20日、栃木県の東武鉄道・新鹿沼駅で作業員4人が特急電車にはねられ、亡くなる事故が起きました。
列車の見張りを担当していた作業員が、列車に対して安全を示す合図を出していたことが分かっています。安全管理は十分だったのでしょうか。
【写真を見る】複数のイレギュラーがあった?事故当時の状況を模型を使って確認
鉄道ジャーナリスト「東武鉄道は二重の態勢を取っていた」事故当時の状況は
高柳光希キャスター:
事故当時の状況について分かっていることを整理します。
東武鉄道によりますと、作業は9人で行っていました。
事故が起きたのは、日光方面から浅草方面へ向かう上り線上で、昔使われていた「旧上りホーム(未使用)」の前です。
●事故が起きたホーム上には、作業指揮者と日光方面の線路脇に作業員が1人
●「旧上りホーム(未使用)」から約80m離れた位置に列車見張員が1人(列車が接近した際に作業員を退避させる見張り役)
●「旧上りホーム(未使用)」から日光方面に315m離れた場所の踏切に「中継見張員」が1人
この配置は一般的なものなのでしょうか。
鉄道ジャーナリスト 梅原淳さん:
一般的には列車見張員が1人います。「中継見張員」は鉄道会社によってはいない場合もあります。逆に言えば、東武鉄道は二重の態勢を取っていたとも考えられます。
高柳キャスター:
安全管理は本当に十分だったのか。当時の現場はどういった状況だったのでしょうか。
複数のイレギュラーな事態 考えられる可能性とは?
高柳キャスター:
イレギュラーな事態が複数確認されています。
【イレギュラーな事態(1)】
通常であれば、より遠い場所にいる「中継見張員」が旗を使って列車の接近を「列車見張員」に対して伝えます。
その旗は、列車が近づいてきた場合、閉じた状態で上に挙げるそうです。
事故当時の状況について、東武鉄道の佐藤晃一施設部部長は「意思疎通できる状態ではなかった」と話しました(東武鉄道の会見より)。
こういった状況では、何が考えられますか。
鉄道ジャーナリスト 梅原淳さん:
列車が時刻通り運転されたということは、“中継見張員”は列車の接近に「気づいているはずだ」と周りも思っていたのではないでしょうか。
例えば、▼“旗”が振られなかった・合図が出されなかった、▼無線で呼びかけても応答がなかった、ということが考えられます。
高柳キャスター:
無線が通じなかったときのために、“旗”があるわけですね。
【イレギュラーな事態(2)】
「列車見張員」は、列車が接近してきた場合に“旗”で合図をします。このときも“旗”によって合図されますが、今度は“旗”を開いた状態で上に挙げ、列車の運転士に対して合図を送る手順になっています。
今回は、列車の運転士は“旗”を確認し、警笛で応えています。
実際に現地で警笛を聞いてみましたが、かなり大きな音でした。この警笛であれば、別のことをしていても気付くのではないかと思いました。
本来、列車見張員は作業員に対して旗を挙げる前に、マイクや笛によって待避を促す必要があります。
これに関してはどういったことが考えられますか。
鉄道ジャーナリスト 梅原淳さん:
実際に待避は完了したが、▼待避後に何らかの事情で待避した方々が移動した、▼列車見張員が待避したと見誤った、ということが考えられます。
高柳キャスター:
そういったことも含め、安全が取れていたのか現在確認中だということです。
危険な「日中の作業」どう安全管理? JR東日本では「検知センサー」を使用
高柳キャスター:
日中の作業について、東武鉄道の佐藤施設部部長は「列車待避できる状況を作れる場合、昼間作業をよしとするという規定」だと話しました(東武鉄道の会見より)。
日中の作業に関しては、規定にのっとったものだったということです。ただ、重要なのは「列車待避できる状況」を作れていたのかということです。
JR東日本では、列車が接近したときに自動無線で知らせるシステムがあります。
「検知センサー」が500m間隔で設置されていて、列車がその場所を通ったときに、線路上・線路近くで作業をしている作業員に対し、列車の接近を“音声”で伝えるそうです。
「検知センサー」の導入には、予算を含め、どのようなハードルがあるのでしょうか。
鉄道ジャーナリスト 梅原淳さん:
「検知センサー」は踏切を作動させるための周波数を使っていますが、その周波数と競合してしまい使えない場合や、電車自体にも高周波数を発する機器があり、センサーの使用に障害が生じるなど、技術的な障害があって導入できない可能性もあります。
高柳キャスター:
まずは調査からということですね。
2段階の見張員が機能しなかった 考えられる理由とは
「フォーサイト」元編集長 堤伸輔さん:
今回の事故については、列車見張員と中継見張員がどちらも十分に機能しなかったように感じます。何が起こっていたのでしょうか。
鉄道ジャーナリスト 梅原淳さん:
中継見張員に連絡が取れなかった理由として考えられるのは、▼持ち場とは違うところにいた、▼熱中症などの健康上の事情が生じて一時的に意識を失ってしまったことが推測として挙げられます。
中継見張員が何の合図も出していなかった場合でも、列車の運転手がそれに気づかず通過してしまったということも考えられます。
どちらにしろ、なぜなのかという疑問があるので、調査をしないと分かりません。
高柳キャスター:
「旧上りホーム(未使用)」は高さが約1.1mで、下がくぼみになっています。くぼみになっていたとしても、そこに逃げるのは少し難しいのではないかと思いました。
反対側に逃げるという選択肢もありますが、列車が接近している切迫した状態でどこまで正常な判断ができるのか分かりません。
そのようなことも含め、今後明らかになっていくと思います。
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<プロフィール>
梅原淳さん
銀行マンを経て鉄道ジャーナリストに
著書に「鉄道の未来学」「特急電車のすべて」
堤伸輔さん
国際情報誌「フォーサイト」元編集長 熊本出身
BS-TBS「報道1930」ニュース解説
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