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2026-10-06 12:00
物価高が続き、特に食費の負担が家計に重くのしかかる昨今。家飲みの現場では単なる「安さ」だけではなく「価格に見合う価値」を求める意識が強まっている。そうした中、サントリーは主力ブランド『金麦』を、2026年10月の酒税改正に合わせ、新ジャンルの価格帯を維持したままビールに引き上げると発表。これまで長きにわたって”お家時間”を提供してきた金麦は、”家飲みの価値観の変化”にどう対応していくのか。担当者に話を聞いた。
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■「安さ」から「価格に見合う価値」へ、変わる”家飲み”への意識
今や日常の中にすっかり定着した感のある”家飲み”だが、時代の変遷の中で、その在り方は少しずつ変わってきている。それは2007年の発売以来、”家飲み”に寄り添う商品として親しまれているサントリー・金麦のCMの変遷にも表れている。
「金麦発売当初のCMは、外で仕事を頑張って家に帰ったら奥さん(檀れいさん)が出迎えてくれるというストーリーでした。今は黒木華さん演じる独身女性や、竹野内豊さん演じる旦那さん側にフォーカスしたCMもあるように、時代を重ねるごとに共働き家庭が増えたり、家族のあり方が多様化してきていることが感じられます」(マーケティング本部 ビール・RTD部 課長・斎藤圭世さん/以下同)
特に2020年頃からのコロナ禍では家飲み需要が広がったが、この時代と今を比較すると、人々の家飲み需要にある変化が見られるという。
「コロナ禍では物理的に家にいる時間が増えたため、自分でちょっとしたつまみを作ってみたりと”家時間を能動的に楽しむ”人が多かったと思います。今、家飲みに一番影響を与えているのは物価高で、多くの皆さんが『物価高でいろんなものを我慢しているから、お酒を飲む時間くらい楽しみたい』と言われています。たとえば金麦などお手頃な価格のお酒を選ぶけど、おつまみは少し良いものを買うといったバランス感覚が今の家飲みの根幹にあると思います」
今消費者調査をすると、2020年頃と比べて「お酒はより安い方がいい」という指数も上がっているが、一方で「価格に見合った価値を吟味したい」という指数も上がっているという。「やはり物価高からか、価格と価値のバランスをすごく意識されている方が多いと感じます。なので、お客様には”安ければ何でもいい”ではなく、価格以上の価値を届けて『この価格でこれが飲めるならいいよね』と思っていただけるような商品にしなければいけないと考えています」。
■“同じ轍は踏まない” 酒税改正を前に、金麦のビール化を決断
今年10月1日に酒税改正が行われ、ビール系飲料の酒税が1本化されることに。酒税改正は過去2回(2020年10月、2023年10月)行われているが、3回目となる今回の酒税改正を迎え、サントリーは金麦をビール化することを決断した。これには前回の”ある経験”が基になっているという。
2023年の酒税改正では新ジャンル(第三のビール)の酒税が上がったが、この時、新ジャンル飲用者の「酒離れ」「ビール離れ」がビール類市場全体の約4%に相当する規模で発生したというデータがある。つまり一番安い価格の商品が上がってしまうと、たとえ高い商品の価格が下がっても『飲まない』という選択をする層が一定数いたというわけだ。
「『ビールの価格が下がるから、ビールに力を入れればいい』という酒税改正の迎え方をしてしまうと、発泡酒や新ジャンルを飲まれていた方たちは離脱してしまい、結局ビール類の総市場が縮小してしまうというのが我々の見立てです。そうならないために、最低価格が上がってしまった発泡酒、新ジャンルのブランドに、価格が上がった以上の価値を付けて『この価格でこれが飲めるならいいよね』と思っていただけるような進化をしないといけない。そんな思いから、(新ジャンルの価格帯はそのままで)金麦をビール化し、「デイリービール」市場を創造していくと決断しました。まさに同じ轍は踏まないという思いです」
