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「これからが これまでを決める」不登校や発達の悩みを乗り越え、里山の全寮制学校で“笑顔”を取り戻す子どもたち【報道特集】

国内
2026-07-04 06:30

学校に馴染めなかった子どもたちが全国から集まる、岡山県の全寮制・小中学校があります。「これからが これまでを決める」先生たちはそう語ります。かつて悩み苦しんだ子どもたちの成長を見守ります。


【写真でみる】不登校や発達の悩みを乗り越え、里山の全寮制学校で“笑顔”を取り戻す子どもたち


不登校に向き合う全寮制学校

12月、夜明け前の午前6時。学校の一日が始まる。子どもたちは平日の5日間、寄宿舎で寝食を共にしている。


吉備高原のびのび小学校 寄宿舎職員 木口仁美さん
「もうみんな下に降りましたよ。もう声かけに来ないよ。早くおいで」


起きてすぐ、1キロの散歩。寮生活の基本は、早起き、散歩、朝ごはん。


有希さん(小5)
「笑顔がなかった、暗い表情の子だった」


ここで暮らす子どもたちには、それぞれに悩み苦しんだ過去がある。


有希さん(小5)
「いじめかな。絵を馬鹿にされたこと、それが不登校になったきっかけだから。つらかったよ。不登校になるくらいだからつらかったよ」


岡山県の中央に広がる吉備高原。雲海に浮かぶ里山に、学び舎はある。「吉備高原のびのび小学校」と「吉備高原希望中学校」。全国でも珍しい、全寮制の小・中併設校だ。


2025年度、在籍した児童・生徒は20人。不登校や発達の悩みなどで地元の学校に馴染めなかった子どもたちが、全国から集まる。


有希さん(小5)
「ここに入学する前はずっと引きこもりだった」


2025年5月に転校してきた、小学5年生の有希さん。3年生からの1年半は、学校に通うことができなかった。


生活は昼夜逆転。勉強にも空白の期間ができ、家庭内でも笑顔がなくなっていった。両親の勧めもあり、たどり着いたのがこの学び舎だった。


有希さん(小5)
「勉強もできて、笑顔いっぱいの人になりたくて来た」


のびのび小学校が誕生したのは1995年。不登校に悩む児童のための、全寮制の学び舎という、新たな教育への挑戦だった。5年後に希望中学校も開校。生活のすべてを学びの場とし、およそ400人の卒業生を送り出してきた。


吉備高原のびのび小学校 森岡浩美 校長
「社会の中に出ていくための力というのは、集団の中でないと育っていかない力。学校というのは学問を教えるだけではなくて、人間関係の作り方とか、失敗してもくじけないとか。どんどん学校は経験させてくれるんです」


新しい仲間がやってきた

1月、のびのび小学校に新しい仲間がやってきた。


基さん(小5)
「基です。よろしくお願いします」


基さん(小5)
「すごく楽しみにしていたので、入学できてうれしいです」


東京から来た小学5年生の基さん。新たな環境でのスタートに複雑な思いがこぼれる。


基さん(小5)
「寂しかったけど、楽しかったです。のびのび小学校でできることがあるなら全部やりたいです」


基さんには、発達の悩みがある。家庭内では、感情が抑えられなくなることも。集団になじめず、4年生からは支援学級に通っていた。


基さん(小5)
「友達はいじわるだったけど僕はずっと我慢してきました。いじわるされるから人と離れながら、勉強とかしてきました」


転校の決め手は1週間の体験入学。自分に向けられる目線や、言葉の一つ一つに、温かさを感じたという。


基さん(小5)
「友達が優しい、助けてくれたりとか。(お風呂)でタオル忘れたから、タオルを取りに行ってくれたとか、勉強を教えてくれたとか」


それでも、まだ小学5年生。両親がそばにいないという不安は、日を追うごとに増していた。


ーーみんなと遊ばないの?

基さん(小5)

「うん。静かなところが好き」


ーー学校はどう?

