激しい口論となり決裂に終わったトランプ大統領とゼレンスキー大統領の会談。異例のカメラの前での大統領同士の口論となりました。50分間の会談を振り返ると、いくつもの火種が…。
【画像で見る】ゼレンスキー大統領を出迎えるトランプ大統領の表情
決裂の米ウ首脳会談、口論前の40分間を検証
記者(英・ロンドン 2日)
「今、ゼレンスキー大統領を乗せた車が会議の会場となるランカスターハウスへと向かっていきます。沿道からは拍手と歓声が上がっています」
ゼレンスキー大統領は、ヨーロッパ各国の首脳らがウクライナの安全保障などを話し合う会議に黒いシャツ姿で出席。温かく迎えられました。
イギリス スターマー首相
「私たち、このテーブルを囲むすべての人々は、最後までウクライナの皆さんと共にあります」
その後、イギリスのチャールズ国王と約1時間会談。国王との面会はフォーマルな服装が求められますが…
イギリスメディア
「ゼレンスキー大統領の黒ずくめの衣装は、国王のスーツとネクタイとは明らかに対照的だった。チャールズ国王はゼレンスキー大統領の服装をそれほど気にしていないようだ」
ゼレンスキー大統領は、イギリスを発つ際…
ウクライナ ゼレンスキー大統領
「何が起きたのか話したくない、理解はしているが…」
「話したくない」と述べたそのワケは…
2月28日、ゼレンスキー大統領をホワイトハウスに招き入れたトランプ大統領。
トランプ大統領
「今日はドレスアップしてるね」
ゼレンスキー大統領
「ええ、これを着ないと。お元気ですか、大統領」
トランプ大統領
「(報道陣に向かって)彼は今日ドレスアップしている」
こう揶揄したトランプ大統領。
というのもトランプ大統領側は、「ホワイトハウスの訪問の際はミリタリースタイルは避けた方がいい」と何度も伝えていたとアメリカメディアは報じています。
それでも服装を変えることはありませんでしたが、首脳会談は和やかな雰囲気で始まりました。
トランプ大統領
「ウクライナのゼレンスキー大統領をお招きできて光栄だ。掘って掘って掘ってレアアースを手に入れることを楽しみにしている」
ゼレンスキー大統領
「合意文書がウクライナの安全を保証する第一歩となることを願っている」
アメリカがウクライナの鉱物資源の権益を得ることで、ゼレンスキー大統領はアメリカからロシアの脅威に対する「安全の保証」を得たい考えでした。
しかし…
記者
「安全の保証はするのか?」
トランプ大統領
「“安全の保証”については語りたくない。取引を成立させたいだけ」
親トランプ記者が挑発「なぜスーツを着ない?」
また、トランプ大統領のお気に入りのリポーターが、こんな質問を…
グレン氏
「なぜスーツを着ないんですか?“アメリカ最高”の執務室にいるのに、なぜスーツを拒否するんですか?持ってないんですか?」
ゼレンスキー大統領
「スーツは戦争が終わったら着るつもりです。あなたみたいなスーツか…もっと”良いもの”かもしれないね」
グレン氏は1月、トランプ氏に質問した際、べた褒めされた人物です。
トランプ大統領(1月)
「良い質問だな。こんな質問をどんどんしてもらいたいよ」
服装については、トランプ大統領も…
トランプ大統領
「その服装好きだよ」
ゼレンスキー大統領
「そんな質問よりも、できればもっと真剣な質問に答えたいな。安全の保証や停戦についてとかね。停戦については話しているだけではうまくいかない。私がウクライナ大統領になるより前、プーチンは25回も停戦を破った」
いらだちをみせるゼレンスキー大統領。トランプ大統領との間に隔たりがあることが浮き彫りになっていきます。
記者
「ロシアとウクライナの中間の立場を取りたいのか?それともウクライナ側?」
トランプ大統領
「私は中立だ。両方の味方だ。問題を解決したい」
会談が始まって約40分。バンス副大統領の発言で一気にヒートアップします。
バンス副大統領
「4年間、アメリカにはプーチン大統領に対して強硬な姿勢を見せる大統領がいました。そして、プーチン大統領はウクライナに侵攻し、国土を破壊しました。平和への道、繁栄への道は外交に取り組むことです」
