
米国・イスラエルのイランへの軍事作戦で原油価格は急騰。日本でもインフレの再加速が懸念され、賃上げムードに黄色信号が灯り始めている。
株式市場は大荒れ
連日続くアメリカ・イスラエルとイランの攻撃の応酬ー
日経平均株価は3月2日から続落し3日間の下げ幅は4600円を超えたが、その後は中東情勢をめぐる警戒感が後退し、6日は5万5620円と値を戻している。
アメリカの株式市場では、これまで不安要素があっても基本的に強気だったが、「今までのような動きは期待できない」と話すのは、ニューヨークに拠点を置くヘッジファンド『ホリコ・キャピタル・マネジメント』の堀古英司さんだ。
『ホリコ・キャピタル・マネジメント』堀古 英司さん:
「今回のイラン攻撃は全くのサプライズだったので、明らかにリスクとして織り込む形で株価が下がるのは仕方がない。今後の株価の上下は戦況次第だが、短期的には収束が見込めないと思うので、今までのように“下がったけれどもすぐ戻る”というようなことは、そんなに早くは期待できないだろう」
――アメリカの株式市場では、TACO(TRUMP ALWAYS CHICKENS OUT=トランプはいつも尻込みする)で楽観視するような面があった。今回はどうか
『ホリコ・キャピタル・マネジメント』堀古 英司さん:
「TACOの対象になったのは関税などで、これはトランプ大統領自身で取り下げたりできる問題。ただ今回のイラン攻撃は相手のあることなのでそれはできないし、むしろ引っ込めるともっと大変なことになるのでできない。また、大抵の場合トランプ氏がやってしまったことを、ベッセント財務長官が経済的な対策を打つことが多かったが、ホルムズ海峡が封鎖されるとかは財務長官の力ではどうにもならないので、今までとは違うと思う」
原油高騰「影響避けられない」
イランが事実上封鎖をしているエネルギー輸送の要衝・ホルムズ海峡は、日本で使用される原油の約8割が通過。封鎖によりペルシャ湾内には6日時点で日本関係の船が45隻停泊している。
『日本船主協会』長澤仁志 会長:(4日)
「中東からのエネルギー資源が海上輸送できないだけでなく、当協会会員船舶・船員がペルシャ湾で身動きが取れない状況となっている」
5日にはイランの国営メディアが「革命防衛隊はペルシャ湾北部でアメリカのタンカーを攻撃した」と発表。6日のニューヨーク原油市場は一時1バレル92ドル台まで上昇し、2年5か月ぶりの高値水準となった。
『ホリコ・キャピタル・マネジメント』堀古 英司さん:
「1バレル80ドルぐらいまでなら、2022年後半から2025年前半にかけて取引されていた最も取引量の多いところなので問題はないが、90ドル台は別世界。これが長く続けば影響は避けられない。アメリカは5年以上前からエネルギーに関しては純輸出国になっているので、経済全体に与える影響はかなり中立的になるが、日本やアジアはほとんどエネルギーは輸入に頼ってるので影響は免れないと思う」
ここ数年“日本だけ”原油価格急騰
日銀ウォッチャーの加藤出さんも、日本への影響を危惧する。
『東短リサーチ』社長 加藤 出さん:
「日本で使う原油の8割がホルムズ海峡を通り、日本のエネルギー自給率は13%ぐらいしかないので先進国の中では一番厳しい状況。なおかつ“円安“も加わって原油価格の上昇がよりしんどくなっている」
通貨建て別で、2020年初からの各国の原油価格の変化をみると、円以外は20%台の上昇なのに対し、円建ては87%の上昇と突出している。
<通貨建て別 原油価格の変化>※2020年初~26年3月6日
▼日本円:87%
▼米ドル:29%
▼中国人民元:28%
▼豪ドル:28%
▼英ポンド:27%
▼ユーロ:24%
――他の国は自国通貨建てで見ると2割、3割の値上がりなのに日本だけが9割近く上がっている
『東短リサーチ』社長 加藤 出さん:
「やはり円安の影響は大きい。高市さんが首相になる前は円建ての上昇率は3割ちょっとぐらいだったが、10月以降円安も進み、さらに今回のイランの問題も生じたことでこんなに上がってしまっている」
物価や賃上げにも影響懸念
エネルギー価格が高騰すると、当然物価にも影響がある。消費者物価は今のところ落ち着いてきてると言われているが、また上昇するリスクも出てくる。
<2026年1月 消費者物価指数>
▼生鮮食品除く:前年同月比2.0%
