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「1本撮るごとに歯が1本抜ける」異例のヒット映画『国宝』の李相日監督が明かす撮影秘話

エンタメ
2025-07-01 07:00

6月6日に劇場公開され、口コミによって異例の右肩上がりで動員数を増やしている注目の映画『国宝』。吉田修一さんの同名小説を原作に、任侠の一門に生まれ、歌舞伎役者として芸の道に人生を捧げた主人公・喜久雄を吉沢亮さんが演じています。『悪人』『怒り』に続き、今作でも吉田修一作品の実写化を手がけた李相日監督に、映画の道に進んだきっかけや、今作の撮影秘話を聞きました。
(TBSラジオ「パンサー向井の#ふらっと」6月25日放送分より抜粋)


映画への道は「悶々とした大学生活」から始まった

李監督が映画の世界に魅了されたのは子どもの頃。1980年代、『E.T.』を観るために映画館の階段に座って鑑賞した経験が「原体験」と言います。


しかし、映画製作の道に進むことを決めたのはずっと後のことでした。新潟で育ち、大学は経済学部に進学。特別な目的もなく大学生活を過ごしながらも、就職を考える時期になって「やっぱり映画をやりたい」と思うようになったといいます。


それでも、「監督や脚本は、一握りの天才がやるものだと思っていた」と語る李監督。最初は経済学部出身であることを活かしてプロデューサーを目指したものの、映画学校にはプロデューサーになるための学科がなく、次に志望した脚本学科は志願者が多かったため落ちてしまいます。


結果的に演出科に入り、その卒業制作が思いがけず「ぴあフィルムフェスティバル」でグランプリを含む4つの賞を受賞。これが映画監督としての道を開くことになりました。


約3時間の超大作も「最初のバージョンは4時間半」

『国宝』は吉田修一さん原作の小説を映画化した作品。任侠の家に生まれながら歌舞伎の道に人生を捧げた男・喜久雄を主人公に、50年におよぶ壮大な物語が描かれています。


李監督は学生時代に観た『さらば、我が愛/覇王別姫』(1993年製作)をきっかけに、日本の歌舞伎に関心を持ち、長年温めてきたテーマでした。


2010年に公開された映画『悪人』を完成させたとき、「自分で納得できる映画ができた気がして、改めて日本の伝統芸能、特に歌舞伎にもう一度目を向けて映画化を考えるようになった」と振り返ります。


作品の上映時間は3時間近くと異例の長さですが、李監督はあえて映画館での公開にこだわりました。「ストーリーを紹介する意味なら配信もありえると思うんですけど、描くべきはこの喜久雄という国宝になる人間の生き様をどれだけ濃密に描けるか。それと歌舞伎を見ていただくのに、やっぱりスクリーンの音響と映像、大きな画面で没入していただいてこそ」と語ります。


最初の編集バージョンは4時間半もあったというこの作品。「前編後編にすると時代がどんどん飛んでいく。50年という長さを一気に駆け抜けるイメージがあった」というねらいから、1本の映画で完結させることにこだわったそうです。


主演・吉沢さんに「なんか言ってくるから反応して」

映画『国宝』の主人公・喜久雄役を演じる吉沢亮さんについて、李監督は「彼でしかやれないと思っていた」と断言します。共演する大垣俊介役の横浜流星さんについても「どんな難関にも乗り越えようとするストイックさ」を評価し、「喜久雄に対しての俊介として、同じように極めていただかないといけない」と考えたそうです。


役者たちは1年半にわたる稽古を重ね、歌舞伎の所作に取り組みました。「彼ら自身も絶対自分たちが歌舞伎役者さんのようにはなれないけど、どうやったら近づけるかという死ぬ気度みたいなものが伝わる」と李監督は語ります。


李監督ならではの演出が光るのは、映画のなかでも印象的な“屋上シーン”。夕方から夜になっていく30分程度の限られた時間のなかで撮り切る必要がありました。


こうしたなか、最後のテイクでは彰子役を演じる森七菜さんに監督がセリフを変えるよう耳打ちし、吉沢亮さんには「振り向いて彼女の顔見て、なんか言ってくるから反応して」と指示しただけだったといいます。このアプローチが映画の中でも特に印象的なシーンを生み出しました。


「1本撮るたびに歯が1本抜ける」

李監督にとって過酷な映画づくりを物語ったのが、「1本映画撮るたびに、歯が1個抜けるんです」という告白でした。「撮影中は歯をグッと噛み締めているので、撮影が終わって作品が出来上がり、数ヶ月経ったらインプラントを入れる羽目になる」と言い、現在4、5本ものインプラントが入っているそうです。


「歯医者さんに言われたのが、プロ野球選手とかゴルフの選手とかがスイングする時にグッと力むあれぐらいの負荷がかかって割れる。そういった物理的な犠牲を払っている」という言葉からは、映画づくりへの並々ならぬ思いが伝わってきます。


映画『国宝』は海外でも上映され、上海やカンヌでも反響を呼びました。「やっぱり皆さん歌舞伎という入り口が非常に間口を広げてくれていると思う」と李監督。「本当に歌舞伎の演出は食い入るように見られていますし、終わった後皆さん拍手していただける。やっぱり『美しい』という言葉が一番聞こえてきます」と海外の反応を語りました。


歌舞伎と映画が融合した、3時間の美の世界。「劇場での没入感を是非味わっていただきたい」と李監督は語っています。


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