E START

E START トップページ > 経済 > ニュース > “ゴーンの呪縛”から日産を解放できるのか?「Car Lover」エスピノーサ次期社長が語る立て直し

“ゴーンの呪縛”から日産を解放できるのか?「Car Lover」エスピノーサ次期社長が語る立て直し

経済
2025-03-26 18:38

業績不振やホンダとの経営統合の白紙など、経営の不透明感を増す日産自動車。


【写真を見る】“ゴーンの呪縛”から日産を解放できるのか?「Car Lover」エスピノーサ次期社長が語る立て直し


3月11日、突如として月末で内田誠社長が退任し、4月から商品企画を担当するイヴァン・エスピノーサ氏が社長を務めると発表した。


カルロス・ゴーン元会長の逮捕以降、混乱の続いた日産をどう立て直すのか。次期社長が報道陣の取材に応じ、立て直しにかける思いを話した。


「どちらかというとCar Lover」 クルマにかける愛の深さを記者は感じた

メキシコ出身のエスピノーサ次期社長。自身の父親も自動車関連のビジネスに携わっていて、根っからのCar Guy=クルマ好きだと言われている。


記者が「内田社長もあなたのことをCar Guy(クルマ好き)と言っていましたけど」と聞いたところ、「どちらかというとCar Lover。クルマを愛する者の方だ」と言ってのけた。


日産社内で聞いてみても、「彼はクルマが大好きだよ」という声をよく聞く。


愛車は日産の代名詞でもあるスポーツカー「フェアレディZ」。だが日本国内で乗っているのにも関わらず、愛車は左ハンドルだ。その理由について「日本で買うと納期が長く待たされる。でもお客様が第一だから『私を最初にして』なんて言えない。待ちきれないので、ほかに売ってくれるところはないかということで、カリフォルニアのディーラーに連絡して日本に送ってもらった」と楽しげに語った。


ここ最近の日産の経営トップのなかでも、クルマにかける愛が深いのは記者として大きく感じたところだ。 


クルマへの愛の深いエスピノーサ次期社長だが、待ち受けている現実は非常に厳しい。


北米や中国での販売不振が響き、今期は800億円の最終赤字となる見通し。ホンダとの経営統合の協議も白紙となるなど、変革を求められる自動車産業のなかで出遅れてしまった印象がぬぐえない。


日産を立て直すための三つのキーワード 社内の混乱ぶりにも苦言を呈す

エスピノーサ次期社長は立て直すためのキーワードが三つあると語った。


一つは「スピード」。市場はダイナミックに変化し、地政学的な要因や、規制がめまぐるしく変化するなかで、機敏に対応するため開発期間の遅さを是正する必要があると説明。これまで新型車の開発に55か月かかっていたものをまずは37か月に短縮していくという。


二つ目は混乱が続いているなかで「経営の安定性」を挙げた。


そして最後の三つ目に挙げたのは「共感能力」。エスピノーサ次期社長によると「日産社内は共感能力が弱い」という。「人間は危機的状況に直面し厳しい状況になると、他人のせいにする。そうではなく、まずは他の人たちが抱えている問題を理解しなければならない」と日産社内の混乱ぶりについて苦言も呈した。


魅力あるクルマを適切なタイミングで 根源はカルロス・ゴーン元会長に行き着く

日産の業績不振の要因の一つは、市場のニーズにかなうクルマを適切なタイミングで投入できなかったことも大きい。


例えば北米地域では価格の高さやインフラ不足などからEV=電気自動車が伸び悩んでいる一方、ハイブリッド車が急成長している。しかし日産はこの地域でハイブリッド車が出せず他社と比べて在庫を抱え、大幅な奨励金をつけてなんとか売りさばいているという有様だ。


魅力あるクルマを適切なタイミングで市場に投入するのは、まさにエスピノーサ次期社長がこれまで担当していた商品企画の領域だ。


これについてエスピノーサ次期社長は「開発を早くできなかったことは後悔している」と反省の弁を述べ、「大企業を変革するのは簡単ではない、決意を持って変えよう思っている」とこれからの改革に対して意気込んだ。


課題の多い日産自動車だが根源はカルロス・ゴーン元会長に行き着く。


「新車投入が長引き、売れるクルマがない」というのはゴーン時代の販売拡大施策を引きずっているのも一つの要因で、EVに重きを置き北米でハイブリッド車を軽視したのもゴーン時代の負の遺産とも言える。 


そしてゴーン元会長の逮捕以降、「意思決定の透明性を図る」として社外取締役が主導権をもつ取締役会が構築されたが、今回のホンダとの経営統合をめぐり取締役会のなかで思惑が錯綜。日産のある幹部は「自動車のビジネスを知らない人たちが取締役会の半数以上を握っていてうまくいくわけがない」と嘆いた。


持ち駒は内田体制下で進められていた新車戦略 社内の「共感能力」を高められるか

エスピノーサ次期社長は“ゴーンの呪縛”から日産を解放することができるのだろうか。


逆風のなかでの持ち駒は、内田社長体制下で進められていた新車戦略だ。2025年度は大幅な航続距離の改善を見込むEV「リーフ」の新型車が投入される。そして最大の課題である北米には、2026年度に高速走行時の燃費を最大15%向上させたハイブリッド車を投入する予定だ。


こうした内田体制のもとで用意した新車を投入しつつ、まだ全容が明らかとなっていないリストラ策をどう進められるかがエスピノーサ次期社長の当面の課題となる。


またホンダとの経営統合が白紙となり、宙に浮いてしまったパートナー作りも喫緊の課題となる。ホンダとは引き続き協業を進めているとした上で、エスピノーサ次期社長は「私はオープン。ホンダであれ他のパートナーであれ、パートナーと手を組むことによって日産の企業価値が上げられるのであれば議論する用意がある」とした。


社内の「共感能力」を高め、一丸でこの難局に立ち向かうことができるのか。Car Loverである次期社長に日産の未来が託されている。


取材:TBS報道局 経済部・梅田翔太郎
2013年入社。自動車・鉄鋼担当。学生時代は体育会ヨット部に所属し、一年の半分近くは洋上で暮らす生活を続ける。引退後は仕事と平行して母校で監督を務め、10数年ぶりにチームを全日本インカレに導いた経験も。趣味は博物館めぐりで担当業界の企業博物館を訪ねるのがライフワーク。


スマホのバッテリーを長持ちさせるコツは?意外と知らない“スマホ充電の落とし穴”を専門家が解説【ひるおび】
「パクされて自撮りを…」少年が初めて明かした「子どもキャンプの性被害」 審議進む日本版DBS “性暴力は許さない”姿勢や対策“見える化”し共有を【news23】
「誰も死なないという選択肢は考えられない」幼少期の虐待・ネグレクトの末たどり着いた両親の殺害 15歳の少年が逃れたかった「恐怖と束縛」


情報提供元:TBS NEWS DIG Powered by JNN

ページの先頭へ