ミャンマーで取材中に射殺されたジャーナリストの長井健司さん。その死から、まもなく18年となります。亡くなる直前まで離さなかったビデオカメラには長井さんの最期の言葉が記録されていました。
ビデオに残されたジャーナリスト・長井健司さんの“最期の言葉”
2007年、民主化を求める僧侶や市民と軍事政権の治安部隊が全土で激しく衝突したミャンマー。ジャーナリストの長井健司さん(当時50歳)は、その様子をカメラを回しながら取材していました。
ジャーナリスト 長井健司さん
「仏塔の前には皆さん、こうした市民がですね、集結しています。そうした中、重装備した軍隊のトラックが到着しました」
しかし、この直後、ビデオカメラを握りしめたまま、治安部隊によって射殺されました。
長井さんが所属していたAPF通信社は24日会見を開き、長井さんが残した映像の分析結果を明らかにしました。
まず分かったのは、映像に記録された長井さんの“最期の言葉”です。
日本音響研究所 鈴木創 所長
「ちょっと再生してみていただけます」
長井さんの声
「とりあえず戻ろう」
日本音響研究所 鈴木創 所長
「『いや』というようなことを言って、『とりあえず戻ろう』と発言をしている」
映像に映る両脇いっぱいにペットボトルを抱えたひとりの少年。ここは、危険な反政府デモの現場。少年が走ってカメラの方へ向かってきます。直後、映像が揺れ…
長井さんの声
「とりあえず戻ろう」
日本音響研究所 鈴木創 所長
「かけよった少年を助ける、もしくは手を引くというようなことで、映像は抜きにして下に向けているのではないか」
紛争地帯での取材をライフワークにしていた長井さん。弱い立場の人に寄り添い、戦争に無関心な社会やメディアに苛立ちを見せることもあったといいます。
AFP通信社 山路徹 代表
「アフガニスタンでも、イラクでもそうですし、あの状況を見て子どもがいたら、これ絶対、長井さん子どもに行くなと。非常に自然に我々としては理解しています」
銃撃後、行方不明になっていたビデオカメラは2023年、ミャンマーの独立系メディアを通じて遺族に返されました。
映像には上書きの痕跡が…何者かが意図的に“上書き”したか
今回の映像分析では、何者かによって改ざんされたとみられる「上書きの痕跡」も見つかったといいます。
映像は銃撃の約6秒前に突然、真っ暗な映像に切り替わりますが、撮影した際に残る「記録信号」が、長井さんが撮影した部分と真っ暗になった後の映像とで、異なっていたということです。
AFP通信社 山路徹 代表
「記録するということに非常に執着、こだわりのある人でしたから、長井さんが最後に撮った映像を、テープを見た人間がこれはまずいなと上書きした」
ミャンマーでは2021年に軍事クーデターが起こり、軍はこれまで7000人近い民間人を殺害。民主化への道は遠のいたままです。
APF通信社は今後、映像の上書き部分の復元と詳細の分析をしていくとしています。
「ミャンマーだけが舵を切れていない」 民主主義と経済発展への道
小川彩佳キャスター:
ミャンマーでは今も内戦が続いていますね。
地域エコノミスト 藻谷浩介さん:
長井さんが亡くなった後、一旦、民主主義が復活したんですが、また軍政に戻ってしまった。
東南アジアは軍政の暴力から民主主義の平和経済発展へと大筋で舵が切られている中で、ミャンマーだけが舵を切れていない。そして、結果的にミャンマーだけが経済発展から取り残されて、たくさんの移民を生んでいますよね。
「とりあえず戻ろう」という、「今後、必ず変わっていかなきゃいけない」という長井さんの思いをぜひ引き継いでいきたいですよね。
小川キャスター:
18年の時を経て、映像に乗せて、長井さんの思いが再び私達に語りかけているということですね。
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<プロフィール>
藻谷浩介さん
地域エコノミスト
共著「東京脱出論」
(株)日本総研主席研究員
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