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特撮のプロ・田口清隆がアニメ初挑戦 「クレバテス」で挑んだ“実写とアニメの化学反応”とは

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2025-07-02 08:40
特撮のプロ・田口清隆がアニメ初挑戦 「クレバテス」で挑んだ“実写とアニメの化学反応”とは
”特撮のプロ”田口清隆監督がアニメ初挑戦。(画像提供:LINE Digital Frontier)
 「LINEマンガ」で連載中の『クレバテス-魔獣の王と赤子と屍の勇者-』が、7月2日より待望のアニメ化。しかもメガホンをとるのは、「ウルトラマン」シリーズや戦隊シリーズなど特撮界で活躍する田口清隆で、アニメ監督は初めてとのこと。建物崩壊シーンをミニチュア特撮で表現するなど、“特撮・実写出身”ならではのこだわりが詰め込まれたという同作品。田口清隆監督と原作者の岩原裕二先生に、制作の裏側や作品への熱い想いを聞いた。

【漫画】魔獣に育てられる人属の赤子、屍の勇者…想像を超える第1話を読む

■実写出身の強みが炸裂、戦闘シーンの迫力は原作者のお墨付き

 原作マンガ『クレバテス-魔獣の王と赤子と屍の勇者-』は、2020年8月より「LINEマンガ」で連載がスタート。王に選ばれた13人の勇者たちは、伝説の剣を手に魔獣王クレバテス討伐へと向かう。しかしその蛮勇が人属を滅ぼす危機を招き、唯一の希望は魔獣王に託された一人の赤子だった――というストーリー。7月2日よりスタートするアニメでは、アリシア役の白石晴香をはじめ、クレン役を田村睦心、魔獣王クレバテス役を中村悠一が担当するなど豪華なキャスト陣に、放送前から注目が集まっている。

――田口監督といえば、特撮のイメージが強いですが、今回アニメーション作品を手掛けることになった経緯を教えてください。

【田口監督】 実はアニメの監督をしないかという話は何度かあったんですが、なかなか実現しませんでした。今回は、シリーズ構成の小柳啓伍さんに「クレバテス」の話が来て、彼が僕を推薦してくれました。

――小柳さんは田口監督のどんな点を評価されたのでしょうか?

【田口監督】 「怪獣がたくさん出るし、戦争ものだし、田口監督の得意分野だからいけるだろう」と…。原作を読んだら、化け物もアンデッドも怪獣も出てきて、僕の大好きな要素が詰まっていました。ヒロインがアンデッドの勇者というのも、王道なのに変化球で面白そうだと思い、引き受けることにしました。

――岩原先生は、ご自身の作品がアニメ化されるにあたり、特撮で有名な田口監督が手掛けると聞いた時、率直にどのような感想を持たれましたか?

【岩原先生】 最初は「どうなるのかな」と思いました。もともとアニメ監督とのお付き合いもそれほどなかったので、実写監督だからという先入観はなかったのですが、実写の監督がどのようにアニメーションを仕上げていくのか、期待と不安の両方がありました。

――その不安は、どのように解消されていきましたか?

【岩原先生】 コンテや脚本を拝見した段階で、原作をとても大事にしてくださっているのが伝わってきました。その時点で、かなり信頼できると感じました。

――アニメ化にあたり、当初のイメージと完成した映像とで、特に驚いた点はありますか?

【岩原先生】 戦闘描写がかなり追加されていた点ですね。ハイドラートがクレバテスに襲撃されるシーンや冒頭のアクションなど、実写の監督ならではの迫力を強く感じました。

■「予測できない面白さがあるのでは?」 “ミニチュア特撮”の裏側

――1幕の建物の崩壊シーンで、ミニチュア特撮が使われていました。これは企画当初から考えていたのでしょうか?

【田口監督】 原作の見開きのカットがすごく印象的で大好きだったので、これを特撮でやれたら最高だな、と思ったんです。提案したら制作の皆さんも「面白いんじゃないか」と言ってくれました。手描きやCGも考えましたが、特撮ならではの予測できない面白さがあると思い、初期の段階で提案しました。

――実際に完成したシーンを見て、岩原先生はどう思われましたか。

【岩原先生】 実写のミニチュアを使った撮影というのは後から知ったんです。でもあまりにも自然な仕上がりだったので驚きました。そして、迫力がありました。破片の飛び方など、ミニチュアを使ってよくここまで狙い通りに作れたなと。想像もつかない領域です。

――1幕の崩壊シーンの撮影は大変でしたか。

【田口監督】 初めから壊した状態で組み合わせて、後ろから引っ張って飛ばしているので、実は何回も撮り直しができるんです。3、4回飛ばして、一番良いものを選びました。信頼している特撮チームの皆さんのおかげです。アニメーターや美術監督の方々も特撮好きが多く、現場に見に来てくれて、みんなで引っ張ったりして楽しい現場でした。

――特撮の技術を使ってアニメ化されたことにより、今後の作品作りに影響はありそうですか?

【岩原先生】 影響は必ず受けると思います。シーンを描く時に、監督が作られた映像を思い出して、「次はこういう風に描いてみようかな」と考えるなど…。魔獣の扱いなどは、監督の方がはるかに丁寧なので、逆輸入したいですね。

――田口監督にとって、岩原先生の原作は特撮好きの心に響くものがありましたか?

【田口監督】 原作は特撮好きにはたまらない、宝庫のような作品で、やりがいを感じました。僕は80年代の冒険映画が好きで、手作り感のあるものが好きなんですが、「クレバテス」の原作からもそういう風情を感じました。ドラクエ3世代でRPGも好きなので、先生がそれをマンガに反映していると聞いて、そこも共感しました。

――本作のようなRPG的要素のある作品と特撮の親和性についてどうお考えですか?

