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急転直下「年収の壁」178万円成立の陰で…自維はギクシャク、立憲は公明に急接近 与野党の現在地を徹底解説【edge23】

国内
2025-12-20 06:00

高市政権初の臨時国会は様々な意味で激動の国会となった。閉会直後に「年収の壁」178万円への引き上げで国民民主党と自民党の距離が急接近する一方、新しく誕生した自民党と日本維新の会による連立政権では、自民と維新の「与党慣れ」の差が露呈し、「ギクシャクした新婚生活」状態に。さらに公明党と立憲民主党の急接近など、与野党の勢力図が大きく変動している。


【写真を見る】来年の通常国会のテーマ


臨時国会が閉会、直後に「年収の壁」で満額回答

12月17日、高市政権初の臨時国会が閉会した。その直後の18日、自民党と国民民主党の党首会談により、長らく焦点となっていた「年収の壁」を178万円に引き上げることで合意に至った。


野党キャップのTBSテレビ政治部・新田晃一記者は「今回の合意は国民民主党の丸呑みのような形となっており、玉木代表自身も『ここまで行かないだろうと思っていたところまで到達している』と言っている」と説明。


この合意の背景には、来年の通常国会での来年度予算案と税制改正法案の成立に向けた自民党の戦略がある。参議院で過半数に達していない与党にとって、国民民主党の協力は不可欠となる。


自民党から満額回答を引き出した国民民主党の今後について新田キャップは、「玉木さんの会見では連立入りについて、『信頼関係の醸成がうまくいっている』ことを繰り返すだけで否定はしていなかった」と話し、国民民主党の今後の動向が注目されると指摘する。


“慣れ不足”が露呈した維新、議員定数削減法案での混乱

自民党と日本維新の会は今年、連立政権を発足させたが、その関係性は高市総理と吉村代表の党首レベルでは良好なものの、党全体としては様々な課題が浮上している。


TBS政治部の与党キャップである川瀬善路記者は「自民党は結党70年の老舗、維新は自分たちでも『ベンチャー』と例えていて家柄が違う。政治を前に進める上で、かみ合わない場面が少なくなかった」と指摘した。


特に顕著だったのが、維新が重視していた「議員定数削減法案」をめぐる国会での動きだ。12月16日の衆院・政治改革特別委員会では、企業・団体献金の審議で維新・浦野議員が委員長から指名されていない中で、突如「動議」を提出するという異例の事態が発生。しかし、この動きに自民党は同調せず、委員会は一時中断するなど混乱した。


川瀬キャップによると「本来であれば、事前に与党内で根回しして対応するものだが、維新はそうではなかった。参考人への感謝の弁の直後、参考人もまだいるのに、委員長から当てられていないのに、マイクが通っていないのに発言するという状況で、まさに『与党慣れ』不足が露呈した場面だった」と説明した。


この一連の出来事について、新田キャップは「立憲を取材していると、あきれ返っている人、げらげら笑う人もいた。立憲は維新が法案採決の動議を仕掛けてくるシミュレーションを何度も重ね、対策を練ってきたのに、実際は維新の不手際に終わったので、『いったいなんなんだ』という声が上がっていた」と現場の反応を伝えた。


この混乱の背景について川瀬キャップは「内密に動議を出す予定だったのに、吉村代表が事前に会見で『今日修正動議出したんじゃないですかね?』と公言してしまったことも一因」と指摘。「与党は政策を実現できるパワーを持っているのに、維新は議員定数削減にこだわりすぎた」と分析した。


結局、この動議は取り下げられ、議員定数削減法案は今国会で審議入りせず、継続審議となった。代わりに党首会談で「来年の通常国会で、国勢調査の結果を踏まえ法案の成立を目指すことで合意」という落としどころを見つけたものの、自民党内からは「このゴタゴタが来年も続くと思うとゾッとする」という声も出ているという。


「離婚直後」の公明党に立憲民主党が急接近

一方、野党となった公明党は、与党時代とは明らかに異なる姿勢を見せている。新田キャップは「斉藤鉄夫代表が、野党の党首の中でイチバン強く自民党を批判している」と指摘した。


公明党の両院議員総会での斉藤代表の発言では「衆議院の定数削減法案につきましては、最も重大な課題であった政治と金の問題についての決着を棚上げして、参議院選挙の公約にも掲げていない項目を突如出してまいりました。その今回進まなかった責任を野党にあるかのような言説は本当に許せない」と強く批判している。


そんな公明党に急接近しているのが立憲民主党だ。新田キャップは「立憲としては、スタンドプレーの多い国民民主党や維新よりも相手としてやりやすい。さらに、立憲と公明はほぼ政策的には一緒」と説明。「立憲が公明にすごく気を遣っているのがよくわかる。繰り返し複数の幹部が会見でラブコールを送り、国会運営でも連絡を密に取るなど、公明に配慮するケースが散見される」と明かした。


実際、公明党は補正予算案に賛成はしたものの、補正予算の組み替え動議を立憲と共同提出するなど接近の動きが象徴的だ。


こうした動きを受けて、政治の勢力図も変化しつつある。新田キャップは「保守寄りの自民・維新、中道の立憲・公明で、保守VS中道で政策が明確化した。立憲の幹部が会見で繰り返し『中道』という言葉を最近連呼しているのもこのため」と分析している。


ただし、公明党が完全に立憲側に寄るかどうかは不透明だ。新田キャップは「公明党も、立憲と一緒になる、とまでは考えていない。ある幹部は『今の自民党とそのまま連立を組んでいたら我々が立っていられなくなっていた』と。『今の』という言葉がミソで、高市政権が終わったあと、与党に戻る可能性も踏まえて、自民党と完全に縁を切る気はない」と内情を指摘した。


来年の通常国会は安全保障が焦点に

臨時国会のボトルネックとなっていた「議員定数削減」は持ち越されることになったが、来年の通常国会ではさらに重要な法案が目白押しだ。川瀬キャップは主要なテーマとして以下の3点を挙げた。


1. 防衛装備移転三原則の5類型撤廃
2. インテリジェンス機能の強化、国家情報局の創設
3. 副首都構想


これらは自民と維新の合意文書に書かれており、通常国会中の実現を目指している。特に防衛装備移転三原則の5類型撤廃については、先週与党で初めて協議が行われ、小野寺安保調査会長は「維新と考えに大きな違いはない」と述べているという。


一方、立憲や公明にとっては、こうした安全保障分野の政策は「真逆」であり、通常国会は「対決らしい対決になるはず」と川瀬キャップは予測する。


新田記者も「保守的な政策が注目される国会となる見通しなので、立憲と公明党がより関係を深めるきっかけにもなる」と分析。「5類型の撤廃などは、『一緒にやれるかも』と立憲の幹部も言っている」と、今後の野党連携の可能性を示唆した。


来年の通常国会では安全保障をめぐる論戦が中心となり、政党間の保守と中道の対立軸がより鮮明になりそうだ。


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