ネット上などで相次ぐ「皇室への誹謗中傷」。反論の機会が極めて少ないことから、問題となっています。こうした中、議員らを中心に法整備を含めた対策の検討が始まりました。また、皇室を“特別に扱う”政策を目指す党なども。
仮に「皇室を守る」目的で行きすぎた措置が進む場合、“不敬罪”の復活を懸念する声が一部からあがっています。
「人生を壊される恐怖感」 皇室への誹謗中傷にどう対応?
「当事者的に見ると、バッシングというよりいじめ的情報」
2024年、会見でこう述べられた秋篠宮さま。秋篠宮家などに対する「誹謗中傷」へのコメントです。
これまで皇室に対し、 根拠のない作り話や、人格を強く否定するような投稿が相次いできました。
秋篠宮家の長女・眞子さんは2021年、「誹謗中傷を反復的に体験」したことや「人生を壊される恐怖感」などによる「複雑性PTSD」と医師から診断を受けました。
秋篠宮さま(2021年・眞子さん渡米約2週間後)
「娘が複雑性PTSDになったのが、週刊誌・ネット両方の記事にあるのだろうと。中には相当ひどいことを書いているのもある。深く人を傷つけるような言葉というのは許容できるものではありません」
繰り返される皇室への誹謗中傷。背景には…
王室・皇室制度に詳しい駒澤大学・君塚直隆 教授
「(皇室側が)言い返せないという側面がある。訴える・訴えないというのは、『じゃあ誰が?』ということになる」
刑法には、天皇や 一部の皇族に代わって総理大臣が告訴できる規定はありますが、実際には運用されていません。
秋篠宮さまも…
秋篠宮さま(2024年)
「宮内庁が抗議をしたとします。それがどちらの方向に振れるかがわからない」
「皇室を守る」目的でプロジェクトチーム設置 議論呼ぶ「侮辱罪などを“非親告罪”に」
「皇室を守る」という目的を掲げ、9月に自民党の保守系議員などのグループがプロジェクトチームを設置しました。
「護る会」代表 自民党 青山繁晴 衆院議員
「『自分の名誉が侵されている』と皇族の方がお感じになっても、それを法的に問う道がないのではないか」
9月に行われた初会合で、法務省や宮内庁の担当者らと議論が行われたのです。
発端となったのは、7月に決まった皇室典範改正。
旧宮家の男系男子である一般男性が養子縁組によって皇族になることが、10月から可能となり、そこへのバッシングを防ぐことも目的の一つだと青山議員は主張します。
――青山さん個人の目指す法整備の選択肢の一つは?
青山 衆院議員
「刑法232条(親告罪の規定)を削除するだけで、誹謗中傷・名誉毀損・侮辱から少し自由になれる」
刑法では、被害者の告訴があって初めて起訴できるものを「親告罪」といい、侮辱罪や名誉毀損罪はこれにあたります。
一方、被害者の意思と関係なく起訴できるものは「非親告罪」で、殺人など多くの犯罪はこれにあたります。侮辱罪などを非親告罪のカテゴリーに変更するというのが、議論を呼んでいる案の一つ。
さらに日本保守党は、9月に改訂した「重点政策」の中でこう明記しました。
日本保守党『重点政策項目』
「皇族に対する名誉毀損・侮辱を『親告罪』の例外とする」
“戦前回帰”懸念の声 「両陛下や皇族本人が望まないところに拡大するリスク」指摘も
一方、刑法の専門家・甲南大学の園田名誉教授は、場合によっては“戦前への回帰”に繋がりかねないと警鐘を鳴らします。
甲南大学(刑事法専門) 園田寿 名誉教授
「個人の社会的な地位、名誉でなく、皇室の尊厳と言いだすと、これはもう国家自体の法益になってくる。“不敬罪の復活”になりかねない」
天皇が「現人神」とされた戦前、天皇や皇族を侮辱するなどした場合、最長で「懲役5年」が科される罰がありました。
ただ、その内容はあいまいで、国民の表現行為が大きく制約を受けたとされ、戦後、廃止された歴史があります。
また園田氏は、両陛下や皇族本人が望まないところにまで対応が広がるリスクも指摘します。
園田 名誉教授
「非親告罪化は=被害者(皇室)の意思によらず犯罪にできる。警察とか検察の独自の判断でそれが処罰されるということになっていく。戦前のような言論統制に繋がっていく可能性がある。プロバイダに対する削除要求を行うとか刑罰以外による対策が望ましい」
自民党の青山議員によると、目指すものは「“不敬罪”とは異なるもの」だということですが、出発点が“皇室を守る”ということだけに、さまざまな議論を呼ぶことは必至です。
こうした現状や動きについて、青山議員らの会合に出席した宮内庁の担当者は…
宮内庁 坂本俊介 広報室長(JNNの取材に対し)
「(誹謗中傷は)国民と皇室の親和と絆を損なう恐れがあると考えています。プロジェクトについては、宮内庁として必要な協力や対応を行ってまいります」
皇室への誹謗中傷 厳罰化と表現の自由 どこまで?
小川彩佳キャスター:
皇室の方々が誹謗中傷から身を守ることについて、取材する中でどんなことを感じていますか?
社会部・宮内庁キャップ 岩永優樹 記者:
皇室の方も生身の人間で、私たちと同じく言葉に傷つく存在です。
一方で、皇室には中立性も求められるため、実際に法廷に立つことは想像しにくく、仮に法的な制度があったとしても、国民と同じようにはいかないと思います。
藤森祥平キャスター:
今の刑法でもルールがないわけではなく、名誉毀損などは特例で総理大臣が代わりに告訴できる規定もあるのですよね。
岩永優樹 記者:
規定はありますが、事実上使われたことがなく機能しているかは別の話です。
さらに、愛子さま、佳子さま、悠仁さまらの皇族は対象外になるため、現代に適してるのかという指摘もあります。
その他にも、脅迫罪などは被害者からの訴えがなくても動くことができますが、皇室に対する立件例はほとんどないのが現状です。
演説・態度・日記も処罰対象の“不敬罪” 一部から懸念の声も
藤森キャスター:
「皇室を守る」という目的で、新しいルールを作ろうという動きが出てきました。
今は廃止になっている不敬罪を目指すものではないということですが、一部からは内容によっては不敬罪に繋がりかねないという不安の声も出ています。
岩永優樹 記者:
戦前の「不敬ノ行為」というこの5文字も非常に曖昧です。
当時は演説や態度、さらに人に見せない「日記」も処罰の対象になり得たということです。
小川キャスター:
国民の納得を得ながら尊厳を守るためにはどんなことが必要なのでしょうか?
岩永優樹 記者:
私は、「表現の自由」の範疇を超える人格否定行為に対しては、皇室も国民と同じように守られるべきだと思います。
一方で、刑事罰を変えたり、国家の介入を強めたりすることが良いことなのかというのはまた別の議論でしょう。
まずは、今ある制度をどう活かして運用するかというのも一つの視点ですし、こうした状況を国民が知ることが議論の出発点になると感じます。
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<プロフィール>
岩永優樹
社会部・宮内庁キャップ
皇室制度や国際親善などを取材
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