【田口監督】 高かったと思います。ただ、こういうファンタジー世界観を日本で実写化するのは少し難しく、実写監督としては手を出せない領域でした。でも、好きな世界観ではあったので、今回アニメで、今の自分の感覚でやれたのは、すごくやってみたかったことでした。

――岩原先生は、アニメ化された本作をご覧になって、特撮とご自身のマンガの親和性をどのように感じましたか?

【岩原先生】 兵隊がたくさん出るシーンなどは、実写的な音響や芝居、動きの重みがすごく生きてくるだろうなと、出来上がったものを見て感じました。魔獣のシーンもそうですし、全体的にきちんと重みが出ていると思います。1幕のハイドラートがクレバテスに襲撃される前の街の喧騒、カンカンカンという音なども、すごいなと思いました。

――1幕以降の展開で、特撮的な見どころがあれば教えてください。

【田口監督】 建物の破壊描写はもちろんですが、戦闘シーンの描き方ですね。原作で印象的なカットは、そのカットをそのまま描きたい。でも止め絵ではないので、その前後をすごくかっこいい動きで、そのカットがより印象的になるように作っています。原作を読んでからアニメを見ても、アニメを見てから原作を読んでも、知っているカットが出てくるはずです。そういった行き来も、楽しんでいただけたら嬉しいです。

■魔獣が赤子を育てる”発想の源は、自身が父親になった瞬間

――本作品は、魔獣が人間の子どもを育て、勇者は“屍の勇者”…と、なかなか予測不可能な物語だと感じました。岩原先生は、どのような経緯で本作を描こうと思われたのですか?

【岩原先生】 マンガを描き始めてからSFっぽい作品が多かったのですが、ファンタジーものは昔から大好きでした。でも、描いたことは一度もなかったので、一度ちゃんと描いてみたいなと。自分の好きを詰め込んでファンタジーをやりたいと思っていた時に、たまたま子供が生まれたタイミングと重なったので、赤ちゃんを出してみようと考えて、物語を作っていきました。

――キャラクター設定はどのようにされているのですか?

【岩原先生】 物語を作ってキャラクターを出す時に、自然に浮かんできます。この人はこういう人物像で、こういう口調で、こういう性格だったら物語が盛り上がるな…などバランスを考えながら作っています。主要キャラのざっくりとした設定は考えますが、最初にカチッとは決めず、ストーリーが動いていく中で、それに合わせていく感じです。

――アリシアは、初めから不憫なキャラにしようと思われたのですか?

【岩原先生】 はい(笑)。不憫だけれども、それを乗り越えて活躍するポジションのキャラクターにしようと考えました。

――アリシア役の白石晴香をはじめ、クレン役を田村睦心、魔獣王クレバテス役を中村悠一が担当など、豪華なキャスト陣になっていますが、キャスティングはどのように進められたのですか?

【田口監督】 テープオーディションの段階で、普通なら来ないような方々がたくさん応募してくださいました。本当に潤沢な中から選ばせていただきました。作品の指針として「アリシアは主役。不幸な目に遭うが、それを乗り越えていくことが気持ちいいアニメにしたい」ということを伝えていましたが、白石さんの声は芯が強く、でも可愛らしさもあって、まさにアリシアにぴったりだと感じました。

――実写のキャスティングとアニメのキャスティングでは、視点は異なりますか?

【田口監督】 はい、それはそうでしたね。声だけで役を勝ち取っている声優さんたちは、本当にすごいなと。正直、実写しかやっていなかった頃は分かっていなかった部分がありました。今回、俳優の橋爪淳さんや、普段一緒にやっている実写の俳優さんなどにも参加してもらいました。実は、1幕の戦闘シーンの兵士たちの声は、陸上自衛隊出身の俳優たちが担当したんですよ。実写出身ならではのキャスティングで、化学反応を期待しました。

――お二人にとって、特に「推し」のキャラクターや注目してほしいキャラクターはいますか?

【岩原先生】 あえてメインキャラを除けば、途中から出てくるナイエというキャラクターが使いやすくて好きです。彼女も結構苦労するんですが(笑)。そういう状況でありつつ、魅力的な重要ポジションに持っていくのが描いていて楽しいです。

【田口監督】 原作を読んでいて最初に推しになったのはネルルです。本当に可哀想な子なので、けなげに頑張っている姿を応援したくなります。ただ、作品をやっていく上で最終的に一番好きになったのは、月並みですがアリシアですね。アリシアを中心に、僕がアリシアを愛していかなければダメだ、という気持ちで制作していました。

――最後に、これからアニメを見る方、そしてアニメをきっかけに原作に触れる方へメッセージをお願いします。

【岩原先生】 アニメを見て興味を持っていただけたら、もちろん原作も読んでほしいです。自分の好きを詰め込んで物語を作っているので、ぜひ楽しんでいただけたらと思います。アニメも最後まで見ていただけると嬉しいです。

【田口監督】 実写をやっていた人間がアニメに来て一番感じたのは、ワンカットに対するスタッフの皆さんの関わり方の密度の濃さです。ワンカットワンカットにものすごい人数の情熱が込められています。今回の「クレバテス」のアニメチームは本当にクオリティが高く、情熱を持って密度濃い絵を描き続けてくれています。その密度、ディティールを最後まで楽しんでいただけたら嬉しいです。

取材・文/磯部正和

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