
自民党総裁選が9月22日に告示され、各候補者の動きが活発化している。衆参両院で過半数割れという「少数与党」の中、特に注目されているのが【野党との連立の可能性】だ。
TBS政治部で野党の取材を担当している新田晃一キャップ、そして青木孝仁記者の2人とともに、連立のパートナーとして名前が挙がる日本維新の会・国民民主党、そして野党第一党の立憲民主党の思惑と課題を分析した。
総裁候補5人の連立へのスタンス 多くが前向きな発言
9月23日に行われた共同記者会見での、各候補者の連立に関する発言をまとめた。
・小林鷹之氏「スケジュールありきでも特定の政党ありきでもない。数あわせで連立をするということは本末転倒」
・茂木敏充氏「基本政策が一致する政党と連立の拡大目指す」
・林芳正氏「連立拡大というのは目指すべき方向」
・高市早苗氏「自公が基本。連立拡大目指し総理指名選挙までに精一杯努力」
・小泉進次郎氏「政策、基本理念の一致がある中でその先が見える。 期限を区切るものではない」
茂木氏、林氏、高市氏の3氏は連立拡大に前向きな姿勢を見せている。特に茂木氏は出馬会見で日本維新の会と国民民主党の名前を具体的に挙げ、連立の意向を強く示した。
一方、小泉進次郎氏は「政策・理念の一致を慎重に見極める」と述べ、「期間を区切るべきではない」としながらも、連立の可能性自体は否定していない。
小林鷹之氏は「数合わせで連立をすることは本末転倒」と最も慎重な立場を取っているものの、共同記者会見以降、徐々に連立に対して前向きな考えになっており、「野党との連立」は誰が新総裁になったとしても、重要なテーマであることは間違いない。
連立入りの可能性がある政党は?
自公政権と合わせて衆参両院で過半数を取れないと、自民党にとって連立するメリットはない。となると、連立を組む可能性がある政党は自ずと限られ、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党の3党のみとなる。
日本維新の会 “連立のハードルが最も低い”
「自民党との連立のハードルが最も低い」と言われているのが、日本維新の会だ。
その理由として
(1)党の勢いが低迷中で維新自体も交渉に前向きなこと
(2)自民党には大阪の議員が少ないので、大阪を中心に議席を獲得している維新とは選挙区調整が難しくないこと
が挙げられる。
吉村洋文代表もTBSの番組で「政策実現に向けての連立入りを排除せず」と発言しており、連立入りの可能性は否定しない姿勢だ。
そんな維新が連立入りの“絶対条件”として掲げるのが
(1)副首都構想
(2)社会保険料の引き下げ
の2つの政策の実現だ。
ここで自民党とうまく折り合いをつけられるのかが、今後のポイントになりそうだ。
候補者との関係性では、特に小泉進次郎氏との親密さが指摘されている。
小泉氏が万博を訪れた際には吉村代表自らが案内しており、新田記者は「小泉さんとは改革志向のところで共通点があり、おそらくシンパシーを感じているんだろう」と分析する。
一方で、党内には連立入りに否定的な意見も存在する。
特に大阪(を中心とした関西)以外の選挙区や比例区から当選している議員にとっては、連立入りすれば自民・公明との選挙区調整によって犠牲になる可能性があり、議員生命に関わる大問題だ。
さらに、連立入りによって党の存在感が薄れるリスクも指摘されている。
実際、過去に自民党と連立を組んで生き残った政党はほとんどないという歴史的事実もあり(自社さ連立政権における社会党とさきがけや、自自公連立政権における自由党など)、連立入りはまさに党の存続に関わる重要なテーマだ。
「政党はあくまでも政策実現の手段」として、党勢が弱まったとしても政策実現をすることが重要であると主張する吉村代表が、どこまで党内の意見をまとめることができるのかが注目される。
国民民主党 3党合意の実現を目指すも支援団体から反発が...
一方の国民民主党が“最低条件”に掲げるのは、去年12月の3党合意(自公国)の実現だ。石破政権では“約束を反故にされた”として「総裁が替わっても公党間での約束を守れるかどうか」を注視する姿勢。
物価高対策として「手取りを増やす」政策を一丁目一番地とする国民民主が求めるのは、3党合意の内容である以下の2つだ。
(1)「103万円の壁」引き上げ
(2)「ガソリンの暫定税率」の廃止
関係が注目される総裁候補としては、またも小泉氏の名前が挙げられた。
国民民主党の榛葉幹事長との面会後、小泉氏は「今までの人間関係なども生かしながら政策課題を前に進めていく。その中には国民民主党の玉木さんや榛葉さんもいらっしゃるのは当然のこと」と述べ、親密さをアピールしている。
ただし、国民民主の連立入りについては、支援団体である「連合」が最大の障壁となりそうだ。
連合の芳野会長は「政権の枠組みに入っていくのは連合としてはあり得ないという考え方は曲げられない」と明言しており、はたして支持率が低迷していた時代から支援してきた連合の意向を無視できるのか...連立入りに対して党内外で反発の声が上がるのは必至の情勢だ。
また、自民党側からの信頼不足という課題もあるようだ。
ガソリン減税の議論においても与野党から「主張に一貫性がない」「財源を度外視している」などと批判する声も上がっており、とある野党関係者は「国民民主は今の立ち位置を全く理解してない。今の自民党は国民民主に対する信用がゼロ」との厳しい指摘も聞かれる。
ただし、維新の連立入りが実現すれば、これまで「キャスティングボード」を握って交渉してきた国民民主党が蚊帳の外に置かれ、政策実現ができなくなる恐れもある。その焦りが国民民主を連立入りに向かわせる可能性も指摘されている。
立憲民主党の“最後の切り札” 存在感を取り戻せるか?
衆院では自民党に次ぐ150近くの議席を持つ立憲民主党だが、存在感が薄れているというのは避けがたい指摘だ。
去年の衆院選で躍進し、28年ぶりに予算修正を実現させ、さらに「熟議の国会」を掲げて重要法案を成立させたにもかかわらず、与党との個別政策交渉で注目された維新・国民民主に埋もれ、支持率が低迷している。
そんな中、今月就任した安住淳・新幹事長が立憲民主党の新たな動きを牽引しつつある。
安住氏は民主党政権下では財務大臣を務めたほか、長く国会対策委員長として国会運営を牽引しており、与野党に太いパイプを持つ重鎮だ。その影響力の強さから、永田町の一部からは「閣下」とまで呼ばれる存在となっている。
党内からは「安住幹事長でダメなら野党再編だ」という声も上がっており、維新の藤田共同代表からは「超攻撃的な布陣」と評された。
安住氏は就任後早速、立憲が7月の参院選でも掲げた「給付付き税額控除」実現のため、与党との協議体を設置したほか、各党幹部との会談を重ねるなど精力的に動いている。
そんな安住幹事長は連立入りの可能性について—―
「今茂木さんが日本維新の会や国民民主党などと言っているのは、ライバルだと思っていないから。補完できて、そして言ってみれば自分たちの政権の延命のために使えると思うからあんなことを言っている。我が党はそういう政党じゃない。」
連立の可能性をきっぱりと否定した。
ただ一方で、自民党との関係については「比較第1党・第2党としてメリハリをつけてお付き合いをしたい」と語っており、間違っていると判断する政策には厳しく対立しつつも、「給付付き税額控除」などの重要政策については自民党とも前向きに取り組む姿勢を示している。
ここまで見てきたように、連立の裏には各党の党勢拡大の思惑があり、国民のための政策実現がどこまで優先されるかが問われている。
連立についての最終判断は10月4日に選ばれる自民党の新総裁が下すことになる。
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