「映画づくり」を通じて、クリエイターの発掘・育成や 地方創生に取り組む「ミラーライアーフィルムズ(MLF)」。2020年に始動した このプロジェクトには、日本を代表する俳優たちが、次々に参加しています。
【写真を見る】【独自】山田孝之・阿部進之介 インタビュー 映画づくりに参加すると、みんな「子供の頃」に戻ったような感じになる
プロデューサーでもある、俳優の山田孝之さん、阿部進之介さんが、長編映画の “ものさし” に感じた「違和感」。そして「映画づくり」の無限の可能性について… TBS芸能情報ステーションの単独インタビューに応じました。
Q:ミラーライアーフィルムズは、今回で「シーズン6」ですが、始動した時 ここまで続くと思っていましたか?
山田:もちろん! これはもう「続けないと意味がない」っていう想いでした。もちろん小さなプロジェクトなので、最初は本当に誰も知らないところから始まっていますが、コツコツと(短編映画を)作り続けて、関係者を増やし、興味を持つ人を増やし、プロジェクト自体を、どんどん成長させてこう!っていう想いでやってきたので… はい。
Q:これまで、数多くの一流クリエイターが「映画づくり」に協力していますが、やはり山田さんらの「気持ち」に共感している方が多いという事なのでしょうか?
山田:そういうことだと思います。それぞれ皆さん「なぜ参加してくれたか」というのは それぞれ色々理由があると思いますけど、一応 我々はどういう想いでこのプロジェクトを始めたかっていうことは お伝えしているので、そういうところを共感して頂いていると…。
山田:シーズン1から4に関しては 結構 本当に初めて監督をする方も いらっしゃったので、「ちょっと怖いけど、やってみようかな」って、なかなか、そのチャンスって やっぱりない。特に長編映画で監督ってなると、なかなか機会がない。
山田:実際、長編映画が撮れたとしても 劇場公開することで、要は「興行収入のショーレース」にのせられて、「何位だ」とか、「いくらいった」とか、その中で あまり望ましくない金額だった場合に、「あの監督はコケた」とか言われちゃうし、そうすると なかなか参加しづらい中で、(ミラーライアーフィルムズは)オムニバスで1本15分程度だし、みんなと一緒に公開するし、誰がどうでもない。
山田:このプロジェクト全体でやる。ということで、割と参加しやすい「最初のハードルが低い場」を我々も設定したというか、作ったので、参加しやすかった部分はあると思います。
長編映画の “ものさし” に感じた「違和感」。 短編映画のオムニバスなら、周囲の声を気にすることなく、「クリエイターがつくりたいもの」を自由度高く、つくることができる。との想いが背景にあったのです。一方、メイキング映像を見ると こんなやりとりが…
●小栗旬監督 「1/96」クランクイン・冒頭あいさつ
「監督、小栗です。お願いします。時間との闘いだったり、暗い夜の撮影も多いので、まず安全第一、けがなく…楽しく撮影していきましょう」
「みなさん、こんな『なかなかきついプロジェクト』に ご参加頂きまして、どうもありがとうございます。最後まで頑張りましょう よろしくお願い致します!」
Q:秋田で、撮影時かなり寒い現場で、小栗監督自身も「なかなかきついプロジェクト」と発言されていました。かなり多忙なのに、なぜ皆さんは「映画づくり」に参加するのでしょうか?
阿部:楽しいから…
山田:うん、大変だけど 楽しいですからね… やっぱり、うん。
阿部:これ(「男と鳥」の写真を指さして)僕ですけど、すごい雪が降ってたんですけど、やっぱり普通 天候的に雪が降ると「大変だ!」というイメージがすごくあるじゃないですか。もちろん撮影は大変になるんですけど、僕らはこの撮影の前日に秋田に入って、「雪ないね」という感じだったんですよ。確かに撮影は大変になるけど、「いや~雪景色 欲しいよね~」みたいな… 実際に雪が降ってくると、みんな喜ぶんですよね。
僕らは確かに寒かったりとか、足元の問題とかありますけど、やっぱり撮った映像を見ても こういう(雰囲気のある)写真になるので なんかやっぱり感覚が「大変=つらい」という単純なものではなく、もちろん、つらい部分もありますけど、その先に「喜び」があったりもするので、「大変だから、ただつらい」っていうわけではないんですよね。
クリエイターの発掘・育成が目的の「ミラーライアーフィルムズ」。
その対象は「新人」だけではないといいます…
山田:「ミラーライアーフィルムズ」の目的は、いろんな人たちの発掘・育成。でもそれは「新人」っていう事だけではなくて、我々(普段は俳優)も参加しているんですけど、俳優としては、ずっとやっているけど、監督をした経験がある人はほとんどいない。「カメラの前」では ずっとやってきているけど、「カメラの後ろ」に立ってみると、どんな気づきがあるのか…って事とか、正直、挑戦しなくてもいいわけですよ…。なんだけど、「でもそこは新たなことをやってみよう」「いろんな景色を見てみよう」という事でやっていて…
今回の「ミラーライアーフィルムズ・シーズン6」は、小栗旬さんと浅野忠信さんが監督を「初めて」ではないですけど、「久々に監督をやってみよう」ってことで参加してくれました。
Q:映像業界に長年いて「ここは変わった方が良いのでは」と思う「問題意識」みたいなものはある?
