異例の口論となり決裂に終わったアメリカとウクライナの首脳会談。
ゼレンスキー大統領は、対話を行う用意があるとしていますがトランプ政権からは非難の声が上がっていて戦闘終結への道のりはますます不透明となっています。
前代未聞の首脳会談 なぜ激しい口論に?
南波雅俊キャスター:
トランプ大統領とゼレンスキー大統領のそれぞれの主張について見ていきたいと思います。
トランプ大統領からすると、鉱物資源に関する協定を締結させることで利益を得て、ウクライナに対して財政や軍事の多額の支援金を取り戻したいという狙いがありました。
実際に各国のウクライナへの支援額ですが、ヨーロッパなどと比べてもアメリカはダントツです。軍事財政の支援で約17.8兆円をこれまで支援してきました。
一方でゼレンスキー大統領は、協定を締結するならば再びロシアに侵攻されない安全を保証したい。その形が無理でも何らかの形で安全保障をしっかりと確立したいという考えがあります。
そんな中でトランプ大統領は、ウクライナ国内でアメリカと鉱物資源の開発をともに行えばロシアの侵攻はないと考えています。
それぞれの主張がある中で、トランプ大統領側は「感謝が足りない」ことにイライラしたのではないでしょうか。
互いのズレが口論に発展?
南波キャスター:
首脳会談の中で、異例ともいえる口論もありました。それぞれの主張です。
ゼレンスキー大統領はアメリカに対して、「停戦を話すばかりではダメだ」「プーチン氏は25回も停戦交渉を破った」と主張しています。
一方でトランプ大統領は、「プーチン氏は私には約束を破らなかった」「私が感じるのは(安全保障に)真剣に取り組んでいるということだ」と主張しています。
それぞれが反対を向いているような主張をしています。
ホラン千秋キャスター:
バイデン前大統領からトランプ大統領に代わり、かなり思想が違う2人の大統領をまたぐようにして、この戦争が起きてしまっている状況です。
ゼレンスキー大統領も口論の中で、厳しい立場に置かれているように見えはしました。一方で、アメリカの言い分もどうなのか。多くの人が様々なことを感じたと思います。
TBS報道局前外信部長 秌場聖治さん:
ゼレンスキー大統領は侵略を受けた側で、その国を背負ってきているということを大前提として覚えておきたいと思います。
この会見を受け、「途中までは和やかだったが最後の10分で一変した」という報道がありますが、僕はそう思いません。それに至るまでにも、表情やボディーランゲージから、2人の立場の違いがわかれているのがよくわかります。
何が違うかというと、トランプ大統領は「ディールが先であり、安全保障は後」という主張です、「安全保障なんて簡単です」というような言い方をしていました。一方ゼレンスキー大統領は、「ディールは安全保障がないと成立しない」、「プーチン氏は信用できない」というのが大前提です。
トランプ大統領は、「プーチン氏は僕をリスペクトしてるから大丈夫だ。95%のディールができたら侵略が起きない」という互いのズレが最後に爆発したという感じがします。
米ウ首脳会談決裂でヨーロッパの尻に火がつくか
井上貴博キャスター:
やり取りを数十分間にわたりすべてカメラに公開するのは、いわゆる“トランプ流”だと思いますが、この映像を見た際、トランプ大統領がドラえもんに出てくるジャイアンにしか見えなかったです。
ウクライナは、アメリカの支援なしには立ちゆかない。その足元を見て「レアアースをよこせ」とある意味、弱いものに対して迫る。これは目に余ると思いました。
厄介なのは、ヨーロッパが一枚岩にもなっていないことです。プーチン氏とゼレンスキー大統領の間にも入れなさそうで、安全保障も見えてこない。そうすると、“ジャイアン”頼りでやっていくしかないのか、これによりヨーロッパの尻に火がつくのか。
秌場聖治さん:
ヨーロッパの尻にいくら火がついても、“ジャイアン”なしにはやっていけないということは、ヨーロッパもゼレンスキー大統領もわかっている。だからこそ、ゼレンスキー大統領は会談終了後も「公の場でやるべきじゃなかった」という発言もしています。
ヨーロッパ側も急いで集まり、「いや、大変だったね」と。「僕らでも案を作って、アメリカを説得しよう」という方向に持っていき、アメリカなしでやろうとは全然思っていません。それは不可能なんです。
宋美玄さん:
ゼレンスキー大統領から見たら、「海を隔ててるからアメリカには脅威がわからない」と。そこでトランプ大統領が「そんなことはない」という感じでこうなってしまったのかなと思います。
両方の立場や思惑もわかりますし、カメラの前でああいったことを言ったのは得策ではなかったですが、SNSなどを見ると、世界で「ゼレンスキー大統領やっちまったな」「なんてことするんだよ」という雰囲気にもなっていない気がします。
そこでゼレンスキー大統領の失敗をすごく言うより、例えばヨーロッパがもう少し固まるのか、災い転じて福となす感じでトランプ大統領ともう一度良い関係になっていけるように、雰囲気を作っていくのがいいのかなと思います。
井上貴博キャスター:
トランプ大統領を見ていると、ウクライナにこういった行動で不利で理不尽な“条件”を突きつけるということは、周りや日本にもそういう行動に出るかもしれない、というのは思っておかなければいけないのかなと感じました。
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<プロフィール>
秌場聖治さん
TBS報道局 前外信部長
ウクライナ侵攻を現地取材
宋美玄さん
産婦人科医 2児の母
女性の健康などのテーマを発信
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