E START

E START トップページ > スポーツ > ニュース > バレー女子日本代表、34歳・島村春世「仲間が輝く“道”をつくる」“エゴばかりだった”意識を変えた瞬間【実況席から見える世界】

バレー女子日本代表、34歳・島村春世「仲間が輝く“道”をつくる」“エゴばかりだった”意識を変えた瞬間【実況席から見える世界】

スポーツ
2026-07-10 22:20

バレーボールの世界三大大会のひとつ、ネーションズリーグ(VNL)の予選ラウンド第3週日本ラウンドが開幕した。2大会ぶりのメダルを狙う女子日本代表は、上位7チームと開催国がトーナメント形式で戦う決勝ラウンド進出をかけ、通算7勝3敗の6位につけている(10日現在)。再び表彰台を狙う選手たちの素顔を、自身も中高でバレー部に所属(セッター)し、入社直後の98年から現場取材を重ねてきた、実況のTBS新タ悦男アナウンサーがリポートする(第10回)。


【写真で見る】島村選手と女子日本代表


ベテランの本音

「私は、自分が決めることより、仲間が決める一球の方が嬉しい」


その一言こそが、島村春世(34)という選手を表している。


長く代表に呼ばれてきた。 それでも、世界大会でメダルを取ったことはない。 悔しさの方が多い。 ただ、その悔しさが次の目標へ向かう原動力になっている。


“仲間の一球が嬉しい”という価値観は、 この積み重ねた悔しさの上に立っている。
彼女のバレーボールの中心には、いつも自分とともに“自分以外の誰か”がいる。
その視線は、いつも仲間へ向いている。


日本に戻る新しいシーズン。
慣れ親しんだ日本だからこそできることがある。


「もう1回、自分自身の『フィジカル』を、基礎から見つめ直す大切な機会が得られた」


15年を過ごしたNECを離れ、韓国リーグへ。 個の力が強くても、チームで戦わなければ勝てない—— その事実を改めて突きつけられた1年だった。個を磨きながら、チームを引き上げる。代表でも紐づく、その挑戦の舞台として、群馬グリーンウイングスがあった。 


「新天地である群馬をリーグ優勝に導けるように、自分のコート上でのプレーでも背中で引っ張る姿を見せてはいく。でも徹底的に自分の体をケアできる時間もある。フィジカルを新シーズンで徹底的に強化しつつ、次の、ロサンゼルスオリンピックに向けての完璧な準備へとつなげたい。大切な『土台を作る1年』にしたい」


それは“個人のため”から導き出した答えではない。


「フル代表の強度で、最速のテンポで動き続けるための『本当の体力』が、今の自分の身体だと落ちているなと、コートの中で、肌でハッキリと感じている」


世界トップの“超高速のスピード”。 


その一歩目の負荷が、年齢とともに重くのしかかる。


本音を吐露する。


「リアルなことを言えば、今の私のフィジカルだと、国際大会の『2試合連続(連戦)で最初から最後までスタメンで出続けるスタミナ』は無い」


現状を受け入れる。
だからと言って手をこまねくわけではない。


「一人のバレーボール選手としては、『全試合、最初から最後までコートの上にレギュラーとして立ち続けたい』」


意地がある。


「だからこそ、体力的な部分でも、もう1回ゼロから徹底的に見つめ直すための、これ以上ない『最高の良い時間』にしようと、自分の中で強く決めている」


“仲間のために戦う”

鍛え直す身体も、自分一人のためではない。
それは、“仲間のために戦う”という、島村春世のバレーボールフィロソフィー。


「バレーボールという競技は、コートの中の『お互いの徹底的な助け合いのスポーツ』。自分のスタッツ(数字)がいくら良くても、最終的にチームが勝たなきゃプロとしては何の意味もない」


ミスが続いた時、仲間に助けられて勝たせてもらった試合が どれだけあったか。 その経験こそが、島村春世の原点にある。


「『助けてもらった分、今の代表に、何か特別なものを返せているのかな?』 そう自問した時、 『まだまだ自分の力は足りない』と思う。だからこそ、 偉そうに“ベテランの存在感”を出すのではなく、 もっと成長し、もっと仲間のために働きたい」


チームへの想い。


「誰か一人のスパイカーの調子がダメでも、 周りの5人が必死にカバーすればいい」


「逆に自分がダメなら、 『ごめん、今日ブロードのタイミングが全然ダメ。 最低限ブロックの壁だけは絶対に閉じるから、 ちょっと後ろのレシーブ助けて・・・!』 って素直に言えばいい」


弱点を補い合える“クリアなコミュニケーション”。 言葉を交わさなくても分かり合える“本物の絆”。 それが今の日本代表にはある。


「最年長として、 その絆をつなぐ“潤滑油”になりたい。」


全てはチームのために。


「コートの上のメンバーのみんなが、何の不安もなく『生き生きとプレー』して、自分の良さを100%出してくれればそれで一番いい。そこの『周りの選手をいかに生き生きさせるか』っていうところを、私はミドルとして一番コートの中で意識している」


コート上での意識を変えた瞬間

役割を認識した機会がある。


若い頃は自分のエゴの処理が難しかった。リオ五輪の後、NECで大スランプに陥った。 スタメンに立てず、ベンチ外で過ごした苦しいシーズン。


「結局あの頃の私は、『コートの上で“自分が、自分が、自分が!”っていう、自分中心の狭いエゴばかりが前に出ていたんだな』って気づいた。『チームを勝たせるために、自分が今ここで泥臭くハードワークをやらなきゃいけない』というプロとしての責任感というより、ただ『自分が真ん中からクイックやブロードを決めたい!』『自分が世界を相手にシャットアウトして止めたい!』と、小さな自我が自分の真ん中に出ていたせいで、視野が狭く、体との連動が狂い、パフォーマンスがどんどん下がっていったんだなと。ハッと気づいたんです」


