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“メンズ売り場”はもういらない? Z世代、美容の新常識は「シェア」するコスメ

エンタメ
2025-06-28 08:00

コスメ売り場が“女性向け”商品だけで構成されていたのは、もはや過去の話だ。今では百貨店など多くの小売店でメンズコーナーが常設され、男性客が気軽に美容アイテムを手に取る姿が見られるようになった。


【写真をみる】主人公の二人が出会うシーンは「PLAZA」が撮影舞台に


とはいえ、実際にはメンズ売り場を設けただけでは売り上げに結びつかないという現実も。ジェンダーの垣根が薄まってきた時代背景も相まって、小売店の現場から今、聞こえてくるのは「シェアコスメ」という新ワードだ。パートナー同士などの間でコスメを「共有」することを指すその言葉が、広く使われ始めている。


Z世代を中心に、一般的になったメンズ美容。その先に見えてきた、あえてボーダーラインを引かない「シェア」や「ジェンダーレス」というキーワードから、メンズコスメの最前線をひもとく。


ドラマ担当ヘアメイクが実感 “メンズ美容”最前線

コロナ禍を経て「脱マスク」の影響もあり、ここ数年はさらに急成長を遂げているメンズコスメ市場。男性の美容意識の高まりの背景にあるとされるのは、K-POPなどの韓流ブームや、前時代的な「男らしさ」の定義の変化などとされる。


美容専門学生で“女装男子”でもある男性主人公・光(ひかる)が登場するドラマ『シンデレラ クロゼット』(TBS系、7月1日スタート)でヘアメイクを担当する亀谷千博さんも、「特にここ2〜3年、現場でメイクを担当するメンズの方も、目に見えて美容意識が高まってきています」と語る。


「例えば若い男性アナウンサーの方でも、ご自身でシートマスクをしたり、『もう少し保湿してください』とリクエストされたりすることも増えてきました」と明かす。アナウンサーに限らず、「ひげ脱毛をして見た目をアップデートしたり、美容医療でニキビ対策をしたり、ビタミン剤などのサプリを飲まれている方も多いですね」と続ける。


メイク中の会話の中で、「明らかに肌質が変わったり、肌のトーンが上がったりしていて、聞くと『やっぱり』と感じますね」とも。男性自ら「土台」を整えてくれることで、ファンデーションのノリが良くなるなど、思わぬ「時短」効果もあり、美容への関心の高まりを実感しているという。


表舞台に立つ人だけでなく、「最近はエキストラさんや、街を歩いている人の中でも、メイクをしている男性をよく見かけます」と、プロとして活躍する現場以外でも変化を感じている。


「シェア」が常識に? コスメは「分ける」から「共有する」時代へ

現在全国に約142店舗を展開するライフスタイルショップ「PLAZA(プラザ)」では、新発売の商品や人気の定番アイテム、オリジナル企画商品など、売り場には国内外ブランドのコスメがずらりと並ぶ。ただし、メンズに特化した売り場やコーナーはあえて設けていない。


メンズコスメ市場への本格参入は、さかのぼること2007年。同年4月に開業した新丸の内ビルディング内に、「メンズコスメ・雑貨専門店」を掲げる新業態店「QUOMIST(クオミスト)」をオープンさせた。


当時、日本国内ではメンズ美容・コスメを打ち出す業態は先鋭的だった。PLAZAを運営するスタイリングライフ・ホールディングス プラザスタイル カンパニー商品本部の清水大三郎本部長は、同業態について「支持はされたが、マスには広がらなかった。早すぎた」と9年目での撤退について分析する。


QUOMISTでは雑貨のほか、店頭の多くをメンズコスメが占め、店内には1,000円で眉毛を整えられる眉毛サロンも併設。先々のメンズコスメ市場の動向を見越したマーケティング戦略は、近年メンズ向けの眉毛サロンの出店が増えていることを見ても、的外れではなかったと言えるだろう。


その後、同社はファミリー層などが多い郊外のショッピングセンター内のPLAZAでも、男性客をターゲットにした専用の棚を試験的に導入。ところが反応は鈍く、「メンズに特化した売り場として『切り分け』をするのはだめだと改めて分かった」(清水本部長)と、あえてメンズ売り場を設けない路線へと本格的に舵を切った。


「他社にはない編集や商品力でコスメを分かりやすく打ち出す」というPLAZAの強みを武器に、男性客がどうすれば足を運んでくれるか考えた結果、男女関係なくコスメを「シェア」するというコンセプトに行き着いたという。


