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原発がテロリストに攻撃されたら…標的となる使用済み燃料チョルノービリの66倍【報道1930】

海外
2026-03-13 16:28

東日本大震災から15年が過ぎた。被災地に爪痕は今も残り、被災者の心の傷を癒すには15年は短かすぎる…。中でも福島県は地震と津波に加えて史上最悪の原発事故に見舞われ、今も避難者は2万人を超える。そして廃炉に向けた事故処理は遅々として進まない…。


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だが、この15年の間に原発を巡る社会のスタンスはかなり変わった。


福島第一原発の未曽有の事故を受け時の民主党政権は「2030年代に“原発ゼロ”」を目指した。これにドイツ、ベルギー、スイスなどが同調し、世界は“脱原発”に舵を切る…。ところが時が経つにつれ、世界が“脱炭素”を標榜すると原発の必要性が浮上。“原発の復権”だ。AIの普及による電力の需要もこれに拍車をかけた。岸田政権は「原発を最大限活用」と謳い、EUのフォンデアライエン委員長は今週「原発縮小は戦略的誤り」とまで言った。


“脱”と“復権”どちらかに振り切ることは容易ではない中で、アメリカとフランスという2つの原発大国の現状から日本がとるべき原発政策を考える。


これを取り入れていたら福島の事故は防げたと思う

アメリカでは9.11同時多発テロの教訓で、航空機の突入対策を原発に義務付けた。『B.5.b』と呼ばれるもので、破壊工作や電源喪失時に離れた場所で原子炉や燃料プールを冷却できる設備を準備しなければならない。


実は浪江町津島地区の住民訴訟で原告側の証人となった盛岡大学の長谷川学長は、日本の原発が『B.5.b』を取り入れていれば福島の事故は回避できたのではないか、と証言している。


東日本大震災が発生する以前の2006年と2008年、経産省の『原子力安全・保安院』はアメリカに赴き『B.5.b』の説明を受けていたとされる。それなのに日本は何故『B.5.b』を取り入れなかったのか…。


原発事故当時、政府に原発政策の助言を与える原子力委員会の委員長代理を務めた鈴木達治郎氏に聞いた。


元原子力委員会委員長代理 鈴木達治郎氏
「日本では過酷事故は起きないという前提だった。過酷事故のための対策は取らなくていい。それは電力会社の自主規制でいいと…。(―――過酷事故は起きないという前提をおかしいと思わなかったのか?)ず~っと前70年代の伊方原発訴訟というのがあって、その時政府側の証人だった科学者が『事故の確率はゼロではないが規制をしっかりすれば事故は起きない』ということで今のままでいい…、それくらい日本のシステムは完璧だと…。地元住民に『事故は起きない』って説明しているから、裁判で『事故が起こるかも』なんて言ったら地元の反対を受けるから政府としては言えなかった。これが安全神話を作ってしまったという歴史…」


もし『B.5.b』を取り入れていたら福島の事故は防げたと思うか改めて鈴木氏に聞いた。


元原子力委員会委員長代理 鈴木達治郎氏
「防げたと思います」


さらに原子力の平和利用やエネルギー安全保障が専門の小林祐喜氏も言う。


『笹川平和財団』 小林祐喜 主任研究員
「これは痛恨だったと思います。『原子力安全・保安院』が聞いていながら何故東京電力をはじめ電力事業者に情報供与しなかったのか…。当時の規制する側(保安院)とされる側(電力会社)の力関係が違い過ぎた…」


「電力会社には逆らえない」国会によるチェックも機能せず…

日本では電力会社の力が強く、その意向に保安院が逆らえない状態だったというのだ。規制側と推進側が経産省内の同じ組織にくるまれていたことが元凶だったという。


アメリカは議会主導で、原子力行政をチェックする委員会が常設されているのに対し、いまも日本の国会には常設されていない。


『笹川平和財団』 小林祐喜 主任研究員
「国会によるチェック機能は残念ながら全く働いていない…原子力問題調査が常設でないので詳しい国会議員もいないし、エネルギーの安全問題が選挙の争点にもならない」


しかし、原発対策先進国のアメリカもトランプの出現で今や変貌しつつあるとアメリカの専門家は話す。規制のトップもトランプが任命するからだ。


原子力問題に詳しいアメリカ人ジャーナリストジェームズ・シムズ氏も憤る。


ジャーナリスト ジェームズ・シムズ氏
「独立行政機関の独立はないとトランプは言っている。さらに原子力を4倍にするとも言っていて民主党が任命した規制委員会のトップをクビにしているんです」