阿部:そうですね。まず一番最初のきっかけとしては、「人材」っていう意味では、新しい仲間だったりとか「関係人口」というのは多い方がいいな… というのがあって、「仲間を増やしたい」とかそういう視点が強かったですね。
それで、みんなに「映画づくりを知ってもらうきっかけ」だったりとか、俳優もゼロから映画を作ったことがない人ばかりなので、脚本などを用意されたところに「途中から入る」ので、だからまず「関係人口」という意味で「仲間を増やす」っていう意識が強かったです。
プロジェクトをやっていく上で、「労働時間」だったりとか、あとは「分配」ですね。報酬の分配というのは、基本的にインセンティブという意味でいくと、なされない… 俳優・出演者だったりとか、スタッフには、(興行収入がいくらであっても)基本的になされない。
そこをちゃんと正当に「頑張った分はみんなで分けよう」ということで、やっていった方が良いよね?っていうことで、そういうことを段々と積み上げていったという感じですね。
Q:メイキングを見ると、皆さん楽しそうに映画づくりをされているなと感じました。浅野監督は阿部さんがバンクーバーで「SHOGUN 将軍」の撮影時に口説いたとか?
阿部:そうです。「SHOGUN 将軍」っていう作品で、僕は浅野さんの上の階の部屋だったんですけど、休みの日は一緒に食事したりとか、向こうでの滞在期間もすごく長かったので、仲良くさせていただいて、浅野さんとの共演が初めてだったので、「浅野さんに聞きたいことがいっぱいある!」と、一緒に部屋で「ショートフィルム」を見たりとか、「この作品いいんだよ!」とか教えてもらったりして、そういう時間を過ごしたんですよね。
浅野さんの「表現」に、僕はすごく興味があるので、絵も描かれていますし、音楽もやられています。もちろん俳優としても…。当時、僕は浅野さんが過去に映画を撮られていたのは、知らなかったんですけれど、「浅野さんどうですか?短編映画を撮らないですか?」と誘って「え?撮りたい」みたいな… そういう経緯ですね。それでもう「じゃあ撮りましょうよ!」みたいな
Q:山田さんとしては、その話を聞いた時にどう思いましたか? 小栗監督を口説いた経緯についても教えてください。
山田:最初、聞いた時はびっくりしました。「なんか浅野忠信さんが監督やってくれるって!」「マジ?!」みたいな… 僕らが「シーズン1」から「シーズン5」をやっていく中で(ミラーライアーフィルムズの)存在は、結構(俳優仲間の)みんなも知ってくれていて 小栗旬くんと会った時に、「俺も誘ってよ」って言ってきたから、「え?マジやる?」「撮りたい撮りたい!」みたいな会話があって、「おぉ、じゃあ本当ね?本当にやるのね?」「今言ってるだけじゃないね?」って聞いたら、旬くんが「いや、本当にやる!」っていうから、「ぜひぜひ。もう好きにやってください!」って言って… そんな感じです。
Q:今後の野望は?