「自分のこれまでのキャリアの年齢で言うと、20代の後半に差し掛かったタイミングで、周りを活かそうっていうチームへの気持ちが、自分の中でより一層強くなりました」


プレーへの意識、アプローチが変わる。


「大スランプの後にコートに戻った時に、自分が『おとり』として周りを生かすプレーをより意識したんです。サイドにマークが1枚もいない『完全なノーマークの状態で、最高のバックアタック(パイプ攻撃)を決めてくれた』。 あるいは、自分が全力でおとりとして跳んだことで、逆サイドのレフトのアタッカーがブロック1枚の有利なシチュエーションでスパイクを決めてくれた。 『自分がボールに1ミリも触っていなくても、自分の“おとり”の動きによって仲間がもぎ取った最高の1点』を見た瞬間に、『自分が直接スパイクを決めるよりも、何倍もめちゃくちゃ気持ちいい!!』って、心の底からシビれるくらい感動したきっかけが、自分の中に強くあった。 多分、あの瞬間から、自分のコートの上での意識っていうか、自分1人のスタッツを追うだけじゃなくて、チームの『みんなの動き、みんなの表情』を、広く強く意識し始めたんだと思います」


プロとしてすべきこと

視点は変わった。でも中心軸は、揺らがない。


「自分の点数と、周りを活かすことの比重は?と聞かれたならば、私の頭の中では完全に『50対50(半々)』。ミドルの自分自身のクイックやブロードの攻撃力がコートの上で、相手にとって脅威になっていない限りは、自分がいくらおとりとして跳んだって、相手のブロックは1ミリも私に釣られてくれないっていう絶対的な構造がある。だから、プロとして最低限、自分のセンターラインとしての『クイックを決める仕事』は100%全力のクオリティでやる。それを自分の軸としつつ、同時にその裏の引き出しとして『周りのアタッカーも最高に活かしつつ』なので。そこの比重が大なり小なりになっちゃって、どっちか一方だけに偏ってしまうと、それはミドルとしてはちょっと戦術として違う」


「チーム全体の戦術のバランスを後ろから見なきゃいけないベテランの年代であっても、もし周りに気を遣うあまり、『自分自身のクイックの技術』がおろそかになって決定率が落ちているんだとしたら、そこはプロとして絶対に自分で調整していかなくちゃいけない。『周りを見る前に、まずは自分のクイックをしっかり100%上げてから、チームのためにやっていかなきゃ』って自分を律しなきゃいけない。 逆に、自分のクイックの調子がめちゃくちゃ上がりすぎて絶好調なのに、チーム全体が崩れていることに気づかずに「自分だけのバレー」になってチームのことをおろそかにしているのであれば、『今のチームのこの苦しい状況に対して、ミドルの自分が声をかけて関わっていかないと』って、自分を戒めていかなきゃいけない」


常に客観的で、冷静で、安心感を与える存在。


「プロのアスリートである以上は、まずは『自分自身の100%のパフォーマンスをコートの上に出し切る』っていう絶対的な大前提は、自分の中で最低限死守している。だから、あんまりどっちが「大なり小なり」とか比重を分けるんじゃなくて、『自分の得点力』も『周りを活かす包容力』も、もう両方を『=(イコール)』の100%のマックスの力で、頑張っていきたい」


今の自分にできること、今の自分にしかできないこと。


「今の私の年齢(ベテランの年代)だからこそ、コートの中で余裕を持ってそれが高いクオリティでできるはず。これから代表を背負っていくような『若い選手に関しては、チームのことなんてこれっぽっちも気にする必要はなくて、100%自分のことだけを中心に考えて、“セッター、今の苦しい場面でも私にトスを上げて!私が決めてやる!”って、それだけを望んでコートで戦ってほしい』。私は若い子たちに対して、むしろそういう強いエゴを望んでいるから。 若い子たちが自分のパフォーマンスを出すことだけに1点集中して、コートの中で一番暴れまわりやすいような『最高の環境(コート)』を後ろから作ってあげるっていうのが、私のようなベテランの“本当の仕事”」


「チーム全体を見ると、仲間を思う気持ちっていうのが、人一倍、他の誰よりも強く持たなきゃいけない。自分が代表の中で多くの修羅場を経験させてもらった『ベテランとしての役割』、歳を重ねたからこそ、視野に余裕を持ってできるようになったのかなと思っている。これが、コートの上の『島村春世』のすべてです。『島村春世』という一人のミドルの生きる道なんです」


仲間が決める一球を、 誰よりも喜べる選手でありたい。
その想いは、これからも変わらない。


仲間が輝く“道”をつくりながら。
島村春世は、もう一度、世界の頂へ向けて歩き始めている。


「蚊の10倍」猛烈かゆみが襲う 水辺にいる“スケベ虫”に注意
「コバエが、料理に一瞬だけ止まってしまった!」その料理、衛生的に大丈夫?専門家に聞いた
「少女は捨て駒」小5で初めてパパ活…非行が低年齢化 “居場所”を求め公園をさまよう少女たち【報道特集】


情報提供元:TBS NEWS DIG Powered by JNN

ページの先頭へ