キリン、アサヒ、サッポロなど各メーカーも発泡酒のビール化を発表しているが、サントリーは、酒税改正1年前の2025年9月に金麦のビール化を発表している。かなり早めの発表だったが、メディアや流通、小売店などからは「酒税改正を機に、市場を作りに行こうとするサントリーの本気度を感じた」との声が聞かれた。またユーザーからも「どんな味わいになるか、期待している」など概ねポジティブな声が届いているという。
「これまでは、安く飲みたかったら発泡酒、ビールを飲みたかったらビールと”区分”で選ぶのが主流でした。でも今回酒税改正で価格がぐっと縮まり、他社の発泡酒のブランドもビール化されるので、これからは区分ではなく、価格と価値のバランスを考えてブランドを選ぶ時代になるだろうと思います」
■”らしさ”を守りながら美味しくすることに苦悩、開発段階では「麦芽比率100%も試した」
金麦は2007年に誕生して以来、「ていねい製法」「贅沢麦芽」など、”新ジャンルであってもそこまでこだわるか”というほど丁寧なものづくりを追求してきた。四季で味わいを整えているのも、金麦のこだわりの一つ。季節毎の気温や湿度、その時期に食べる旬の食材に合わせて味わいを整え、「どの季節に飲んでも美味しい」と言われるようにこだわってつくっている。
同商品をビール化するに当たって、技術的にどんな苦労があったのだろうか。
「実はビールにすること自体、それほど難しくないんです。麦芽比率を50%以上にして、ビール製法の定義を満たした使用原料に変更するだけなので。ただし”金麦らしく美味しくする”ことがすごく難しくて。なぜなら、麦芽比率を上げるのも金麦で使用している小麦スピリッツを抜くのも、澄んだ後味を軽減する方向に行ってしまうので、どちらかという厚みが出るし、雑味も残ってしまいます。この澄んだ後味を生かしながら美味しくするにはどうしたらいいのかと、醸造家と数十回に及ぶ試験醸造を通じて試作を重ねました」
実は「麦芽比率100%」も試したものの、「金麦らしい美味しさじゃない」「これは日常的に飲めない」との判断で不採用になったという。
「麦芽比率の調整もありますし、同じ麦芽比率でも醸造や仕込み、煮沸の時間、温度など仕込み条件を少し変えるだけでも味が変わってきます。醸造家の知見をフル活用しながら試行錯誤して、最終的に今の金麦ビールができあがりました」
ビールになった金麦を一部のユーザーを招いて先行体験調査を行い、実に96~100%の人たちから「美味しい」との回答を得たという。
「特にすっきりした後味を”金麦らしさ”と言ってくださる方が多いのですが、そのすっきりした後味がありながら『1口目がちゃんとビールになった満足感がある』といった評価をたくさんいただきました。我々としては、飲んでさえいただければ”金麦が進化した”ことを感じていただけると思っています」
■これからの”家飲み”にビールはどう向き合うか?
前述したように、金麦は独自のこだわりをもって丁寧につくられてきた商品だが、同時にCMなどのコミュニケーション戦略でも独自の路線を行ってきている。
「たとえばタレントさんがビールを飲んで『美味しい』と言うCMも多いですが、金麦はCMの中で『美味しい』とは言ってないんです。金麦を飲んでいる家時間がすごく楽しそうで、『こんな風に家でビール飲んだら幸せそうだな』と思っていただけるようなコミュニケーション戦略を取っています。金麦が担うべき役割は、”日常のお家時間を豊かにする”ということ。これは当初からブレていないですし、この先もずっと真ん中にあるものだと思っています」
しかも金麦は「特別な日の1杯ではなく、日々何気なく気軽に飲んでいただけるビール」を目指しているという。そんな金麦のあり方を表す言葉として、斎藤さんは「小確幸(しょうかっこう)」というワードを挙げてくれた。これは作家・村上春樹による造語で、「日常にある、ささやかだけど確実な幸せ」という意味がある。
「たとえば子どもと一緒にいる時、その可愛い仕草に癒された、など”当たり前にあるけど、すごく幸せ”と感じられることです。金麦はもちろん、日々お家でビールを飲む時間ってそういうことじゃないかと思うんです。すごく贅沢というわけでもなく、毎日当たり前にあるけど、ちょっと幸せを感じて、明日も頑張ろうと思えるーーそんな大袈裟じゃない幸せに、金麦は寄り添いたいと思っています」