基さん(小5)

「寂しい、やっぱり」


土日や、学期の終わりには自宅に帰る子どもたち。休みが明けると再び、里山での5日間が始まる。


あふれる寂しさに寄り添う

休みが明け、のびのび小学校に戻って来た基さん。


基さん(小5)
「行ってほしくないのに」


森岡浩美校長
「行ってほしくないけど大丈夫だって。パパやママは僕のこと大好きだから。先生と散歩に行こうか」


学校に送りに来た母親が帰ったあと、寂しさがあふれ出した。森岡校長は表情を変えない。気づけば、2キロ歩いていた。


基さん(小5)
「この坂、毎回きついな」

森岡浩美校長
「(基さんが)復活しましたよ」


基さん(小5)
「すみません」

横山喜久雄先生
「おー元気なったんじゃ。そうしたら明後日は先生とおにぎりを食べるぞ」


基さん(小5)
「大変だった。寂しかったから『帰りたい』って暴れちゃった」


後藤田優花先生
「基さん、みんな氷鬼するって。やる?」

基くん(小5)
「暑い。散歩したからもうあったかくなった」

横山喜久雄先生
「鬼ごっこ面白いぞ。しておいで」


森岡浩美校長
「『今イライラしてこの気持ちどうにもならないんだよ』『でも本当はこれはいけないと思うんだよ』って自分でも言うんです。『僕は僕でブレーキかけようと思っているんだね。そのブレーキすぐにはかからないけど、だんだんかけられるようになるからね』って」


入浴の時間。上級生が、基さんを励ましていた。


統真さん(小6)
「寂しくなくなるんよ。自分の目標のために頑張っているんだと思ったら、お母さんは支えてくれているけど、今いないから『自分で頑張ろう』と思える。たぶんみんな寂しいけど、みんな目標を立てているから、やっていけている」
「基さんはなにがしたい?この学校でなにを頑張りたい?『友達と仲良くなる』とかでもいいんだよ」


この学校で何を頑張りたいか。基さんが教えてくれた。


基さん(小5)
「恥ずかしくて友達が誘えなかったんです。だから、もうちょっと成長してそれができるようになりたいなと思って、一緒に遊びたいなと思ってこの字を書きました」


これからが これまでを決める

一歩を踏み出して、この里山に来た子どもたち。先生たちはその歩みに寄り添う。


横山喜久雄先生
「遅くないんだよ。小学校卒業までこの調子でいけば、ここに来るまでの間、『つらかったな、学校にいってないよ、嫌だったな』ここもこれまでの白いところも、これからを頑張れば黄色くなるんだよ」


過ぎた時間は戻せない。でも、その意味は変えられる。


森岡校長はー


森岡浩美校長
「私ね『これからがこれまでを決める』という言葉が大好きで、これまでいろんなことがあった子どもたちだと思うんです。でも変われるよって。これからなんだよって。そういうきっかけを勉強でも生活でも、いろんなところで作ってやりたいなと」


中学3年 悩み苦しんだ過去

中学3年生の王雅さん。希望中学校に転校してきたのは、2年生だった去年12月。人間関係に悩み、苦しんだ過去がある。


王雅さん(中3)
「人の悪いところばっかり見つけるようになってきて。(学校に)行きたくないし、友達と会っても恥ずかしいだけだしみたいな。なんか言い訳ばっかり出てきて、すごく苦しかった記憶があります」


いつしか内気な自分と周りを比べるようになっていた。そして自信を失い、同級生を遠ざけた。小学6年生からは、週に2日ほどしか学校に行けなくなった。


王雅さん(中3)
「一時期『死のうか』と考えたりしていて。すごい荒れていたと思います。小6ぐらいから『いても意味ないな』って」


自宅は、車で30分程の隣町にある。母・有香さんは、もともとは明るい性格だったという息子の変化に悩み続けた。


王雅さんの母 有香さん
「顔色が明らかに違うので、どこかで自信をなくして。友達とどういうふうに付き合っていくかというところで悩んだ時期が小学生のときとかあったと思うので。私も入れないくらい落ち込んでしまっていて」


