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“外国人”と生きる保守王国・群馬で聞いた参政党「日本人ファースト」への思い 取材で見えた“共生の現在地”

国内
2025-08-17 18:29

最近、20歳前後の学生、数十人と話をする機会があった。「今、気になっているニュースは何ですか?」と尋ねると、口を揃えて「この間の参議院選挙です」という答えが返ってきた。


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若い世代がこんなに政治に関心を持つという社会の空気を、私はこれまで感じたことがない。「どの部分に関心を持ちますか?」と聞くと、「外国人を巡る議論」「排外主義」「参政党の躍進」だという。


分析で見えた・・・保守王国・群馬で起きた“異変”

この夏の参議院選挙。
選挙結果を分析していると、少し不思議な現象が起きている街があることに気付いた。


全国有数の保守王国・群馬。参議院・群馬選挙区は自民党が長く議席を獲得してきた。

今回も自民党の清水真人さんが当選したのだが、いつもと違ったのは参政党の青木ひとみさんが、約2万8000票差にまで迫ったことだ。


さらに、参政党の青木さんの得票数が、自民党の清水さんを上回った自治体が複数あった。

そのなかでも【伊勢崎市】【太田市】【前橋市】…この3つの自治体は、群馬県内で外国人の住民が多い自治体トップ3だ。いずれの街もここ最近、急速に外国人の数が増加している。


伊勢崎市には1万7000人ほどの外国人が暮らす。これは市民の約8%に当たる。この街に住む日本人は、外国人は、今何を思うのか。取材に向かった。


「『外国の人だ、悪いことしているな』と思われているかも・・・」

伊勢崎市内。
英語だけでなく、ベトナム語やポルトガル語、タイ語など、様々な言語の看板が目に入ってくる。


街をさらに進むと、イスラム教の礼拝堂「モスク」があった。


20年ほど前にできた「伊勢崎モスク」。
管理人によると、インドネシア人やパキスタン人が多く訪れ、金曜日の礼拝には、多い時で200人ほどが集まるという。礼拝に訪れる人が多い日は建物内に人が入りきれず、路上でお祈りする人もいるそうだ。


伊勢崎モスクに通うひとり、リズワン・ウル・ハックさんに出会った。28年前にパキスタンから来日し、今はカレー店を営んでいる。


日本に来てからは、漬物の製造や建設業など、様々な仕事に就いてきたリズワンさん。この国に馴染もうと、日本の文化や慣習に必死に対応してきたと話す。


サラームカレー リズワン・ウル・ハックさん
「8時半から仕事だったら8時20分までにと思って行かないとだめ。これは日本だから。仕事が5時に終わるなら、5時5分まで仕事ちゃんとやらないとだめ」
「(外国人の自分に対する)日本人のイメージが大事。イメージが崩れちゃうと仕事もできないし、イメージが悪い人は嫌われちゃうし…」


“日本人ファースト”という考え方をどう思うか?と尋ねてみた。すると…


サラームカレー リズワン・ウル・ハックさん
「selfish。自分のことだけ考えている。周りは関係ないということかな」
「日本人は仲良くなると友達みたいに助けてくれるし、問題が起きた時もすぐに電話をかけてくれる。でも、『外国の人かな、何やっているのかな、悪いことしているのかな』と思っている人もいるかもしれない」


日本のルールを守り、馴染もうとしてきたという自負のあるリズワンさん。


サラームカレー リズワン・ウル・ハックさん
「ちょっとイライラするけど、しょうがない」


複雑な感情を抱いてるようだった。


“肩身の狭い思い” 『日本人ファースト』への共感

それでは、伊勢崎を生活のベースとする日本人は、どう考えているのか。


30代女性(伊勢崎市民)
「やはり皆さん、あるんじゃないでしょうかね・・・外国人に対する思いというか。今まで日本に来てくださっていた外国人とは違うな、というのを感じてるのかな。なんか日本語が通じなくなった」


確かに、声をかけた外国人から「私あんまり日本語わからない」「日本語がちょっとわからない」と返される場面が多々あった。


10代男性2人組(伊勢崎市民)
「外国人が多い地域だからこそ、外国人に対しての不満は溜まっていって…で、外国人が多い地域の日本人は、一層“日本人ファースト”の参政党を選んで、また結束が高まってじゃないですけど」


隣町から伊勢崎市に通勤をしているという男性にも話を聞いた。


――伊勢崎では“日本人ファースト”は響きやすいんでしょうか?

