
金やビットコインの価格が急落する一方で、為替市場でも高市総理の発言をきっかけに円高方向から一転円安と波紋が広がっている。
金・ビットコイン急落のワケ
1グラム3万円の大台を突破し最高値を更新していた「金」が、2日、一転して急落。下げ幅は3500円を超えた。
同じように、ビットコインも急落。
引き金は、トランプ大統領が次期FRB議長にケビン・ウォーシュ元理事を指名したことだ。
ウォーシュ氏は金融大手のモルガン・スタンレー出身で、2006年に当時史上最年少の35歳でFRB理事に就任した経歴を持つ。かつてはFRBの量的緩和を批判していて、資産の縮小などFRBの改革を訴えている。
ウォーシュ氏(2025年5月):
「この中央銀行は100年以上の歴史があり、自ら改革を行うことができれば次の100年も成功を収めるだろうし、そうでなければならない」
金融緩和に慎重な「タカ派」とみられるウォーシュ氏を次のFRB議長に指名したことで、利下げへの不透明感が広がり、ドルの価値が相対的に高まるとの思惑から金とビットコインが急落したのだ。
しかし、ウォーシュ氏の議長就任後も「利下げの方向に進む」と見ているのは日銀の審議委員も務めた野村総研の木内さんだ。
『野村総研』エグゼクティブ・エコノミスト 木内登英氏:
「トランプ氏に反発すると今のパウエル議長と同じ目にあうというのは明らか。自分の考えもある程度抑えながらやはり利下げの方向、トランプ氏の望む方向の政策に進むのではないか。ただ金融政策は1人で決めるわけではなく合議。ほかのメンバーを説得できなかったら利下げが進まないが、ウォーシュ氏はそれなりの人望と評価、リーダーシップがあるのだと思う」
“量的緩和に否定的”&“タカ派”
国際経済学が専門の伊藤元重さんも、利下げについて「トランプ氏が選んだのだからそれなりの可能性はある」と話す。
――ウォーシュ氏は量的緩和に否定的でタカ派の印象があるが、今回は利下げに積極的だということで評価されて議長に選んでもらったと
『東京大学』名誉教授 伊藤元重さん:
「そうは言いながらも、前回量的緩和に反対したということは一方で筋を通す人。そういう意味では、議長が新しくなってマーケットの環境はかなり変わるのではないか。だから何が起こるかわからないから、とりあえずビットコインや金を売っておこうというリスクオフの状態だ。実際に就任してどういう政策をするかによって状況が変わってくるとは思う」
「FRBの保有資産」をみてみると、リーマンショックやコロナ禍の金融緩和で2022年に約9兆ドルまで膨れあがったが、2月4日時点で6兆6059億ドル(約1035兆円)と引き締めている。
――引き締めたとは言っても、リーマン前に1兆ドルぐらいだった資産がまだ6兆ドルもある。ウォーシュ氏の持論は「量的緩和をある程度の水準に抑えないと金融政策の効果が出ない」というものだと思うが
伊藤さん:
「前回彼が理事のときに量的緩和に反対したというのはわかる。大きな政策変化だったから。ただ一旦増えた保有資産を急激に元に戻す、量的に縮小するというのはなかなか難しいし本人もそんなことは考えてないと思う」
――量的緩和を急速に縮小したら、金利は上がる、住宅金利も上がる。一方でトランプ氏は利下げしろと。どう舵取りをするのか
伊藤さん:
「だましだましやるしかない。一応、政策金利を少し下げる流れに来ているわけだから、この流れをもう少し続けるかどうか。ただ、インフレもまだ心配だし長期金利も上がり傾向。こういう中で政策金利だけをかなり一本調子で下げてくのは難しいと思う」
“円安ホクホク発言”の波紋
2月に入ってドル円相場も大きく動いた。
1月末、日米当局によるレートチェックにより一時152円台まで円高が進んだものの、10日も経たずに157円台へと逆戻り。円安加速のきっかけとなったのがー
高市総理(1月31日):
「今、円安だから悪いって言われるけれども輸出産業にとっては大チャンス。円安でもっと助かってるのが外為特会。これの運用、今ホクホク状態」
その後、SNSで『円安メリットを強調した訳ではない』と釈明した高市総理だが、野村総研の木内さんは、“政府の公式見解から外れた発言”だったと指摘する。