ウクライナに侵攻したロシアと「外交交渉すべき」ともとれる発言。
ゼレンスキー大統領
「聞いてもいいですか?」
バンス副大統領
「どうぞ」
ゼレンスキー大統領
「プーチン大統領は我々の国民を殺し、捕虜交換もしなかった。(バンス副大統領は)どんな外交の話をしているんですか?どういう意味ですか?」
バンス副大統領
「あなたの国が”破壊されるのを止める”ための外交についてですよ。お言葉ですが、執務室で、しかもメディアの前で訴えるのは失礼です」
さらにトランプ大統領も加わり、激しい口論に。
トランプ大統領
「今とても不利な立場にいるんだぞ?“手札”を何ももっていないじゃないか」
ゼレンスキー大統領
「カードゲームの話じゃないんですよ」
トランプ大統領
「いいや、カードゲームだと思ってるね」
ゼレンスキー大統領
「戦時下の大統領なんですから」
トランプ大統領
「お前は何百万人の命を賭け、第三次世界大戦まで賭けにしている。お前の態度はアメリカに対して無礼だぞ」
決裂に終わった首脳会談。昼食会や共同記者会見はすべて中止となりました。
会談を受け、ロシア外務省のザハロワ報道官は、SNSでゼレンスキー氏をこう、揶揄しました。
ロシア外務省 ザハロワ報道官
「トランプ大統領とバンス副大統領が自制し、この卑劣な男(ゼレンスキー氏)を殴らなかったのは奇跡だ」
さらに、ロシアのペスコフ大統領報道官が会談後初めてコメントし、「ゼレンスキー氏は外交能力の完全な欠如を示した」などと批判しました。
欧州首脳「停戦計画」策定へ
一方、そのゼレンスキー大統領はヨーロッパの首脳らに歓迎され、会議に出席。イギリスやフランスが中心となって「停戦計画」を策定することなどで合意しました。
スターマー首相は停戦計画について「アメリカの協力を得ており、今後も協議する」との考えを示しましたが、ゼレンスキー氏は…
ゼレンスキー大統領
「我々はもちろんアメリカの支援を頼りにしている。アメリカの支援停止はプーチンを利することにしかならない」
また、今回アメリカ側と決裂した、鉱物資源をめぐる協定に「署名する用意がある」とも話しました。
ただ、アメリカのルビオ国務長官は…
アメリカ ルビオ国務長官
「我々は戦争を終わらせようとしている。双方が交渉のテーブルに着かなければ、それは不可能だ。まずはロシアから。トランプ大統領が言っているのは、そのことだ」
“会談のテレビショー化”狙いは?
小川彩佳キャスター:
異例の決裂となった会談ですが、私たちが首脳同士の口論を目にするという意味でも異例の展開になりました。伊沢さんはどうご覧になりましたか。
株式会社QuizKnock CEO 伊沢拓司さん:
世界が見ているからちゃんとしなくては、リーダー然としなくては、という今までのアメリカの意識みたいなものは全く感じなかったですよね。
米国民の支持なのか、鉱物利権なのか、それとも世界の新しい秩序をつくることなのか、どこまでがスコープに入っていたのかはまだ読み取れない部分はありますけども、少なくとも世界情勢の大きな岐路であったこと、この100年でつくりあげてきた秩序に逆行するような方向での動きが始まっているのではないかという危機感は感じざるを得ない、決定的な決裂を見た気もします。
小川キャスター:
首脳同士にとどまらず、副大統領のバンス氏が参戦したことで拗れたという感じもしましたけれども。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
私もこの大統領執務室の頭取りは何回か取材しましたけれども、副大統領がこんなに発言するというのは見たことがないですね。今回はゼレンスキー氏のペースになりかけたので、バンス氏がバイデン政権を批判してトランプ氏に加勢しようとしたが、裏目に出てしまったという結果ですよね。
小川キャスター:
ワシントン支局の涌井記者にも聞きます。トランプ氏は会談の最後に「素晴らしいテレビショー」と話していましたが、こうした首脳会談にカメラが入るようになり、これだけオープンになったのはトランプ政権になってからのことですか?