従来女性用だと捉えられていたコスメを男性客が買いやすくなるほか、カップルで同じものを使うことでコミュニケーションを創出する効果もあるシェアコスメ。分け合うことでコストや無駄のカットといったメリットもある。小売店にとっては、売り場を分けないため、回遊性や購買チャンスも広がる。


「過去の教訓は生かされている」と清水本部長も話すように、各小売店でも、ひと口に「メンズコスメ」と切り分けるのではなく、その先を行くジェンダーレスな売り場が、今後広がっていくかもしれない。


男女のボーダーなきコスメ商戦 メンズ客獲得の糸口とは

近年、名だたる男性アイドルらがスキンケアや香水などのイメージモデルに起用される事例が後を絶たない。ブランド側の狙いは、「推し活」を通じた女性ファン層の獲得であることはもちろん、男性タレントの起用は、メンズマーケットへの“橋渡し”も担っている。


前出のヘアメイク亀谷さんも語るように、男性がスキンケアやメイクを日常に取り入れるケースも増える中、新たな成長市場として欠かせないZ世代男性の取り込みを図る、各社の囲い込み戦略だ。男性がコスメを使うことに対して違和感を持たないよう、心理的ハードルを下げるきっかけづくりが求められている。


PLAZAは今年1月〜2月にかけて、阪急メンズ東京(有楽町)で男性客にターゲットを絞ったポップアップイベント「Glow-Up Gameboard by PLAZA」を開催。美容の始め方やコスメの使い方が分からない初心者男性にも分かりやすいように、体験型の企画を打ち出し、土日には、メンズヘアサロンの人気デザイナーによる「変身ヘアメイク」イベントも開いた。


イベントは「抽選になるなど非常に好評だった」(清水本部長)などと一定の手応えを得たほか、コスメやヘアケアなどの商品に加え、会場に揃えた帽子などの雑貨も好評だったという。輸入雑貨店としての認知度もあり、アパレルや雑貨にも強いPLAZAでは、常設売り場でも男性客を意識した品揃えを意識している。


4月に発売した晴雨兼用の折りたたみ傘は、他社製品の別注品として、「色やサイズを変えたり、カラビナを付けたりして工夫した」と、商品作りから取り組み、「日焼け対策として、男性でも日傘を持つ方が増えている。コスメでも、UV対策の商品は美容への入り口として強い」と、コスメとの親和性もある。


「こうした商品を、まずは売り場の中に『紛れ込ませる』こと。まずは身近なアイテムから打ち出していきたい」と、さまざまな施策で男性客とのタッチポイントを探る。


メンズメイク初級編は眉から? ヘアメイクおすすめ「ハイライト」も

メンズが取り入れやすいコスメと言えば、まずはスキンケア商品。化粧水や美容液などの複数のケアが一枚で完結するフェイスパックや、無色透明のネイルなどがその一例だ。次に、肌に乗せるとほんのりと色づき、トーンアップ効果のある日焼け止め下地などが「中級編」といったところ。


さらに「上級者」向けと言うと、ややハードルの高い「色付き」のカラーコスメが挙げられる。清水本部長が「本格的なメイクだと眉メイクから入る人が多い」、ヘアメイク亀谷さんも「今は眉に注目している男性が多い。描いている人も、アートメイクを施す方もいる」と両者口を揃えるように、眉ペンシルは「メイク」の入り口としておすすめという。


ドラマ『シンデレラ クロゼット』の撮影現場では、女性・男性キャスト問わずメイクを担当している亀谷さん。男性の俳優陣も含め、今回のメイクでポイントにしているのは「ハイライト」だという。「目の周りなどにちょこっと入れるだけで、一気に華やかさが上がる。内側から出るようなツヤ感も増すので、おすすめです」と話す。


特に男性向けのハイライトについては、「メンズのメイクで必ず入れるのは、鼻筋の部分。マットなハイライトを入れると、立体感が出ます」とコツも教えてくれた。


今回、本作で大きなテーマの一つとして描かれるのは、都会の生活を夢見て上京してきたものの、うまくなじめずにいる、ヒロイン・春香(はるか)の「自己肯定感」。青春ラブストーリーに加え、「自分を好きになる」という成長過程が描かれる中で、「コスメ」が果たす役割は大きい。


「化粧品が身近ではないという女性は、まだまだ山ほどいる。そのお手伝いがしたいという思いは、ドラマで描いていることとも同じ」(清水本部長)と明かすように、コスメは今、男女の壁を超え、前向きに自己表現したいと願う若者世代の背中を押している。


メンズコスメ市場の取材から見えたのは、「性別で分けること自体が古い」という価値観の浸透。特に“自分らしさ”を大切にするZ世代などの若者にとって、それは常識になりつつある。


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