さらに元国防長官の担当者にも聞いた。アメリカは9.11同時多発テロ以降、原発の設計基準を厳しくするため議会が中心となって動いたというがいまは変わったという。


元国防総省・国防長官室政策担当副部長 ヘンリー・ソコルスキー氏
「原発の安全性は以前ほど重要視されていないように見える。今の議会は規制を減らし新たな原子力技術の開発に重点を置いている。特に新型原子炉や新たな燃料製造施設の認可はどんどん進む方向になっている…(中略)原発事業者は少なくとも年間数百万ドルを議会へのロビー活動に使っている。“規制を減らすべき”と議員を説得するために使われてるんだよ。結果、規制する側の議員が公益性より、電力会社の利益を優先してしまう状況にあるのだ。どの国でも問題になっていることだ、日本も含めね…」


“高度な装備を持った20人の武装テロリストで自爆をいとわない者たち”に常に備える

ロシアのウクライナ侵攻では、初めて稼働中のザポリージャ原発が攻撃対象となった。


アメリカに次ぐ原発大国、フランスでは原発を守る対策を9.11以降、さらにグリーンピースからの侵入もあり強化しているという。


フランス政府のアドバイザーを務めたアナリスト、シュナイダー氏にフランスの原発テロ対策について聞いた。


原子力・エネルギー政策アナリスト マイケル・シュナイダー氏
「全ては『設計基礎脅威』と呼ばれるものから始まる。私個人としては9.11以降、設計基礎脅威は常に“高度な装備を持った20人の武装テロリストで自爆をいとわない者たち”であるべきだということだ。さらに環境保護団体の活動家が原発内に侵入したことを受け警察の特殊部隊を導入した。現在22ほどの部隊が存在している。部隊は特定の原子力施設に携わるために専門的な訓練を受けている。施設内に常時配置されている隊員もいる。人数は公表されていないが4~5人程度だと思う。防御体制を知られないように変動している可能性がある…」


さらに従業員の身元調査も徹底しているという。


原子力・エネルギー政策アナリスト マイケル・シュナイダー氏
「実際には『原子力セキュリティ司令部』という特別な組織があり原子力施設で働こうとする応募者の過去を調査している。結果によって採用を拒否される者もいる。年間100人は不採用だね」


外からの攻撃だけでなく内側からも破壊工作がないかを厳重にチェックしているというフランスだが、現在の最大の脅威はやはりドローンだという。原子力施設に限ったことではないが、今やあらゆる種類のドローンに対処しなければならず、ここはまだできていないという。


原子力・エネルギー政策アナリスト マイケル・シュナイダー氏
「ウクライナ戦争でも見てきたように攻撃用ドローンだけではない。観測用ドローンも大きな問題だ。低空を飛ぶ非武装ドローンでも原子力施設の情報を取得する可能性がある。(中略)最も懸念しているのは使用済み核燃料の再処理施設(への攻撃)。最大の危険の潜在性が使用済み燃料プールに存在していることを知っているからね。そこにあるセシウムが全て放出された場合、放出量はチョルノービリの66倍に当たる。これは他の国でも同じだ。日本で最も危険性の潜在能力が大きいのは原発ではない。(青森県の)六ケ所村だ」


さて日本は原発を脅威からどう守っているのだろうか?因みに公表されているのは…


▼自衛隊…弾道ミサイルに対してイージス艦とPAC-3で対応
▼海上保安庁…原発の海を24時間体制で監視
▼警察…サブマシンガン・ライフルを所持した『原発特別警備隊』を組織


最もフランスと違うのは、人材の採用に関して電気事業者に任せている点だ。国が関われば、身元も犯罪歴も確実だろうが、日本はそれをなぜかしてない。


『笹川平和財団』小林祐喜 主任研究員
「去年、重要安保情報保護法が施行され国が主体となったセキュリティクリアランス制度が始まったが原子力は入っていない。これは特殊な事情があるが、すでに他国と肩を並べるために急いで2017年に法律よりも低い規則でセキュリティクリアランスをやることにしていたため事業者が主体になっている。ただ何のためにこれをやるのか考えると、善良な市民になりすまして原子力施設に入る内部から使用済み核燃料の警備状況などをテロリスト側に伝えて外部からの被害を拡大させないためなので、常時機密に触れられるようにしたほうが効果は大きい。国の法律に基づいてやるべき」


なぜ2017年にきちっとした体制が取れなかったのか…


元原子力委員会委員長代理 鈴木達治郎氏
「やはり人権問題、プライバシーの問題が一番大きな理由だと…以前に比べればだいぶ良くはなっているけれども日本はテロの可能性は低いという前提になっている。『設計基礎脅威』自体が甘いとも言われているが、テロ対策は情報公開されないのでチェックのしようもないんです」


(BS-TBS『報道1930』3月11日放送より)


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