同商品は価格帯も含めて「最も気軽に手に取りやすいビールを目指す」と斎藤さん。「日常で選ばれる価値を提供することで、ビール市場全体を盛り上げていきたいです。ささやかだけど確かな幸せにふさわしいブランドであるためにはどうしたらいいのかを常に考え、お客様に届けていきたいです」。
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今や日常の中にすっかり定着した感のある”家飲み”だが、時代の変遷の中で、その在り方は少しずつ変わってきている。それは2007年の発売以来、”家飲み”に寄り添う商品として親しまれているサントリー・金麦のCMの変遷にも表れている。
「金麦発売当初のCMは、外で仕事を頑張って家に帰ったら奥さん(檀れいさん)が出迎えてくれるというストーリーでした。今は黒木華さん演じる独身女性や、竹野内豊さん演じる旦那さん側にフォーカスしたCMもあるように、時代を重ねるごとに共働き家庭が増えたり、家族のあり方が多様化してきていることが感じられます」(マーケティング本部 ビール・RTD部 課長・斎藤圭世さん/以下同)
特に2020年頃からのコロナ禍では家飲み需要が広がったが、この時代と今を比較すると、人々の家飲み需要にある変化が見られるという。
「コロナ禍では物理的に家にいる時間が増えたため、自分でちょっとしたつまみを作ってみたりと”家時間を能動的に楽しむ”人が多かったと思います。今、家飲みに一番影響を与えているのは物価高で、多くの皆さんが『物価高でいろんなものを我慢しているから、お酒を飲む時間くらい楽しみたい』と言われています。たとえば金麦などお手頃な価格のお酒を選ぶけど、おつまみは少し良いものを買うといったバランス感覚が今の家飲みの根幹にあると思います」
今消費者調査をすると、2020年頃と比べて「お酒はより安い方がいい」という指数も上がっているが、一方で「価格に見合った価値を吟味したい」という指数も上がっているという。「やはり物価高からか、価格と価値のバランスをすごく意識されている方が多いと感じます。なので、お客様には”安ければ何でもいい”ではなく、価格以上の価値を届けて『この価格でこれが飲めるならいいよね』と思っていただけるような商品にしなければいけないと考えています」。
■“同じ轍は踏まない” 酒税改正を前に、金麦のビール化を決断
今年10月1日に酒税改正が行われ、ビール系飲料の酒税が1本化されることに。酒税改正は過去2回(2020年10月、2023年10月)行われているが、3回目となる今回の酒税改正を迎え、サントリーは金麦をビール化することを決断した。これには前回の”ある経験”が基になっているという。
2023年の酒税改正では新ジャンル(第三のビール)の酒税が上がったが、この時、新ジャンル飲用者の「酒離れ」「ビール離れ」がビール類市場全体の約4%に相当する規模で発生したというデータがある。つまり一番安い価格の商品が上がってしまうと、たとえ高い商品の価格が下がっても『飲まない』という選択をする層が一定数いたというわけだ。
「『ビールの価格が下がるから、ビールに力を入れればいい』という酒税改正の迎え方をしてしまうと、発泡酒や新ジャンルを飲まれていた方たちは離脱してしまい、結局ビール類の総市場が縮小してしまうというのが我々の見立てです。そうならないために、最低価格が上がってしまった発泡酒、新ジャンルのブランドに、価格が上がった以上の価値を付けて『この価格でこれが飲めるならいいよね』と思っていただけるような進化をしないといけない。そんな思いから、(新ジャンルの価格帯はそのままで)金麦をビール化し、「デイリービール」市場を創造していくと決断しました。まさに同じ轍は踏まないという思いです」
キリン、アサヒ、サッポロなど各メーカーも発泡酒のビール化を発表しているが、サントリーは、酒税改正1年前の2025年9月に金麦のビール化を発表している。かなり早めの発表だったが、メディアや流通、小売店などからは「酒税改正を機に、市場を作りに行こうとするサントリーの本気度を感じた」との声が聞かれた。またユーザーからも「どんな味わいになるか、期待している」など概ねポジティブな声が届いているという。