30代男性(みどり市在住・仕事で伊勢崎市へ)
「私は、めちゃめちゃ正しいって感じますけどね。他の地域の人たちよりも“日本人ファースト”の気持ちを身近に感じているからこそ参政党が強いのかなと」


外国人が増えたことで、日本人が肩身の狭い思いをしているんだ、と話す。


30代男性(みどり市在住・仕事で伊勢崎市へ)
「お店に行っても、私が1人で外国人の方が大勢だと、どんちゃん騒ぎしていたり、こっちは別に悪いことしているわけじゃないけど、こっちが逆に肩すぼめながら『すみません』ってよけたりとか。外国人の方の比重が多くなってきちゃうと
“郷に入っては郷に従え”みたいなのがちょっとずつ崩れてきて外国人の人たちのメインの庭みたいな感じになってきちゃってる感覚があるんじゃないかと個人的には思います」


この男性は、“日本人ファースト”に共感していると話した。


外国人の同僚がいるという男性にも出会った。


男性2人(高崎市民と前橋市民)
「同じ会社にカタカナの名前が入っている人っていうのはもちろんいます。言葉悪いですけど、どちらかというと労働力という扱いっていうか。プライベートでは会わないです」


外国籍の人たちの間で独自のコミュニティができていて、プライベートな関わりはほとんどないそう。


男性2人(高崎市民と前橋市民)
「外国籍の人が住んでいるってだけで、日本人は正直、『共生している』っていう認識はないです。やっぱ“日本人ファースト”と言われるとああそうだな、っていうのはあるかもしれない」
「もしかしたらプライベートで会ったら良いところも見えたりっていうのがあるかもしれないですけど、文化の違いもあるんで、そういうのは難しいかも」


小学校クラスの3分の1外国人「みんな一緒」

逆に、外国人との“共生”をポジティブ捉えている人もいた。


県内の高校に通う女子高校生。ブラジル人やフィリピン人の同級生が多くいるという。


女子高校生(16・伊勢崎市民)
「外国人はフレンドリーな人が多いじゃないですか。けっこう楽しい」
「外国人だから、というのはない。みんな一緒みたいな。小学校から、外国人がクラスの3分の1くらいいたんで、多分環境で慣れている」


銭湯で外国人に接する機会が多いという60代の女性は、ある変化を感じていた。


60代女性(伊勢崎市民)
「よく風呂やサウナに行くんですけど、外国の方がすごく多くて。前はもう好き勝手やってたのが、段々気を遣って譲るようになったりとか、入り方もキレイになってきました。以前と違います」
「外国人も早く日本に溶け込みたい、日本人も外国人を受け入れようという姿勢がなんとなく出てきたかなって感じ。これだけ外国人が増えてきたから、そういった傾向に進んでいるような感じがします」


伊勢崎市で建設業を営む男性は、7~8年前から、外国人を従業員として受け入れるようになったという。

今は、必要不可欠な存在だと話す。


50代男性(伊勢崎市で建設業営む/太田市民)
「建設業に応募する日本人が少なくなってきた。来ても仕事が続かない。もう何十年も前から」
「外国人を受け入れないとやっていけないです、やっていけない」


家族のなかでも「外国人」と「日本人」?

ブラジル食品を扱う大型スーパーに入ると、ブラジルの特産品・コーヒーや、ブラジル料理でよく使われる豆などが店内に並んでいた。


スーパーTAKARA ルイーザさん
「牛肉。ステーキにしたり…。これはイチボ。外国人にすごく人気!」


店長のルイーザさんは、18歳の時、初めてブラジルから来日したという。日本とブラジルを行き来し、のべ30年、日本で暮らしている。


スーパーTAKARA ルイーザさん
「言葉が通じないということで『やっぱり外国人だからダメだ』とか言われて。自分も少しは喋れるんですけど・・・寂しいですけどね、やっぱり寂しい」


ルイーザさんの国籍はブラジル。
ルイーザさんの32歳と29歳になる2人の子どもの国籍は日本。つまり日本人だ。日本で育った2人が話せるのは日本語だけ。家族の会話は日本語だ。


日本人の子ども2人を持つ、ブラジル人のルイーザさんに最後に聞いた。


――“日本人ファースト”は正しいと思うか?

スーパーTAKARA ルイーザさん

「いや~、それは違うと思うんですね。外国の方も違って面白いし、日本の方も違って面白い。この2つが一緒になればすごく良い街になったり、良い日本になっていったりすると思う」


日本人から見ると、ルイーザさんの家族は、“外国人家族”なのか?“日本人家族”なのか?そして、“外国人家族/日本人家族”、と、国籍でカテゴライズする必要はあるのか。


少なくとも、この街に、“外国人/日本人”と、国籍だけで簡単には割り切れない思いを抱えている人もいることがわかった。ただ、まだ何か答えを見つけたわけではない。今後も“共に生きる街”の声を取材したい。


TBSテレビ報道局 宮嵜仁美


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