の曲をアンダーグラウンドで知っている人が結構いたんです。当時、日本の曲をおおっぴらに聞くことはできなかったけども、若者が遊ぶ場、たとえばローラースケート場とかでは、韓国歌謡じゃなくてJ-POPがトレンドだということで。「ギンギラギンにさりげなく」がなぜ人気かっていうと、そのときそこで流れていた最高のディスコソングだったからなんです。上の世代からするとこれまで禁止されていたものが解禁になって「いい時代になったな」っていう喜びがあるし、若い世代からすると、今のK-POP中心の音楽に今ひとつ感動できない人たちにとっては逆に80年代の曲の方が人間的だみたいなところはあると思います。
Q.K-POPアイドルは、いまや韓国の“一大産業”とも言えます。CDやグッズの売上はもちろん、観光やファッションまで経済効果は拡大中です。こうした巨大市場と比べたとき、トロットはどのような独自のソフトパワーを持っているのでしょうか?
権容奭准教授
NewJeansのハニさんが日本で「青い珊瑚礁」を歌ったときに興味深かったのが、日本で今までK-POPや韓国文化にあまり興味のなかった人たちが反応したことです。自分の青春を取り戻したかのようなウキウキを感じた人が多かったと思うんです。日本と韓国の文化交流で今まで不毛地帯だった人たちが、トロットを通して出会うきっかけになりうると思います。アイドル市場だと、日本と韓国は正直ライバル関係みたいになってしまう。それがシティポップ(70~80年代に日本で流行した都会的なポップス)なら、競合ではなく共同で作業できるしコラボできる。そういうジャンルであるという点からも意味があるかなと思います。
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