「これまでは、安く飲みたかったら発泡酒、ビールを飲みたかったらビールと”区分”で選ぶのが主流でした。でも今回酒税改正で価格がぐっと縮まり、他社の発泡酒のブランドもビール化されるので、これからは区分ではなく、価格と価値のバランスを考えてブランドを選ぶ時代になるだろうと思います」
■”らしさ”を守りながら美味しくすることに苦悩、開発段階では「麦芽比率100%も試した」
金麦は2007年に誕生して以来、「ていねい製法」「贅沢麦芽」など、”新ジャンルであってもそこまでこだわるか”というほど丁寧なものづくりを追求してきた。四季で味わいを整えているのも、金麦のこだわりの一つ。季節毎の気温や湿度、その時期に食べる旬の食材に合わせて味わいを整え、「どの季節に飲んでも美味しい」と言われるようにこだわってつくっている。
同商品をビール化するに当たって、技術的にどんな苦労があったのだろうか。
「実はビールにすること自体、それほど難しくないんです。麦芽比率を50%以上にして、ビール製法の定義を満たした使用原料に変更するだけなので。ただし”金麦らしく美味しくする”ことがすごく難しくて。なぜなら、麦芽比率を上げるのも金麦で使用している小麦スピリッツを抜くのも、澄んだ後味を軽減する方向に行ってしまうので、どちらかという厚みが出るし、雑味も残ってしまいます。この澄んだ後味を生かしながら美味しくするにはどうしたらいいのかと、醸造家と数十回に及ぶ試験醸造を通じて試作を重ねました」
実は「麦芽比率100%」も試したものの、「金麦らしい美味しさじゃない」「これは日常的に飲めない」との判断で不採用になったという。
「麦芽比率の調整もありますし、同じ麦芽比率でも醸造や仕込み、煮沸の時間、温度など仕込み条件を少し変えるだけでも味が変わってきます。醸造家の知見をフル活用しながら試行錯誤して、最終的に今の金麦ビールができあがりました」
ビールになった金麦を一部のユーザーを招いて先行体験調査を行い、実に96~100%の人たちから「美味しい」との回答を得たという。
「特にすっきりした後味を”金麦らしさ”と言ってくださる方が多いのですが、そのすっきりした後味がありながら『1口目がちゃんとビールになった満足感がある』といった評価をたくさんいただきました。我々としては、飲んでさえいただければ”金麦が進化した”ことを感じていただけると思っています」
■これからの”家飲み”にビールはどう向き合うか?
前述したように、金麦は独自のこだわりをもって丁寧につくられてきた商品だが、同時にCMなどのコミュニケーション戦略でも独自の路線を行ってきている。
「たとえばタレントさんがビールを飲んで『美味しい』と言うCMも多いですが、金麦はCMの中で『美味しい』とは言ってないんです。金麦を飲んでいる家時間がすごく楽しそうで、『こんな風に家でビール飲んだら幸せそうだな』と思っていただけるようなコミュニケーション戦略を取っています。金麦が担うべき役割は、”日常のお家時間を豊かにする”ということ。これは当初からブレていないですし、この先もずっと真ん中にあるものだと思っています」
しかも金麦は「特別な日の1杯ではなく、日々何気なく気軽に飲んでいただけるビール」を目指しているという。そんな金麦のあり方を表す言葉として、斎藤さんは「小確幸(しょうかっこう)」というワードを挙げてくれた。これは作家・村上春樹による造語で、「日常にある、ささやかだけど確実な幸せ」という意味がある。
「たとえば子どもと一緒にいる時、その可愛い仕草に癒された、など”当たり前にあるけど、すごく幸せ”と感じられることです。金麦はもちろん、日々お家でビールを飲む時間ってそういうことじゃないかと思うんです。すごく贅沢というわけでもなく、毎日当たり前にあるけど、ちょっと幸せを感じて、明日も頑張ろうと思えるーーそんな大袈裟じゃない幸せに、金麦は寄り添いたいと思っています」
同商品は価格帯も含めて「最も気軽に手に取りやすいビールを目指す」と斎藤さん。「日常で選ばれる価値を提供することで、ビール市場全体を盛り上げていきたいです。ささやかだけど確かな幸せにふさわしいブランドであるためにはどうしたらいいのかを常に考え、お客様に届けていきたいです」。
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