
AI面接官にAIによる広告生成、熟練工の技のデータ化まで、人手不足が深刻化するなかで驚異的な進化を遂げるAIとロボット。それらは仕事を奪う脅威?それとも可能性を広げる相棒?
【写真を見る】「2025年はAI失業元年」驚異的進化のAI・ロボットで“人間の仕事”はどうなる?
バク転や逆立ちもできる「四足歩行ロボ」
1月、東京ビッグサイトで開催された日本最大級のロボット展示会「ロボデックス」の会場で、ひときわ注目を集めていたのが中国企業が開発した人型ロボットだ。
足も腕もしなやかな動きでダンスを披露し、軽快なフットワークから鋭いパンチを繰り出している。
さらに、バク転や逆立ち、高い段差も難なく乗り越える四足歩行ロボットも。
その高い運動能力などが評価され、すでに総合建設会社『鴻池組』は四足歩行ロボットをトンネル工事の調査に導入。作業員が行っていたトンネル内での危険を伴う調査をロボットが行うことで、現場の安全性向上に大きく貢献することが期待されている。
販売代理店『ポケット・クエリーズ』中道智宏さん:
「いま人手不足のいろんな産業の現場の中で、人に代わってできることはどんどん増えてくる。当たり前にロボットと人が働いているみたいな、多分そういう社会はこれからやってくるのかなと思う」
“世界初”の技術で挑む日本企業
アメリカと中国がリードするロボット分野で、“独自の戦略”で挑むのが、日本のスタートアップ企業『ドーナッツ ロボティクス』だ。
開発した二足歩行型のヒューマノイド「シナモン1」は、身長約170cm・重量約70kgと人と同じぐらいの身長・体重のロボット。フェンシングのような白い面と服をまとい、会話もできる。
最大の武器は、世界初の“ジェスチャーでロボットを動かす”技術だ。
手招きをすると近づき、手のひらを前に出し<止まれ>の合図で停止。手を払うと後退していく。騒音が大きい工場や建設現場でも、ジェスチャーだけでロボットを自在に操ることができるという。
『ドーナッツ ロボティクス』小野泰助社長:
「一括で買うと1800万円ぐらいで高いけど、リースだと“月額=人の給料”ぐらいの値段で借りることができるようになる。人の給料と同じぐらいだとは思うけど、“24時間働く”のでなかなか頑張るかなと」
米国では「2025年はAI失業元年」
AIやロボットの進化は、「すでに人の仕事に影響し始めている」と話すのは、駒澤大学の井上准教授だ。
『駒澤大学』経済学部 井上智洋准教授:
「アメリカは、すでに“2025年がAI失業元年”と言っていいかと思う。“事務系”の仕事とかが若手を中心に減っていて、あと特徴的なのは“プログラマー”とか。このまま進歩していくと“汎用AI”とはっきり言っていいようなものが出てくる。汎用AIとは、パソコンで平均的な労働者がやっていることは代替できるようなAI」
AIの浸透はクリエイティブな現場にもー
インターネット総合サービス企業の『サイバーエージェント』が開発したのは、AIが構図や被写体、背景などの要素ごとに広告効果を予測し最適な広告を作成するシステムだ。
実際に作成現場を見せてもらうと、パソコンの画面には化粧水のボトルを様々な画角や配置で撮影された画像が並んでいる。
『サイバーエージェント』AIクリエイティブプランナー・洞ノ上茉亜子さん:
「今から新しい広告を<極予測AI>で作る。被写体の置き方、商材の置き方でいろんな組み方をして、どういう表現がいいかを確かめようと」
AIを導入したことで、クリエイター1人あたりの制作本数は▼導入前:30本/月⇒▼導入後:220本/月と、7倍に増加。飛躍的に生産性が高まったという。
洞ノ上さん:
「よく言われるのが、クリエイターの仕事が生成AIなどに奪われてしまうんじゃないかと。私は2020年からずっとAIとともにいろんな仕事をしてきた中で、そうは思わない。自分のクリエイティビティを“いかに拡張してくれる存在”として思えるかどうかが大事だと思っている」
「AI面接官」で“公平”&“本音を引き出す”
スタートアップ企業『プロップス』が開発したのは“AI面接官”の「MiAI」。画面に登場する面接官は、リアルな人物アバターだ。
