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ロシアは笑う…トランプ氏の圧力とスエズ危機という“お手本”【報道1930】

海外
2025-03-04 21:55

先月末のアメリカとウクライナの首脳会議は、テレビカメラの前で口論という前代未聞の形で決裂した。これを受けてイギリス・フランスを中心としたヨーロッパはすぐさまより一層のウクライナ支援を表明している。
専門家も驚いたり、あきれたり…予想外の展開の中、ロシアだけは笑いが止まらないようだ。メドベージェフ前大統領は「トランプ大統領は正しい」と言い切った。


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「どの武器の供給がどの鉱物資源によって提供されるのか…」

番組では“世紀のもの別れ”会談の直後、ゼレンスキー大統領の側近にインタビューした。彼はこの会談で本当は決まるはずだった『鉱物資源協定』の内容の一端を明らかにしてくれた。そこではウクライナの鉱物資源の種類と量がアメリカのどの武器の数と納入時期に見合うのかがわかる“計算式”が取り決められることにいなっていたという。


ポドリャク大統領府長官顧問
「もう少し冷静になるべきだと思います。もう3年も戦争が続き感情的になっているだけだからです。(協議される鉱物資源協定では)アメリカが供給する武器の数や種類、時期などは、どの鉱物に投資したのかの結果として計算式を記述するはずだった。私たちは武器をどのようにどのくらいの数量、いつ受け取るか、その保証はどのように提供されるのか納得する必要がある。そしてこうした武器の供給がどの鉱物資源から提供されるのかについてもが明確であるべきだ。これはウクライナとアメリカにとって有益な商業的補償契約だから…」


しかし鉱物資源協定、そもそもアメリカとウクライナでは思惑が違ったというのは国際政治学者の東野教授だ。


筑波大学 東野篤子 教授
「(協定の目的は)ウクライナからするとロシアが再侵攻してこない(ためのアメリカによる保証が欲しかった)こと…。アメリカからするとこれまで武器をタダであげていたけれどこれからはグラム単位で資源を計算してそれに見合った武器を提供するという…。武器の提供では安全の保証にならないというのがウクライナ…。アメリカはそれをすり替えてこれからどうやって武器をあげるかの話に…。でもそれだけズレがあっても合意した方がよかった…。枠組み合意だから、これから詳細は話し合えば…」


その枠組みさえ合意できなかったアメリカとウクライナ。ヨーロッパでは有志連合を作りウクライナと共に停戦計画を練り、アメリカに提案するというが、トランプ大統領は3日ウクライナへの武器供給を一時止める大統領令に署名した。


「プーチン大統領は、アメリカ経済の最高管理者」

ウクライナと一層の支援を強調するヨーロッパ各国との溝を深めるアメリカ。これはロシアにとって笑いが止まらない展開に違いない。
プーチン政権に外交のアドバイスを行うこともあるというロシアの外交アナリストは、イギリス・フランスが中心となってウクライナ支援に力を注ぐ現状を見て過去の例を挙げて語った。


ロシア外交アナリスト ドミトリー・トレーニン氏
「1956年のスエズ危機を例に挙げたい。エジプトによるスエズ運河の国有化を巡りイギリスとフランスがイスラエルと共にエジプトに武力衝突を引き起こした。(中略)ソ連は核兵器で英仏両国を脅した。アメリカは(英仏を)支持せず、その結果として英仏はスエズ運河一帯から軍を撤退せざるを得なかった。そしてこれは英仏の外交的野心に大きな打撃を与え、実際に両国とも大国ではなくなった…」


トレーニン氏はイギリスとフランスの目論見はアメリカ、ソ連の支持を得られなかったことで失敗しに終わったことを例に挙げ、今回もアメリカ抜きのイギリス・フランスの計画は国の威信は失墜させるだろうと話した。


ロシア外交アナリスト ドミトリー・トレーニン氏
「プーチン大統領は今ロシアはアメリカとの対話を非常に真剣に受け止めていて、それを妨害する試みには対抗すると表明した。ロシアが望むのは制裁を解除するか少なくともそのプロセスを開始することだ。利益に基づいてアメリカとの関係を正常化することだ。(中略)経済分野での米ロ協力関係を再構築するチャンスがある。特にレアアースを含めて課題になっている。プーチン大統領は外交の最高責任者、軍の最高司令官だけでなく、アメリカ経済の最高管理者として行動している。こうしたことはアメリカにとって重要なことなのだ」


筑波大学 東野篤子 教授
「トレーニンさんにインタビューしたのは慧眼だと思う。つまり、これがこれからのロシアのナラティブ(作り話)なんだと。スエズ危機の話をしていたが、これはイギリスとフランスに対抗してアメリカとソ連が一緒になって別の秩序を作ろうとした。この時はイギリスやフランスが植民地主義根性で他の国の権益を犯そうとした…。それに対しアメリカとソ連が立ち向かった。でも今は他の国の主権を犯しているのはロシア。なので自分を新しい秩序になぞられるのは片腹痛いですが…」


「これロシアからすると理想形」

アメリカのウィトコフ中東担当特使は先月CNNのインタビューに侵略してすぐの2022年にロシアが提案していた『イスタンブール協定』案を持ち出し、この枠組みをロシアとウクライナの和平合意を成立させる指針として活用していくと語っている。

『イスタンブール協定』とは…
(1)ロシアが実効支配するウクライナ東部の完全割譲
(2)ウクライナ軍を5万人に縮小(今年1月時点、88万人)
(3)西側諸国に軍事支援を求めない
(4)NATO加盟を断念


戦後アメリカの外交・防衛を専門とする慶應の森教授は言う。


慶應義塾大学 森聡 教授
「ウィトコフが言っているイスタンブール協定を基礎にというのはロシア側が元々言っていることでそれに乗っかった形になってますよね。(2)(3)はまさに安全の保証の話で、こういう形になったら、それはウクライナの要求ははねるということになる。それにサウジで行った1回目の高官協議の時には、大きく言うと3つの柱があって1つは両国の大使館の復活、もう1つはハイレベルの高官協議の復活、そして3つ目は経済関係強化に向けて検討・模索するという経済制裁解除に向けた話をしている…トランプがロシア寄りだということ」


因みにウクライナ側の要求とは、ゼレンスキー氏が言う「安全の保証のインストラクチャー(基盤)が必要」に基づく『安全の保証5項目』であり…
(1)ミサイル防衛システムの増強
(2)国境沿いにミサイル基地設置
(3)ウクライナ軍再編成
(4)軍産業への投資
(5)欧州の平和維持部隊(アメリカの協力も不可欠)
『イスタンブール協定』とは真逆だ。


筑波大学 東野篤子 教授
「ウクライナは交渉相手ではない。今はロシアだけが交渉相手というアメリカにとって『イスタンブール協定案』はスタート地点なんだと…。ウクライナに丸裸になれという…。割譲だとか縮小だとか…。忘れてはならないのが4番目。NATOの加盟は諦めなさいと…。このまま弱い国でありなさいというのがこの協定案。これにアメリカが乗ってるというのが現実…


防衛研究所 兵頭慎治 研究幹事
「ウィトコフさんがこれを言うのは驚き。かなり抱き込まれている。これロシアからすると理想形なんです。(中略)前任のケロッグさんはこういうこと言わなかった。ウィトコフさんはプーチン大統領と長時間会談してるので、おそらく抱き込まれてしまったんだと…」


3月中にもトランプ・プーチン会談が実現という見方もあるようだが、心配は募るばかりだ。


(BS-TBS『報道1930』3月3日放送より)


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情報提供元:TBS NEWS DIG Powered by JNN

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