ワシントン支局 涌井文晶記者:
そうです。首脳会談、通常は冒頭撮影は非常に短いものなんですが、トランプ政権ではそうなっていません。先週はイギリスやフランスとの首脳会談も行われたのですが、それぞれ撮影できる時間が30分ほどありまして、主にトランプ大統領が記者からの質問に答えるという場になっていました。
そうした様子はテレビでも長く報道されますし、ホワイトハウスの公式SNSなどに次々と動画がアップされます。首脳会談ですら、支持者らへのアピールの場としての機能を重視しているという政権の姿勢が伺える状況になっています。
藤森祥平キャスター:
石破総理との日米首脳会談も、20分近くカメラの前でやっていましたよね。
今回の決裂で今後のウクライナへの支援がどうなるのか見ていきます。
ウクライナへの支援(2022年~24年)
アメリカ:1141.5億ユーロ(17.8兆円)
EU:489.5億ユーロ(7.7兆円)
日本:105.3億ユーロ(1.6兆円)
アメリカとしては、これだけ他に比べて突出してウクライナに支援をしてきたことが分かります。アメリカ高官の話としてワシントンポストが伝えている内容は「ウクライナへの軍事支援の打ち切りを検討している」ということです。
それから、最側近であるマスク氏は「NATOや国連から脱退する時が来た」という投稿に対して賛同しています。
アメリカのこういう動きですけど、一方のヨーロッパ諸国は停戦に向けて結束する動きを見せようとしています。アメリカは足並みそろえる気はあるのでしょうか?
ウクライナ支局 涌井記者:
アメリカが簡単に足並みそろえるかといったら難しいかもしれないというのが現状です。日本語で欧米という言葉にもあるように、アメリカとヨーロッパは一体だと考えられてきたわけですが、それが崩れてきたのではないかというのが現状です。
ヨーロッパ各国、ウクライナでの戦争終結後の安全保障を重視していますが、アメリカはそんな議論は後回しにして「まずは一日も早く停戦を実現すべきだ」と、「そのためにはウクライナが領土を一部割譲することもやむを得ない」という考え方です。
これまでヨーロッパは安全保障に謂わばアメリカにタダ乗りしてきた不満も持っているという仲なので、トランプ政権としてはあくまでアメリカファースト、何がアメリカの利益になるかということを第一に考えながら、ヨーロッパとの付き合い方を考えていくということになると思います。
アメリカの価値観に変化 日本は?
藤森キャスター:
アメリカファーストを突き進む結果、確実に国際社会の枠組みが変わりそうな気がします。
TBSスペシャルコメンテーター 星さん:
先ほど伊沢さんからも国際政治の節目となるかもしれないとありましたけれど、従来のアメリカというのは利益よりも正義、民主主義、法の支配を重視してきました。
今回のトランプ政権を見ると明らかにこれが逆転して、正義とか民主主義よりも利益を重視しています。ですから、正義とか民主主義を尊重するのであれば、同志国として一緒に戦うわけですからそこまで感謝を求めないですが、利益を尊重するとなると「俺たちがいろいろ供与してやったんだから感謝しろ」と「その分鉱物資源も渡せ」ということになるので、そういう転換点にいるということをおさえておいたほうがいいと思います。
株式会社QuizKnock CEO 伊沢さん:
第二次大戦までというのは、大国同士が小国のパイを分け合って自国の利益を優先するという流れだったのが、そこからの反省でこういう国際秩序をつくってきて、リードしてきたのがアメリカですけど、そこよりも自国の利益、何なら科学的なファクトとか倫理観、もっというと今回の会談でバイデン氏とかオバマ氏の名前がたくさん出てきましたよね。そういったアピールにまで使ってしまう。それが世界に見えても一向にかまわないという、なりふり構わなさというのが恐ろしさを、特に日本の立場から感じるものはありますね。
藤森キャスター:
日本の立場からしてどう向き合えばいいのでしょうか?
TBSスペシャルコメンテーター 星さん:
これは対岸の火事ではありません。非常に日本にとって深刻なんです。先ほど申し上げた民主主義とか人権よりも利益だとなってくると、例えば台湾は民主主義や人権を尊重して中国と向き合っていますよね。それに対してアメリカが台湾の民主主義よりも中国とのディールだとなってくれば、ウクライナと同じようなことが起きかねない。
日本はそのときに「我々は台湾の民主主義とともにあるんだ」ということを言い切れるのか、非常に難しい問題が突き付けられているということを考える必要があると思います。
小川キャスター:
そのディールの時に備えて、日本としてアメリカとの向き合いをどのように議論していったらいいのか、そうした歴史的な転換点をむかえているということにもなります。
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<プロフィール>
伊沢拓司 さん
株式会社QuizKnock CEO
東京大学経済学部卒
クイズプレーヤーとして活躍中
星浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
政治記者歴30年 福島県出身
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