山田:野望…(笑) 今後どうしていくかってことですか? そうですね。結構いろいろ 他とも話はしていて、海外で我々みたいに規模は小さいけども、映画祭をやっている監督さんがいたりして、そういう方と会って、向こうで上映したり、向こうの作品をこっちでも上映したりとか。
例えば、お互いに国を越えて日本の監督がデンマークに行って短編を撮る。デンマークの監督が日本に来て、短編を撮るとか…そういう事もやろうよ!とか…
向こうで映像制作のワークショップをやったり、向こうの監督がこっちに来て…もうそれはやってくれたんだよね、この前。 子供たち、渋谷区の小学校で「映像の授業」をやってみたりとか、とにかく興味を持ってもらって参加できる場を増やす。
僕らは「短編映画を作る」ということを、今やっているんですけど、僕個人としては、メインの部分は別に映画制作じゃなくても良いんですよ。
「やったことがない事をやってみようよ!」って… 映画を作るなんてどうやってやったら良いの? って思うんですけど、まず声に出して「やろう!」と思って、別に自分1人でもできる事ってあるんですよ。
公園で、脚本を書いてもいいし、スマホで撮ったっていいし、何かをやっていると、同じ興味を持った人って自然とやっぱり寄ってくるので、そこで「チーム」ができて、結果 作品ができて、それが外に出たときに人が知ってくれて…っていう。それをもとにして、各々「何かやってみよう」と…
僕たちの場合は、「1本15分でいいから映画を作ってみようよ」っていう話。
「やってみよう!」って所がメインですね。
Q:プロジェクトに参加している人たちが「キラキラした目」になっていくのって、プロデューサーとしてはどんな気持ちですか?
阿部:まさにおっしゃる通りで、僕らは今回、秋田で撮影をして、撮影現場も見学に来ていただいて 映画づくりのワークショップをして、実際に学生さんたちに映画を撮ってもらって、そういう経験を経て、やっぱり映画って作れるんだよね、自分たちでね…
小栗さんとか浅野さんとか秋田に来ていただいて、何か「全然知らない世界の人」だと思っていたけど、やっぱり同じ人間だし、みんな同じところに立って、こうやってカメラを持って、そのカメラの前に立って、こうやって映画って撮るんだよねと…
本当、肌で感じてもらえたと思うので、そこからやっぱり自分たちで、今回のプロジェクトに関わった後に、自分たちで自主的に映画を撮ったらしいんですよね。それを聞いた時に、ものすごい…「ああやってよかったな!」っていう、そこが本当に喜びの1番大きな部分かもしれないですね。
Q:最後に、これから作品を観る人に対してメッセージをいただけますか。
山田:単純に作品として、それぞれ本当に色々な個性があるんですけど、それを楽しんでもらって、何だろう… 理解しようとしないで良いので、ああ、こういうのがあるんだ。これを良いと思う人がいるんだ…とか、もうそれはもう全然…その人次第で、その時の自分が…「いつ見るか」にもよるので、素直に見てもらって、何よりでも…今の浅野忠信さんはこういうことを出したかったんだ、今の小栗旬さんはこういうことを出したかったんだとか。なんかそういう風に見てもらえたらいいので、映画やってみてもいいし、映画じゃなくても何かやってみようかなと…
これは学生とか年齢は関係ないんですよ。もう40代50代60代になっても、やっぱり「撮影する」ってなった時に 地元の方々…それは役場の方だったり、ボランティアの方、いろんな人に協力していただいて映画を一緒に作るんですけど、やっぱりそういう方々も今回のイベントも文化祭みたいなことになってますけど、やっぱり大人になって、もうあんまりそういう(挑戦する)機会がなかったんだけど、映画づくりに参加すると、みんな「子供の頃」に戻ったような感じになるんですよ。
さっきも会話で出た「大変なこと」はめちゃくちゃある。でも、だからこそ団結力がすごくなるんですよ。もう一致団結しないとできない場面が結構出てくる…。だからこそ、それを乗り越えた時にすごい絆が深まるし、最高に嬉しく楽しくなる。なので、そういったプロジェクトだということをを理解して、何かふわっと見てもらえたらいいと思います。
「何が出てくるかわからないオムニバス映画は、福袋だ」
山田:劇場に行くって 長編映画とかって 自分で情報を調べて「これを観に行こう」って、やっぱり結構好み…か、ちょっと好奇心ってところがあるけど、オムニバスだと何があるかわからないですよね?これ…作品は5本もあるし…
だから、そういう作品を観たときに、こんな映画もあるんだ。こんな表現があるんだ…とかっていうのを、なんか観てほしいですね。「なんか、映画って本当に自由だな!」っていうことを感じてもらえたら良いかもしれない(笑)
阿部:(短編映画のオムニバスって)これを観に行くぞ!じゃなくて「何が出てくるかわからない・ワクワク感」がある見方なんだな…
山田:そこの楽しさに気づいてくれたらいいよね。特に日本人はやっぱり、みんな「何があるかわからない所は怖い」って受け取る人が結構多いんですけど、なんか福袋みたいな、「何入ってんだろ?」 みたいな感じで短編映画を観てほしい。
小栗旬監督の「1/96」、浅野忠信監督の「男と鳥」など 全5作品「ミラーライアーフィルムズ・シーズン6」は、12月13日から2週間限定で劇場公開されます。
【担当:芸能情報ステーション】
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