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顔認証の最新事情 鍵もカードも不要な時代へ。テーマパークから無人書店まで普及の裏側

経済
2026-10-09 07:00

スマートフォンのロック解除から、マンションの鍵、さらにはテーマパークでの思い出作りまで、私たちの生活に急速に浸透しつつある「顔認証技術」。その精度は今やエラー率0.06%という驚異的な水準に達し、ビジネスの現場でも様々な形で活用が進んでいます。しかし、技術の進化は同時に、プライバシーの問題や誤認逮捕といった社会的な課題も突きつけています。今回はリサーチャーのcomugiさんを迎え、顔認証ビジネスの最前線と社会実装のあり方を探ります。


(聞き手:Podcastプロデューサー・野村高文。TBS Podcast『東京ビジネスハブ』2026年9月28日配信『エラー率0.06%で世界一! NECの顔認証が日本と米国で見せる“違う顔”とは(comugi)』より)


エラー率0.06%で世界一。身近になる顔認証技術とテーマパークの革新

野村:今回のテーマは「顔認証」ですね。エラー率0.06%で世界一、NECの技術が話題ということで非常に気になります。


comugi:顔認証というと、少し身近にない話と感じるかもしれませんが、今この技術の精度が劇的に上がっているんです。「0.06%」というのは、アメリカの商務省にある政府機関「アメリカ国立標準技術研究所」が認めた精度のことで、ここでNECが世界一を取りました。0.01%の差でデッドヒートが常に行われている世界ですが、それだけNECの顔認証技術が非常に高い精度を持っているということですね。


野村:確かに、NECは昔から展示会などで顔認証技術を強く推していた記憶があります。最近になって、この技術をよく聞くようになったのはなぜなのでしょうか。


comugi:身近な例で言うと、最近はテーマパークなどでも使われ始めています。少し前にSNSで話題になったのですが、那須ハイランドパークに「プレスマ」というサービスが導入されました。園内に置かれた約50台のカメラが来場者を自動的に撮影し、AIが顔を認識して、1日の終わりにハイライト動画を作ってプレゼントしてくれるというものです。


野村:面白いですね。普通に園内を歩いているだけで、自分の顔が撮られて動画になるわけですね。


comugi:最初に自分の顔写真を登録しておくと、カメラの前を通るたびに撮影されます。これがSNSで話題になった理由が面白くて。親と子が遊園地に行くと、大抵親は子供の写真を撮るので、写真の中に親がいないという問題が起きますよね。


野村:その通りです。家族で行くと、誰かが撮影係になるので画角に入らないんですよね。


comugi:スマートフォンの写真フォルダが子供だけの写真になってしまうという悩みを、このサービスが解決してくれるんです。「親の写真がないと寂しいと思っていた」という親世代から、ものすごい盛り上がりを見せました。


野村:なるほど。AIによる解析精度の向上と、50台ものカメラを設置できるくらいカメラのコストが下がったことが、大きなブレイクスルーになっているわけですね。


改札から無人書店まで。広がる顔認証のビジネス活用

comugi:このように、いろいろなところで顔認証技術が登場しています。例えば鉄道では、大阪メトロが2025年3月から全134駅中130駅で顔認証改札を本格運用しています。関東圏でも、東武鉄道と日立が2026年7月に東武東上線の池袋駅などでウォークスルー型の顔認証改札を実用化しました。ICカードやスマホをタッチする必要がなく、カメラが認識して改札が開くんです。


野村:これは魅力的ですね。楽だなと思います。改札だけでなく、鍵を開けるような場面なら大体いけそうですね。


comugi:おっしゃる通りです。コンシューマー向けで実用化が進んでいるのがマンションの鍵です。三井不動産レジデンシャルが千葉県船橋市で「全住戸オール顔認証分譲マンション」を発表しており、エントランスから自分の家の玄関まで、スマホも鍵もいらずに顔だけで開きます。また、セブン銀行のATMでも、キャッシュカードやスマホなしで顔認証で入出金できるサービスが始まっています。


