
性別や年齢にとらわれず自分らしいヘアスタイルを提供する美容室
性別や年齢にとらわれず自分らしいヘアスタイルを提供する美容室 「Ooze. HARAJUKU(ウーズ・ハラジュク)」を取材しました。
【写真で見る】お客さんの“なりたい自分”を叶えることが最優先
東京・原宿に去年9月オープンした「Ooze. HARAJUKU」の代表でスタイリストのKAHO(かほ)さんは、生まれもった性は女性で特定の性別を自認しないXジェンダーであることを 当時働いていた美容室やSNSでカミングアウトしたところ共感や応援の声が多く、独立してサロンを立ち上げることを決意しました。
「Ooze. HARAJUKU」はスタッフ全員がLGBTQの当事者ですが、LGBTQの方に限定することなく “かわいい” より “かっこいい” を好む女性など、あらゆる方に広く利用してもらいたいとしています。
アルファベットで「O・O・Z・E」と書く「ウーズ」は、英語で「にじみ出る」という語源から「はみ出しちゃおう!」というメッセージと、 日本語の「渦」=「想いを沸かす渦の中心」にかけて付けられた屋号です。
KAHOさんは幼少期、 “女の子”であることから美容室で希望のヘアスタイルを叶えてもらえなかったもどかしい経験を重ねてきました。
独立した今、美容室で大切にしていることをこのように話しました。
「Ooze. HARAJUKU」の代表でスタイリストのKAHOさん
「小さいとき、そんなに美容室が好きじゃなくて。というのも『短髪にしたい、刈り上げしたいです』と言うと『えっKAHOちゃんいいの?女の子なのに。でもここまでにしといたら?』言われることが多すぎて『じゃあそれでいいです』と妥協で終わっちゃうみたいな経験があるので、性別で決め付けない。女性のお客さんが来たら女性誌を出すとか、ヘアカタログも男女で分けて出すとか、ヘアスタイルの提案も男女で分けたりとか、そういうことは一切せずにやっています」
お客さんの“なりたい自分”を叶えることが最優先
KAHOさんはお客さんのなりたいヘアスタイルを叶えることを最優先にしていて、刈り上げのオーダーがあれば、躊躇なくバリカンで刈り上げていきます。
その潔さに、KAHOさんのお客さんは驚きながらも目を輝かせるそうです。
そんなKAHOさんは、中学生の頃、初めてセクシュアリティの壁にぶち当たりました。
小学生の頃から男の子に混ざって励んだサッカーで、中学校では性別を理由に男子サッカー部に入部させてもらえなかった悔しさをこう振り返りました。
「Ooze. HARAJUKU」の代表でスタイリストのKAHOさん
「中学生に上がるタイミングで当たり前のようにサッカー部に入ろうと思ったんですけど、“男子サッカー部”ということと、今までに女の子が男子サッカー部に入るっていうのが前例になくて、“性別を理由に入部拒否”という経験がありました。そこで人生初めて性別を理由に、夢とかやりたいことでも諦めざるを得ないみたいな気持ちになったのが、すごくつらかったというか悔しかったですね」
“自分らしい見た目” で無敵の心
その後、KAHOさんはサッカーを続けられることになったものの、対戦するチームの男子生徒からは「女子」というだけで舐められるなど悔しい思いもしたと話します。
その後、ヘアスタイルをボーイッシュにすることで自信を持てるようになり、“自分らしい見た目” を手に入れた心の変化を感じたそうです。
ご自身の悔しい経験を踏まえて“自分らしさ”を最大限表現してくれるKAHOさんの元には、北は北海道から南は沖縄まで全国からお客さんが集まります。
最近では、海外観光客や修学旅行の合間で訪れる中高生もいるそうです。
「Ooze. HARAJUKU」でKAHOさんの元を訪れた大学2年生の客
「ここの美容室は、男性とか女性とか性別にとらわれるんじゃなくて、人としてちゃんと向き合ってくれるというところが、他にはない美容室の魅力かなと思います。高校のときも服装も髪型も理想ではなかったんですが、いわゆる男性がするような短髪で、自分が好きな髪型、自信が持てる髪型にしてもらいました。親や周りの人から見た目の否定をされてたんですけど、別にこのままの自分でいいんだなって思いました」
「Ooze. HARAJUKU」でKAHOさんの元を訪れた大学4年生の客
「少し前まで同性のパートナーとお付き合いしていました。今までの恋愛とか、KAHOさんに話しています。周りの伝えている友人以外で自分のことを話す子はいないので、ひとつの場所として大事だなって思っています」
手術後の髪質の変化にも気づける・話せる強み
女性の骨格や髪の毛で、“男性らしい” “かっこいい” ヘアスタイルをつくるには単にメンズカットをするのではなく、男性・女性それぞれのからだの特徴を理解した上で、女性のからだに合わせた工夫をする必要があるそうです。
また、女性から男性のからだへ性別適合手術を受けたFTMの方に対しては手術後の髪質の変化に気づけることも「Ooze. HARAJUKU」の強みだとKAHOさんは話します。
「Ooze. HARAJUKU」の代表でスタイリストのKAHOさん
「男性の方で、もみ上げがすごく長いとか、襟足の生え際の始まりが下の方からあったりとか、女性の方だと何も考えずに刈り上げると、首の後ろに毛がなくなっちゃったりするので、まず刈り上げる前に生え際の位置とか確認したりとか、あとFTMの方とか治療されるとやっぱり髪質が変わるんですよね。とても乾燥して見えちゃったりとか毛が太くなってちょっとチリってしちゃうみたいな方とかもいらっしゃいますね。薄くなっちゃったりする人もどうしてもいますし、そういう話もできるっていうのがいいのかなと思います」
KAHOさんは、セクシュアリティの差と向き合うすべての人々の未来を広げていきたいという想いからパーソナルジム「TREACEND(トレセンド)」も新宿に開いていて、ヘアスタイルだけでなく“女性のからだで叶えるかっこいいからだづくり”のサポートもしています。
台湾で今年4月に行われたボディビルディングの大会では、「TREACEND」のトレーナー2名が「生まれた性でのカテゴリー」、「FTMのカテゴリー」それぞれのカテゴリーで銀メダルに輝きました。
「Ooze. HARAJUKU」のスタイリストは当日ヘアメイクなどでサポートし、チームでその喜びを分かち合いました。
「Ooze. HARAJUKU」のように、どの美容室でも女性らしさ男性らしさなど性別にとらわれない提案がされ、自分らしさを表現する選択肢の広がりに期待したいです。
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