
緊張が続く中東情勢を背景に、3月19日に控える日米首脳会談への注目が高まっている。トランプ大統領は高市総理に何を要求するのか。戦争の長期化も懸念される中で、この戦争の本質は何なのか?終結への道筋はどのように見えてくるのか?
【写真を見る】トランプ氏は高市総理に何を迫るのか 日米首脳会談で警戒される3つの要求 戦争「終結」のシナリオとは イスラエル・イラクの現地記者が語る【edge23】
イスラエル・イラクからの現地中継を交えながら、TBSの歴代中東支局長3人と政治部・外務省キャップが、日本外交の行方と緊迫する中東情勢の深層に迫った。
日米首脳会談で浮上する3つの可能性
3月19日に予定される日米首脳会談まで、あと1週間。ホルムズ海峡の事実上封鎖によりエネルギー不安が現実化してくる中、トランプ大統領が高市総理に何を要求してくるかが焦点となっている。
外務省キャップのTBS政治部・大崎雅基記者は、今回の日米首脳会談について「関税や中国の話がメインで、イランの話は実はそこまで大きくないんじゃないかという見方が広がっている」などと分析しつつ、外務省内ではいくつかの要求可能性について想定問答の準備が進められているという。
1つ目の要求は「ホルムズ海峡の機雷除去」。アメリカのメディアは、イランがホルムズ海峡に数十個の機雷を敷設し、今後さらに数百個の敷設が可能だと報じている。
ただし、これはアメリカ政権もイラン側も公式には認めていない情報だ。仮に、機雷が既に敷設されているとしても自衛隊による機雷除去には「存立危機事態」の認定が必要となる。これは日本と密接な関係にある他国が攻撃を受けた結果、日本の存立が脅かされる事態を指し、認定されれば集団的自衛権の行使が可能になる。ただ木原官房長官は11日の会見で「存立危機事態に該当するといった判断は行っておりません」と明言している。
元JNN中東支局長・秌場聖治記者は「判断に迷う状況であれば、(掃海用の艦船は)出さないだろう」とし、日本のエネルギー備蓄状況からも、いますぐに日本が「存立危機事態」に陥る可能性は低いとみられる。
2つ目は、「タンカー護衛の後方支援」。トランプ大統領は安全な航行に必要であれば「アメリカ軍と同盟国が通過の際に護衛する」と表明している。この場合、日本には「重要影響事態」の認定が求められる。大崎記者は「こちらもまだすぐに認定はされない」としつつ、外務省内でも意見が分かれているという。ある幹部は「アメリカの後方支援を具体的に検討してる状況ではない」と述べる一方、別の幹部は「日本もただ乗りという訳にはいかない」と遅かれ早かれ後方支援の要求が来るのではないかと警戒感を示している。
3つ目は「資金協力」。資金協力の仕方については、湾岸諸国の復興支援を求められる可能性が考えられるが、現時点では、トランプ大統領が紛争後の復興まで視野に入れているかはわからない。また通常、復興資金は国連経由で拠出することが多いため、アメリカに要求されたからといってすぐに資金を出す可能性は考えにくいという見方だ。
「存立危機事態」や「重要影響事態」に認定されるには、国会の承認や閣議決定が必要になるため、会談で求められたとしてもすぐに返事ができるわけではない。しかし相手がトランプ大統領という点を踏まえて大崎記者は「何があるかわからない」と話す。また「高市総理のリーダーシップで押し通す可能性もゼロではない」と話す幹部の声も聞こえているという。
「これはイスラエルの戦い」――イスラエル現地取材で見えた戦争の本質
イスラエル・テルアビブで取材を続ける村瀬健介記者は、現地の緊迫した状況を生々しく伝えた。「一日に何度も何度も警報が鳴る」といい、その度にシェルターの中に避難する日常が続いているという。
イスラエル国民の戦争に対する反応として、村瀬記者は「世論調査によると八割を超える人がこの戦争を支持している」とした上で、一方で「この戦争に対する支持がそのままネタニヤフ政権に対する支持になっているかどうかというのは、また別の問題」と指摘。現地の複雑な情勢が浮かび上がった。