中学生になっても学校に通えないという現実が、重くのしかかっていた。


王雅さんの母親 有香さん
「高校生になってとか、社会人になって、となったときに、親としてしてあげられることがどんどん減ってくるので、自主性というところで、すごく心配で。勉強の面とか、出席日数の面とか、私が不安に思っている面がこの学校でちょっとでも解消されるのなら」


高校に進めないかもしれない。悩み抜いてたどり着いたのが、希望中学校だった。転校前、王雅さんが自分自身に宛てた手紙がある。


王雅さんの母親 有香さん
「『自分のことが嫌いで、根暗で人と話すときも早口になってしまい、発表するときも緊張して泣いてしまうこともあって、好きになれません』っていうのを書いていて。『でも自分に自信を持ってみたいです』というのを書いていますね」


「自信持ちたい」願った先に…

希望中学校では所属する学級を自ら選ぶ。 王雅さんは音楽学級に入り、トランペットを始めた。


音楽学級の担任 島中洋行先生
「表情を見たときに『伏し目がちで学校に来たね』というのが第一印象です。練習は難しいし大変だしというのがあるんですけれど、それを乗り越えると『表現をする場』があるというのは、彼にとっては力になるんじゃないかなと思います」


打ち込むものを見つけた王雅さん。練習を重ねる日々が続いた。


王雅さん(中3)
「トランペットを吹いているときだけ、全部忘れられるような気がして。苦しくても好きなことを続けられたからここにいられるのかなって思います」


転校から1年が経った2025年12月。小学校と合同で年に一度の学習発表会が開かれた。


王雅さん(中3)
「みなさんこんにちは」


ステージで発表する王雅さんの姿に、かけつけた母・有香さんの表情がほころぶ。


最初は、音すら出せなかったトランペット。


王雅さんの母 有香さん
「1年前と全く違う子どもみたいな感じで、すごいスピードで成長してくれていて、とにかくずっと感動しかなかったです」


里山の全寮制学校で得たもの

雪化粧した学び舎。高校入試が迫る中、王雅さんは、勉強に励んでいた。


2月、学校に入試の結果が届いた。先に合格を決めた同級生や先生たちが見守る。


王雅さん(中3)
「よっしゃー!」


王雅さんが黒板いっぱいに書いたのは、同級生全員合格の文字。


王雅さん(中3)
「うれしいな。ちょーうれしいな」


王雅さんは、県立の工業高校に進む。


王雅さん(中3)
「義肢装具士になって人を助けるような仕事に就きたいです。困っている人を助けたいというのもあるし、少しでもその人の笑顔を取り戻せたらいいなと思います」


かつて家に引きこもり、笑顔を失っていた有希さん。


転校から半年。仲間とよく学び、よく遊ぶ。そんな毎日が、有希さんを変えていった。


有希さん(小5)
「早寝早起きができる。友達と会える。勉強ができる。徐々に笑顔を取り戻していった。いまは自信をちょっと保っている」


ーー有希さんはどうですか?

栞梛さん(小6)

「笑顔で優しい子です」


有希さん、いまでは学校でこう呼ばれるまでに。


有希さん(小5)
「笑顔担当」


横山喜久雄先生
「頑張っていますよって。カメラに。笑顔担当頑張れ!」


有希さん(小5)
「先生がニッコリして代わりに」


2026年4月、有希さんは小学6年生になった。


有希さん(小6)
「寂しいときもあったのね。でも最近慣れてきて、今では楽しい仲間たちに出会えて本当によかったと思う」


基さんも6年生になった。転校から3か月。成長を感じているようだ。


基さん(小6)
「明るくするのは、もうできているし、イライラはまだまだですけど、少しずつ友達と遊んで少しずつなくしていきたいと思います。楽しい学校生活を送りたいです」


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