自民と維新の政策協議が16日から始まりましたが、両党はいつから接近し始めたのか?その辺の事情を見ていきます。
自民・維新が急接近したワケ 舞台裏にはあの“実力者”が
井上貴博キャスター:
政治が大きく動く1週間でしたが、ここにきて、その中心は日本維新の会になってきました。
これまでは、野党候補一本化に向けて野党がどうまとまるのかというところが主眼でしたが、ここにきて自民党と日本維新の会が急接近し始めました。いつ頃から水面下で動きがあったのかというのが1つの焦点です。
立憲民主党の野田代表は、16日朝の民放の情報番組でこんな話をしていました。
立憲民主党 野田佳彦 代表
「(自民と維新)14日の夜から急接近しているという情報が入ってきていた」
これまでのスケジュールでどんなことが行われていたのか。
【14日のスケジュール】
午後1時半
「自民×国民 幹事長」
午後4時(都内ホテル)
「自民×維新 国対委員長」
午後4時半
「公明×国民 幹事長」
午後5時
「立憲×国民×維新 幹事長」
14日は各党幹事長レベルの会談が軒並み行われていました。これは公式発表で行われていたスケジュールですが、幹事長会談はいずれも国会内で行われていました。
一方で、午後4時に行われた自民と維新の国対委員長による会談は都内のホテルで行われました。これは公に発表されたスケジュール以外の部分という位置づけです。
そして、15日は党首会談が軒並み行われた日でもあります。
【15日のスケジュール】
午前10時(国会図書館)
「自民×維新 国対委員長」
午後2時
「自民×立憲 党首」
午後3時すぎ
「自民×国民 党首」
午後4時
「立憲×国民×維新 党首」
午後6時
「自民×維新 党首」
→急遽、吉村代表が参加
午後から各党の党首による会談が行われたのですが、午前10時に国会図書館で行われたのが自民と維新の国対委員長による会談です。国会ではなく国会図書館で行われました。
午後6時、急遽、自民と維新の党首会談に参加したのが吉村代表でした。
こういった時系列で、いつどのあたりで自民党と維新がまとまっていったのでしょうか。
15日に驚きをもって伝えられたのが、吉村代表の発言です。
「政策協議がまとまれば、(総理指名に)高市早苗さんと書くか?」という問いに対し、「はい。その考えで結構です」と踏み込んだ発言をしました。
ここまでの時系列を見ていく中で、総裁選のときから小泉陣営と維新はかなり話し合いをしていたということですが、どういった接点なのでしょうか。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
元々維新は小泉氏が総裁になることを想定していて、その場合は「連立に入ってもいいよ」というスタンスだった。高市氏が総裁になって目算が狂いましたが、14日の国対委員長会談のあたりで、また寄りを戻してきた。
維新の国対委員長の遠藤氏は、維新の中でもかなりの実力者です。
そこで自民から「維新と連立を目指そう」という動きがあって、15日にもう1度その話をして、最後は党首会談となっています。
おそらく「政治とカネの問題」や「消費税」について、「自民党はそれなりに折れますよ」というニュアンスの伝達があって、16日の政策協議に繋がっていると思います。
しかし、自民党から楽観的な見通しが伝えられていたので、維新側からすると「ちょっと話が違うんじゃないか」と。16日は事実上、「政治とカネの問題」の話と「消費税」についてはゼロ回答ですから、今まで水面下でやってきた話とは少しズレがあるのではないかというのが、今の双方の受けとめではないでしょうか。
維新の“楽観的スタンス”は誤算か? 協議で発覚した「そう簡単じゃない」自民の姿勢
井上キャスター:
確認ですが、14日の国対委員長会談の段階では、「自民党が企業・団体献金など折れるんじゃないか」ということが伝えられていた可能性がある?