野村:何も持たずに出かけられるのはすごいですね。


comugi:さらに私が感動したのは、無人店舗での活用です。中堅書店チェーンの三洋堂書店が、顔認証で入店できる夜間の無人営業店を20店舗ほどに広げました。書店が減少し、人件費の採算が合わない中で、セルフレジと組み合わせて無人化を進めています。なぜ顔認証にするかというと、セキュリティのためです。最初に入店する時に顔認証をしていれば、万引きなどの悪いことができないという抑止力になります。


野村:誰が入店したか記録されている時点で、非常にやりにくくなりますね。ビジネス向けでも、出退勤の記録や建設現場の入退場管理など、人件費を抑えるために顔認証が広がっていきそうですね。


comugi:国内の顔認証市場は、2025年で557億円という予測がありますが、2030年には約1300億円にまで広がると言われています。まさに今、一気に普及するタイミングに入っています。


「1対N」の認証と、日本最大の顔認証インフラ「マイナ保険証」

野村:今までは「1対1」の認証、つまり自分の顔を登録して鍵を開けるという話でしたが、不特定多数を認証することもできるんですよね。


comugi:そうです。それが「1対N」の顔認証です。例えば、スーパーに設置されているカメラのうち、顔認証機能がついている割合は現在6%ちょっとだと言われています。まだまだ実用化の途上ですが、過去に万引きをした人が入ってきたらアラートを鳴らす、といった使い方が想定されます。


野村:なるほど。ただ、街を歩いている時に、こちらが許可したわけでもないのに勝手に顔を撮られて認証されているというのは、少し気持ち悪い感じもしますね。


comugi:そうですよね。実は、皆さんの身近なところですでに顔認証が一気に普及したジャンルがあるんです。それが「マイナ保険証」です。


医療機関や薬局に置かれているマイナ保険証のカードリーダーは、約21万台あります。実はこれが、日本最大の顔認証プラットフォームなんです。本人かどうかを確認する作業として、本当に身近なインフラとして入ってきています。偽物の保険証を使ったり、なりすましたりするのを防ぐという意味では、非常に重要なフローです。


アメリカの誤認逮捕から学ぶ、顔認証と社会制度のあり方

comugi:国家レベルで顔認証が導入されている事例として、アメリカの話をしましょう。アメリカでは警察が顔認証のプラットフォームを持っており、街中のカメラから犯罪者を特定して逮捕するケースがあります。ここで問題になっているのが「誤認逮捕」です。


野村:なるほど。AIが間違えてしまうわけですね。


comugi:顔認証システムは「この人は犯人かもしれない」とスクリーニングするだけなのですが、そこで人間がそのまま逮捕してしまい、間違いだったというケースが年間15件ほど起きていたという統計があります。自分が間違って逮捕されたらと思うと、本当に怖い話ですよね。


野村:顔認証で一致しただけで逮捕まで行ってしまうのは、手続きとして少し飛ばしている感じがします。


comugi:実はアメリカでは、この誤認逮捕がきっかけになって社会の制度を変えていったんです。「重犯罪者にしか顔認証を使えないようにする」「逮捕するプロセスを厳格化する」といったルールを、システムが導入された後から整えていきました。先にやってみて、エラーが起きたら後から修正するというのは、すごくアメリカらしい合理的なアプローチだと思います。


野村:日本はゼロリスク信仰((危険をゼロにしなければならないという傾向)が強いので、ミスが1件でも起きると適用しないという発想になりがちですが、対照的ですね。


comugi:精度が上がっているとはいえ、データが不足している状況では当然エラーも起きます。技術は中立ですが、そのシステムがどこまでデータを保持していいのか、どう運用するのかといったルール作りは、これから日本でも必ず議論されるべき課題だと思います。


<聞き手・野村高文>
Podcastプロデューサー・編集者。PHP研究所、ボストン・コンサルティング・グループ、NewsPicksを経て独立し、現在はPodcast Studio Chronicle代表。毎週月曜日の朝6時に配信しているTBS Podcast「東京ビジネスハブ」のパーソナリティを務める。

<東京ビジネスハブ> TBSラジオが制作する経済情報Podcast。注目すべきビジネストピックをナビゲーターの野村高文と、週替わりのプレゼンターが語り合います。


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