▼生鮮・エネルギー除く:2.6%
『東短リサーチ』社長 加藤 出さん:
「特に最近は日本企業がコストの上昇を販売価格に転嫁する傾向が、円安の時などでも堅調に出ている。なので今回も、円安+原油価格上昇で、4月以降、新年度入り後のいろんな値上げが結構増えるのではと心配」
原油高で懸念されるインフレの再加速が、春闘で高まる“賃上げムード”に水を差しかねない。
<春闘賃上げ率>
▼2024年【全体5.1%】【中小組合4.45%】
▼25年【全体5.25%】【中小4.65%】
▼26年要求【全体5.94%】【中小6.64%】※連合5日発表
26年の春闘の焦点は「物価上昇に追いつく賃上げ」だが、経済団体のトップは…
『日本商工会議所』小林 健会頭:(5日)
「実は憂慮している。戦争が始まる前は相当強い賃上げのモチベーションがあった。経営者の心理から言えば、こういう場合は様子を見ようということになりかねない」
――今、日本では実質賃金のプラス化が一番の焦点。物価が落ち着いてくればプラスになると期待されているが、物価が上昇する、名目賃金も予想ほど上がらないとなると、実質賃金のプラス化が遠のく
『東短リサーチ』社長 加藤 出さん:
「ガソリンの暫定税率を廃止したり、消費税の食品の部分をゼロにするという議論が実現化してくれば、表面上は物価の上昇率が下がるので26年は一時的には実質賃金がプラスになるのではと期待されていた。ただ、このオイルショック的な動きでさらに値上げが増えると、実質賃金プラスが遠のくリスクが少し出てきた」
1994年~24年の30年間で「各国の実質賃金の推移」を比べると、アメリカやヨーロッパの主要国は実質賃金を大きく伸ばしているのに対し、日本はほぼ横ばい状態だ。
『東短リサーチ』社長 加藤 出さん:
「これは結構根が深い問題。ガソリン暫定税率廃止とか、消費税を下げたらいいとかそういう問題だけではなくて、日本企業の生産性をより高めて給料を払える企業をどれだけ増やせるか、あるいは企業の労働分配率をいかに高めるかなど様々取り組むべき大きなテーマがあると思うが、なかなか一朝一夕に行く話でもない」
構造的に実質賃金を上げる対策をすべき時に、「今、実質賃金を上げないといけないから景気を刺激すべきだ」というような議論になると矮小化されてしまう恐れもある。
日銀「リフレ派」増で追加利上げは?
日銀の植田総裁は4日、原油高が物価に及ぼす影響について、「交易条件悪化の影響をもたらし、景気や基調的な物価に“下押し圧力となる可能性”がある」と述べる一方で、「家計・企業の中長期的予想インフレ率の上昇につながり、基調的な物価上昇率を“押し上げる可能性”もある」と、物価の見通し難しさを吐露した。
――原油高による物価上昇と景気の悪化。日本は今、どちらを警戒すべきか
『東短リサーチ』社長 加藤 出さん:
「今の状況では、やはりインフレをより警戒せざるを得ない。『景気が心配だから利上げを当面やめる』などと言えば、かなり円安が進む。そうするとまた輸入物価が上がって国民が苦しむ。また、経済にとって中立的な政策金利、つまり“景気を押し上げもしないし減速もさせないと想定される金利”よりも、日本だけがまだ低い。金利水準が低いだけに、スタグフレーション的な状況になってしまった時はインフレ制御の方を重視しないとかえって後で大変なことになる」
日銀の金融政策に注目が集まるなか、政府は日銀の審議委員に金融緩和などに積極的とみられているリフレ派の2人を充てる人事案を国会に提示した。
『東短リサーチ』社長 加藤 出さん:
「リフレ派をガッツリ入れてきたということは、高市政権としては日本銀行に対して『金利引き上げを急ぐな』という明確なメッセージ。政策委員を選んで金融政策を議論するやり方は1998年から始まったが、2012年までは政府が委員を選ぶときに、ある方向性に合った人だけを選ぶことはなかった。安倍政権になってからかなり政治色が持ち込まれ政権の考えに一致する人を選ぶというのが始まった。一旦岸田首相の時に弱まったが今また復活してきた。これは中長期的な通貨の信認という点では明らかにマイナスで、結局今の円安にも繋がっていると言える」
(BS-TBS『Bizスクエア』 2026年3月7日放送より)
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