新年度予算案の修正に向けた自民・公明の与党と日本維新の会の協議が、合意を目前に足踏みを続けています。折り合えない背景には、それぞれの“党内事情”があるようです。
「年収の壁」「高校無償化」予算成立協議の状況は?協議難航 今後の見通し
小林由未子キャスター:
私たちの生活に影響する「年収の壁」撤廃や「高校の無償化」、新年度予算案の協議が佳境を迎えています。
2月20日正午ごろ、自民・公明両党は日本維新の会と高校の無償化などについて話し合いを行いました。
そして20日午後、国民民主党と103万円の壁についての協議が予定されていましたが、突然延期となりました。理由は明らかにされていません。
これらの協議、合意に向けて今どういう状況なのかを見ていきます。まず高校の無償化に向けた動きです。
【維新×自公の高校無償化に向けた動き】(年間支給額)
〈公立高校〉
▼維新案 11万8800円
▼与党案(7日時点) 11万8800円
所得制限を設けずに支給する案で一致しています。
〈私立高校〉
▼維新案 63万円(大阪府私立高の標準授業料)
▼与党案 2025年4月~ 年収590万円以上に11万8800円を新たに支給
2026年4月~ 所得制限を撤廃 39万6000円を支給 ※590万円未満には現在も支給中
私立高校に関しては、維新案・与党案は合意に至っていません。
その中で、支給額を全国の私立高校の平均授業料である45万7000円の基準に引き上げる案が新たに与党から提案されています。
こちらもまだ合意には至っていませんが、維新の前原共同代表は、「条件が整えば賛成する」と明言しています。
そして、20日に協議が延期となった「年収の壁」の見直しについてです。
2024年12月11日、178万円を目指して与党と国民民主党は協議を始めました。
2024年12月13日、与党は123万円を提案しましたが、国民民主党側は「これでは話にならない」という姿勢を示しています。
そのような中で、自民党は「年収に応じて新たに壁を作ろう」という新たな案を提示しています。
自民党の新案について国民民主党の榛葉幹事長は「103万円の壁を取り外そうという話をしているのに、新しい壁を作ってどうするのか」と話をしていました。
与党としては、予算成立に向けて野党の協力は欠かせません。石破総理が「高校の無償化」と「年収の壁の見直し」を天秤にかけたとき、どちらに動くのか。
星浩さんによると「高校の無償化が今いいところまで来ているとした上で、二つの政策の予算の規模を比べたときに、維新寄りに動くのではないか」ということです。
維新?国民民主?揺れる天秤 協議難航今後の見通し
上村彩子キャスター:
この天秤を見てみますと、予算の規模で日本維新の会の方ということでいいですか。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
国民民主党が求めている178万円まで年収の壁の引き上げをすると、何兆円という規模の財源が必要です。これは是正案でこのくらいの規模なので、額はその点、維新の方が少ないです。
それとは別に、国民民主が103万円の壁を提起したらネット民にどんどん人気が広がって、引っ込みがつかずに妥協しにくくなってしまっています。
国民民主は、「このまま178万をずっと要求して自民党を批判していった方がいいのではないか」という声も中から出ている。そうすると、なかなか自民・公明党・維新の折り合いがつきにくくなってる。
むしろ維新の高校授業料無償化の方は、数字である程度、妥協点っていうのは見い出せるので「そちらの方がいいのではないか」というのが自民党の本音だと思います。
井上キャスター:
国民民主党としては「178万円の壁」をなかなか下ろせないと思います。選挙もその民意で受かったとなると妥協できない。しかし、与党が維新と手を組んで予算が通ってしまうと、国民民主だけ何も結果が得られないという焦りはあるのでしょうか?
星さん:
ありますが、むしろそこで中途半端な妥協をした結果、火がついたネット民から反発を受けるよりは、そのまま夏の参議院選に流れ込む方が得策という判断もあります。
井上キャスター:
そうなると、壁は特に修正せず次の選挙でもう一度それを問うことになりますか。
星さん:
壁は従来の103万円から123万円までは伸びたので、とりあえずそれでしのぐということになるんですね。
井上キャスター:
あとは少数与党になったからこそ、今までは与党の政策の話ばかりになってましたが、野党の政策の話も与党は聞かないと予算が通らないので、そういう話し合いができているという意味では一つメリットでしょうか。
歴史・時代小説家 今村翔吾さん:
この状況だからこそ、政治への関心度はかなり上がったと思います。2〜30年前だったら、個々で不満を持っていたとしても、いわゆる「連帯感」みたいなものがなかった。
ネットやSNSの普及によって「自分だけじゃない」と思える。本来の国民の意見が出てくるような選挙に戻っていくのかなと思います。次回の選挙ではもっと国民の意見が反映されそうな気はしますね。
井上キャスター:
今の政治はネットやSNSをどのくらい意識してるものですか。
星さん:
今回は、おそらく政治家が考えた以上にネット上で支持が広がりました。しかし逆効果というか、支持が広がりすぎて、国民民主の場合は引っ込みがつかなくなり、政治の妥協がしにくくなるという面も、今回の現象から見えてきましたね。
小林キャスター:
今後協議を進める上で、党の関係性にも影響が出てくるかもしれません。
星さんによると、自民党と日本維新の会は“合意間近”と見られますが「自民党は国民民主党に対して不信感を抱いている」ということです。
一方、公明党は2024年の衆院選で日本維新の会に苦戦したという経験があり、国民民主党と手を組むことにメリットを感じているということですが、星さんはこの辺りどう思いますか?
星さん:
今回、国民民主の方には「税収が増えたんだから、還元しろ」という意見があって、それは非常にネットからも評価されています。しかし逆に、税収が減ったときは「増税できるのか」という課題が、政治には突き付けられています。
税収が増えたものはどんどん減税して使っていいのか。逆に税収が減ったら増税するということを政治家が切り出せるかというとまず無理です。その点も踏まえてもう少し慎重に、深い議論をしてもらいたいです。
井上キャスター:
見方によっては、それが人気取りに見えてしまうと。
星さん:
授業料無償化もそうですが、減税やバラマキといった話がどんどん先行していますが、「財源はどうするんだ」という議論はあんまり出てませんよね。
井上キャスター:
結果すべてにおいて、いきつくのは財源なんですね。
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<プロフィール>
星 浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島県出身
政治記者歴30年
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