星浩さん:
ある程度、「前向きなニュアンスを出しますよ」ということを言って、維新側がそれに対して非常に楽観的なスタンスになったことが吉村代表の15日夜の発言に繋がっていったんだと思いますが、実際、その蓋を開けてみると「そう簡単じゃありません」と。
「消費税」が出てきたということは、この前の総裁選挙でも消費税は全員が「下げない」ということでしたし、自民党からするとなかなか飲みにくい話なので、そこで両方が折り合える“玉虫色の合意”というのはなかなか作りにくいと思うんですよね。これは少しこじれる可能性も出てきましたね。
出水麻衣キャスター:
維新の藤田共同代表も会見で、「具体的にこの2点で折り合えなかった」と話していましたが、やはり「消費税」と「企業・団体献金の廃止」を表だって言ってしまうことで、より決着しづらくなって、譲り合えなくなってくるということはないですか?
星浩さん:
維新側もここで妥協すれば、「結局、自民党に対する数合わせで折れたんじゃないか」ということになって、組織の中ももたないですから、維新も仮に合意すれば、一部の選挙区調整で、維新側が候補者を下ろすということにまで行きますから、相当な合意を得ないと、曖昧なままではなかなか引き下がれないという事情はあると思いますね。
維新提示の“12の政策” 最大の難関は「企業・団体献金の廃止」か
井上キャスター:
その政策面を見ていきます。維新として自民党に求めていた“12の政策”です。
【維新提示“12の政策”】
(1)経済財政政策(ガソリン暫定税率廃止・食品消費税2年間ゼロなど)
(2)社会保障政策
(3)皇室・憲法改正・家族制度等
(4)外交安全保障政策
(5)インテリジェンス政策
(6)エネルギー政策(原発再稼働の推進など)
(7)食料安保・国土政策
(8)経済安保政策
(9)人口政策・外国人政策
(10)教育政策(高校教育無償化本格実施)
(11)統治機構改革(副首都構想など)
(12)政治改革(企業・団体献金の廃止など)
この中で、考え方がどうも合わないというのが「政治改革」の「企業・団体献金の廃止」や「社会保障政策」、「消費税」などです。
自民党との政策協議後、日本維新の会の藤田共同代表は、「食料品の消費税ゼロ」に関する協議については、もう少しすり合わせをして協議を継続するということでした。また、「企業・団体献金の廃止」についても、協議で折り合わず、17日もまた協議をするということでした。
自民党の小林鷹之政調会長は「『憲法』『外交安保』『エネルギー』などの基本政策の一致を確認した」と話しています。
野党3党が集まったときは基本政策が一致していませんでした。自民と維新は、基本政策は一緒ですが、「政治とカネの問題」では折り合いがつかなそう。
「この数合わせを両方がやっているんだったら、もういっそのこと解散総選挙をして、国民に信を問うてもらった方がいい」という声も上がってくる感じがします。
星浩さん:
今回の政局について、いま我々が見ているのは第一幕に過ぎません。
石破総理が辞めて、高市総裁が誕生して、その後、公明党が離脱して、また新しい連立を模索しているという段階までが、第一幕。新しい政権ができても、おそらく国会でも相当苦労しますから、どこかの段階で不信任案が出るか出ないか、そこで内閣が総辞職するか解散総選挙なので。
おそらく今、第一幕が少しずつ終わりそうになって、第二幕の解散総選挙に向けた国会が始まって、早ければ年内にも総選挙ということで、第二幕に繋がるというのが私の見立てです。
なので、そういう点で今選挙が近づいてくるということになれば、各党とも政策で妥協しにくいので、そういう局面にもなってくると思います。
井上キャスター:
参院選が7月20日に行われて、そこからずっと国会が停滞していますが、これが第一幕だと言われると、「まだ国会停滞が続くんだ」と思ってしまいます。
星浩さん:
高市氏が総裁にはなりましたが、自民党の90万人の党員の中でしか選ばれていませんので、「総理大臣はちゃんと早く民意を問え」ということは、いずれ出てくる話だと思いますね。
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<プロフィール>
星浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ
福島県出身
政治記者歴30年
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