『野村総研』エグゼクティブ・エコノミスト 木内登英氏:
「“政策当事者は為替の水準とか方向性について評価してはいけない”。それが不文律。だから政府も従来は為替の評価をしてこなかった。高市政権の積極財政によって円安になっているとの批判への反発があって“政府の公式見解から若干踏み出して個人の思いが結構出てしまった”。レートチェックのように円安を抑えるという政策をしながら直後に円安容認と受け止められる発言をしたのはやはり失言だったと思う」
番組の相場予想でおなじみの三井住友信託銀行の瀬良さんも、市場は「総理の円安容認」と受け止めたと話す。
『三井住友信託銀行』瀬良礼子さん:
「総理の考えとして『そんなに今の為替水準に対して危機感を持っていない』と市場は受け止めたということ」
そして、今後の為替相場の見通しについてはー
瀬良さん:
「円安圧力が強いながらも、“159円160円というところに関しては介入警戒感が非常に強いような”ちょっと動きづらい相場になるのではないか。重要になってくるのは“アメリカ経済の強弱”と“FRB次期議長の姿勢”。ここがこれからのマーケットを決めてくると思う」
株が下がれば“トリプル安”
経済財政諮問会議民間議員などを歴任した伊藤さんも、「本来は総理がこういう発言をするべきではない」という意見だ。
――総理の発言では、円安の悪い面には触れず逆に円高の悪い面には触れている。円安容認と取られても仕方がない。円安円高はその時の状況や立場で評価が違うが、今の状況をどう見るか
『東京大学』名誉教授 伊藤元重さん:
「私だけではなく、おそらくほとんどの人は円安が行き過ぎていると思っているだろう。円安が続くと物価にかなり悪い影響が出るというのはみんな懸念している」
――今みたいに長期金利が上がって円安が進むという、ちょっと嫌な地合いだ
伊藤さん:
「経済不安や財政不安というものが金利を上げながら、他方で為替を下げている。これで株が下がったらトリプル安になってしまう。株は今は非常に好調だが、やはり気になる状況でかなり注意しないといけない」
「外為特会」は自由に使えるお金?
もう一つの疑問は、“円安で外為特会が潤っている”と表現した点だ。
選挙期間中には、自民党以外の政党も「うまく使えば財源になる」と言っていた外為特会(外国為替資金特別会計)だが、そもそもは為替介入を行うための特別な会計、お財布だ。
――元々円資金を借りて、それで円を売ってドルを買う介入をやったので大量のアメリカ国債がこの財布に入っている。運用益の大半は米国債の利子なので円安で含み益が膨らみ、これを使おうということだが実は既に結構使っていて自由に使えるお金が余っているわけではない
<外為特会の余剰金【計5兆3603億円】の使途内訳>2024年度
▼【3兆2007億円】⇒25年度一般会計に繰入 そのうち約1兆円が防衛費
▼【7878億円】⇒26年度歳入に繰入
▼【1兆3717億円】⇒外国為替資金
また、そもそもの元本である外貨準備高は、2026年1月時点で1兆3947億ドル(約219兆円)。
――外貨準備はドル建てだが円にすると219兆円もあると。だから少しぐらい売って財源捻出すればいいじゃないかと
『東京大学』名誉教授 伊藤元重さん:
「元々円を借金してドルにかえているわけだから、これを使うということは“借金を残しながら使う”ということなのでありえない話。日本は世界的に見ると外貨準備が多すぎるとは言われているが、そうは言っても外貨準備というのは普通の財政で使うようなお金ではない」
――実際に売るとなると、ドルを売って円にするわけだから介入と同じような効果。今みたいな局面でやるとどうなのか
伊藤さん:
「余計外国為替市場は混乱するし、そもそもアメリカは自分の国の国債を日本が売りに出すことは容認しないと思う。外貨準備を当てにするなら、利子分、余剰金の3、4兆円ぐらいで、それを超えて使うのはかなり難しい」
(BS-TBS『Bizスクエア』2026年2月7日放送より)
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