自民、公明、日本維新の会の3党が高校授業料の無償化で合意しましたが、何がどう変わるのか、解説します。
【画像を見る】来年4月から支援される授業料そして中学受験者数の増減
「公立の約4倍」私立高校に通う生徒の家庭に恩恵
まず現在の制度ですが、授業料支援は世帯の所得に応じて「2階建て」になっています。
世帯年収910万円未満の家庭には、公立私立を問わず「1階部分」の11万8800円が支給され、年収590万円未満の世帯で、私立に通う場合に「2階部分」が加算されています。(上限は39万6000円)
今回、合意された「高校無償化」と謳われる制度では、所得制限を取り払い、私立加算については上積みし1、2階合わせて45万7000円まで支給します。
この額は全国の私立高校の年間授業料の平均ですが、これを超える額については各家庭が負担します。
これによって大きな恩恵を受けるのは私立高校に通う生徒の家庭。
生徒一人につき公立高の4倍にあたる支援金を受けられることになるのです。
大幅に縮まる“授業料の差” 懸念されるのは公立の「定員割れ」
公立高校は授業料の安さが魅力。
一方、私立高校は授業料が高い代わりに独自の教育方針や、中高一貫から系列の大学への内部進学枠、施設設備の充実度などが魅力となっていました。
授業料や教材費、塾代などを合わせた「学習費」は公立の場合は、生徒一人当たり平均約60万円ですが、私立は103万円と大きな開きがあります。
今後、公立と私立の学費の差が大幅に縮まることで、私立を諦めていた生徒の選択肢として、人気を集めそうです。
そうすると懸念されるのが公立の定員割れです。
中学受験が「急増」 専門家「今後、小学生からの塾通いが増える可能性」
国より一足先に去年から私立高校に通う生徒に約48万円あまりを支給していた東京都では、これまで1.3倍前後で推移していた都立高校の平均倍率が今年は1.20倍に急減しています。
また同じく去年から63万円を上限に段階的な私立高生への支援も始めた大阪府では、「中学受験」が急増したことが業界に驚きをもって受け止められました。
関西の受験事情に詳しい教育事業会社「アップ」の吉田さんによると、少子化の流れの中で、今年、京都や兵庫では私立中学の受験者数が去年に比べ減っていますが、大阪は逆に7.1%も増えたといいます。
「高校で授業料がかからないなら、少し無理してでも中学から私立に入れた方がいいと考える親が増えた。今後、小学生からの塾通いが増える可能性がある」といいます。
“新たな受験戦争”につながる可能性
実際、2010年の民主党政権時代に全国で無償化が始まった公立高を見てみると、子ども一人にかかる学習費の総額は、無償化直後は40万円弱に減りましたが、その後、塾代などが増えていき、23年度には約60万円と、無償化前より高くなっています。
データを精査した慶応大学の赤林教授(教育経済学)は「私立の授業料を無償化しても、浮いた分を親が塾代に回したり、学校側が授業料以外の費用を上げたりして、結局家庭の教育負担は減らない可能性がある」と指摘します。
教育格差を是正し、子育て世帯への支援を強化するためとして導入される無償化ですが、フタを開ければ新たな受験戦争につながってしまうのでしょうか。
(サンデーモーニング 2025年3月2日 放送)
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