
生成AIによる音声の無断生成がインターネット上で横行する中、声優たちが自らの「声の権利」を守るための取り組みを少しずつ進めています。
「声優自身も確認が追いつかないほど」 無断生成で“約20億~45億円”損失試算も
高柳光希キャスター:
SNS上で、声優の声をAIによって無断で生成されたものを見かけることがありますが、実際には以下のようなものがあります。
【“AIで声を無断生成”】
・歌わせる
・性的な言葉を言わせる
・声を学習させたAIモデルの販売・公開 など
NPO法人「肖像パブリシティ権擁護監視機構」の調査によると、2025年の約2か月間で、延べ約4万3000件の無断生成疑いの画像や動画があり、芸能人らの経済的損失は約20億~45億円と試算されています。
※調査実施:IPconnect株式会社
TBS報道局 社会部 永橋風香 記者:
今の日本で「声」は著作権保護の対象ではなく、声を直接保護する法律はありません。
その中で日々、声優の声を無断で学習した生成AIによる動画などが投稿されていて、声優自身も確認が追いつかないほどだと言います。
高柳キャスター:
アナウンサーも声を使って仕事をしています。守られて当然なのかなとも思いつつ、難しいハードルもあるのですね。
井上貴博キャスター:
例えばですが、「パロディ」と「なりすまし」や、「似ている声」と「本人の声」は判別できるのでしょうか。
顔などの視覚情報があれば判別のヒントになる気がしますが、声を技術的にどこまで判別できるのかということに関心をもっています。
声優「大きな、大きな『一歩』」 “声の権利”認める初の司法判断も「構造的な限界」
高柳キャスター:
こうした状況を受けて2026年4月、法務省では声などの無断利用に関して、民事責任のあり方についての検討会が立ち上げられました。
その結果、2026年8月には解釈方針が公表されています。
▼みだりに利用されない権利、▼経済的な価値を本人が独占できるパブリシティ権といった2つの権利が保護対象になることが明記されました。
そして9月30日、声優の津田健次郎さんがTikTok運営会社を訴えた裁判が行われ、「声の権利」を認める初の司法判断が下されました。
まずは一歩前進したと考えていいですね。
TBS報道局 社会部 永橋 記者:
この判決は東京地裁という下級審なので最高裁判例に比べると影響力に限界はありますが、これまで生成AIで声を無断で模倣されたとして訴えた裁判はありませんでした。
この裁判で、「声の権利」が認められたというのは画期的なことです。
声優の緒方恵美さんは、JNNの取材に対し「声はパブリシティ権で護られるという判断が司法の場において、明確に示されたということは、業界にとって大きな、大きな『一歩』でした」と話しています。
ただ一方で、「全ての声優に光を灯してくれる出来事でしたが、まだ立法に至った訳ではなく、現行法では構造的な限界があることに変わりはありません。これからも注意深く、見守らせていただけたらと思っております」とも指摘しています。
裁判を起こす“ハードル”・削除してもいたちごっこ 「声の権利保護」の課題
高柳キャスター:
その「課題」について、そもそも▼裁判を起こすハードルが高いことも考えられます。
TBS報道局 社会部 永橋 記者:
まず、裁判は誰にとっても時間や労力、お金がかかります。
それに加えて、声優の方は役に選ばれて仕事をするので、キャスティングサイドへの向き合い方や役のイメージがあることから、どうしても前面に出ることが難しいのです。
井上キャスター:
役のイメージを考えると「出づらい」と感じることがあるということですね。
出水麻衣キャスター:
訴訟しているイメージをつけたくないということですよね。
TBS報道局 社会部 永橋 記者:
パブリシティ権は人格権として個人に帰属している権利なので、事務所やプロダクションが代わりに訴えを起こしにくいということもあります。
高柳キャスター:
さらには、▼削除してもいたちごっこになってしまうことや、▼死後の権利を保護の対象にするかどうかなどの課題もあるようです。
AI活用と「声の権利保護」どう共存?
高柳キャスター:
こうした中で表現の現場では、AIの活用によって声の権利を保護する方法が模索されています。
TBS報道局 社会部 永橋 記者:
声をAIで使ってもいいという人もいれば、そうではない人もいます。
それを前提とした上で、日本俳優連合のガイドラインでは、演技表現の部分については仕事の機会や長年培われてきた声優文化を守るために、生身の声優を起用してほしいとしています。
ただ、可能性を広げるためにAIを利用する際には、▼意図しない形で使われることがないように事前に許可を取ること、▼利用実績などに応じて適切な報酬を支払うことなどが求められています。
高柳キャスター:
経産省でも法整備が検討されていて、今後も注目が集まるところです。
井上キャスター:
AI技術とどう共存していくかも大切ですが、もう一つ考えなければいけないのは根幹にある「表現の自由」とのバランスですね。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
AI使用での制限も考えなくてはいけないと思いますが、正当な対価を払わないでAIが流通していることを考えないといけないと思います。
「ただ安く使えるから便利だ」と思う段階は、もう過ぎているということは考えたほうがいいと思います。
出水キャスター:
企業がやっているような、AIを利用したことを明示するルールを決めるだけでも違う気がします。
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<プロフィール>
永橋風香
TBS報道局社会部 法務・検察担当
入管行政や同性婚訴訟など幅広く取材
星浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島県出身
政治記者歴30年
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