企業の採用方針や募集職種に合わせて質問や評価基準をあらかじめ設定するだけで、まるで人間の面接官のように会話をリアルタイムで生成。AI面接官が面接者の印象が悪いと判断すると、厳しい評価も下す。
“公平”かつ“本音を引き出す”ツールとして、すでに40社以上が導入しているという。
『プロップス』松元勇人社長:
「人事の人に『自社は第何志望ですか?』と聞かれると、忖度して『第一志望です』と言うケースがほとんど。面接相手がAIだと、もうちょっと“正直に答えてくれる”ので、“本当のことを知るためにあえてAIを活用する”みたいなケースは多い。人間だと関係値による忖度が生まれやすいので、AIが聞く方がふさわしいこともある」
AIで“熟練工”の技能伝承
一方でAIは、“人の技術を磨く”ためにも活用されている。
『アキュイティー』が開発した「モーションキャプチャ」は、4つのカメラで撮影した人の動きのデータをもとに、“AIが全身の関節の動きを数値化”する。
『アキュイティー』CEO 佐藤眞平さん:
「動きを見るとか伝えるというのは、データという裏付けがあって初めて伝わるものだし立証できるものだと思う」
この技術を取り入れたのが自動車メーカーの『マツダ』。
マツダならではの滑らかなデザインを実現するためには、熟練工が持つ匠の技が必要なことから、若手技能者の“金型加工”技術を向上させるための訓練で使われている。
モーションキャプチャで<熟練工>と<初級技能者>の動きを比較したものを見てみると、熟練工は身体の軸がブレずに 腕のみを振っているが、初級技能者は身体全体が動いてしまっているのがわかる。
『マツダ』技能伝承システム担当 佐伯千春さん:
「匠の人は左右の足のバランスが均一ということが計測データから分かったので、左右の足のバランスが良くなるように姿勢を変えることで体幹がブレにくくなる」
AIで熟練工の重心移動や腕の振り方をデータ化し、習得に20年必要と言われる金型加工技術の技能伝承の期間を5年に短縮することを目指している。
佐伯さん:
「基本的な動きはAIやロボットでも再現できるとは思うが、細やかな調整というところはどうしても人間でないとできない。まだまだ人の手で作り込んでいくところかなと思う」
“人間にとって何が必要か”を考えるのは人
AI時代の働き方で、大事なことは何なのだろうかー
『駒澤大学』経済学部 井上智洋准教授:
「AIにも新しいものやアイデアを出せるにしても、それが人間にとって良いものかどうかという判断がつかない可能性がある。そこの感覚がAIにはないので、“人間にとって何が必要か”というのは、やっぱり人間が考えるべき仕事。『こういう商品あったらいいだろうな』というアイデアを出していくのが大事」
一方、AIを巡っては、2月のアメリカの株式市場で象徴的な出来事があった。
AIスタートアップの『アンソロピック』が、これまでITサービス企業が担ってきた業務の多くを自動化できるツールを発表。これによりソフトウェア企業の存在意義が揺らぎ、セールスフォースやアドビの株価が急落し、“アンソロピック・ショック”とも言われている。
また、アメリカでは雇用の数字にもAIの影響が表れてきている。
――22年はコロナという特殊な要因もあり、かなり変動幅が大きいがそれでもソフトウェアや一般事務の求人数の減り方が大きい。AI失業元年とも言われてるが、AIの雇用に与える影響は。
『東京大学』名誉教授 伊藤元重さん:
「ミクロとマクロを分けて考える必要があると思う。ソフトウェアや事務職はかなり速いスピードでAIに置き換わっていく。ただマクロ全体で見ると人手不足が深刻なので、それ以外の分野で失業率が非常に大きく出てくるというのはまだ少し先なのではと思う」
――つまりは他の業種に人が移っていくと。逆にそれがスムーズにできないと失業も生まれる。企業は、AIを使って生産性向上が本当にできるかどうかも問われる。
伊藤さん:
「企業にとってもスムーズに移行できるかどうかが、やはり競争力の非常に大きな源泉になる。またAIを代替的じゃなくて、補完的な付加価値をどうやって作れるかということにもなる」
(BS-TBS『Bizスクエア』2026年2月7日放送より)
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