国民の様子にも変化がみられるようだ。当初は避難シェルター内でも「連帯感」や「高揚感」が感じられたが、村瀬記者は「ここ数日の避難シェルターの中の雰囲気はちょっとずつ変化してきている」と述べる。例えば扉の開閉をめぐって言い争いが始まるなど、殺伐とした空気が流れることもあったといい、終わらない攻撃が住民たちの心理に及ぼす影響を語った。
イスラエルにとって、“レジームチェンジ“、イランの体制変更を目指したこの戦争は、ネタニヤフ首相が開戦直後の声明で「四十年来の夢だった」と述べたように、「代償をはらってでも価値のある戦争」である。
しかし一方で、アメリカの戦争に対する温度は異なっている。トランプ政権にとっては出口が見えにくくなっている中で、秌場記者はこの戦争の性格について「アメリカのヘグセス長官は繰り返し、これはアメリカの戦争だ、と強調するが、イスラエルがアメリカを引きずり込んだと見るのが妥当」と述べ、イスラエルの戦争だとの見解を示した。
戦争の終結は見えるか――「お互いが勝利宣言」するシナリオ
イランの隣国イラクで取材を続ける現JNN中東支局長・増尾聡記者は、戦争終結の兆候について「残念ながら感じません」と率直に述べた。イラン新指導者にモジタバ師が選出されたことでこれまでの路線を継承していく見方が強く、また「さらに強硬になるのでは」との見方もある。対話への道筋は見えてこない状況だ。
ネタニヤフ首相は11日、イラン国民に向けて「これは一生に一度のチャンスだ」として蜂起を呼びかけたが、「国民が立ち上がって、体制転換の一役を担う、そういった動きはまったく見えてこない」と増尾記者は語り、アメリカやイスラエルが期待した動きはなく、事態は膠着している状況だ。
それぞれの「勝利」の定義を見ると、イランにとっては「負けなければ勝ち」であり、秌場記者は「今の体制が存続すれば、『大悪魔アメリカと小悪魔イスラエルの猛攻を耐え忍んだ』という勝利宣言になりうる」と語る。
アメリカは当初の体制転換目標から軌道修正し、
(1)イランのミサイル能力の壊滅
(2)海軍力の壊滅
(3)未来永劫核兵器を持てないようにする
(4)代理勢力による領土外への手出しをできないようにする
4つの目標を掲げている。トランプ大統領がこれらの目標を「達成した」と宣言すれば、「勝利」として戦争から手を引く可能性がある。
一方、イスラエルは“レジームチェンジ“が宿願であり、それを達成してこそ「完全勝利」だが、現状、実現は難しい。
イラン国内の声については、現体制の存続を願う声や、体制が変わることを望む声など、多様な声があるのは大前提、とした上で「アメリカやイスラエルが期待したような、国民から、内側からの動きが起きていないということは頭に入れるべき」と増尾記者は指摘する。いまの体制はそれほど弱っておらず、(たとえ蜂起しても)暴力によって弾圧されるのが目に見えている、というのが多くの国民の感覚ではないか、と推測される。
秌場記者は「今後、アメリカとイランがそれぞれ「勝った」と言い張って事態を収める、というのは一つのありうるシナリオ」と分析する。しかし、イスラエルがそれで満足するかは不透明であり、イランの体制転換が起きなかった場合、何年かに一度、大規模な衝突が繰り返される、かつてハマスとイスラエルの間で起きていたようなサイクルがイランとイスラエルの間でも繰り返される可能性も考えられるという。
アメリカ、イラン、イスラエル、3者それぞれの思惑が入り乱れている今回の戦争。ただ最大の被害者は、昼夜問わず行われる爆撃におびえ、時に巻き込まれて命を落とす両国の民間人ではないだろうか。先行きが見通せない戦争の先に、果たして何があるのか。為政者の思惑に国民が犠牲になることは、これ以上あってはならない。
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