
ごみ回収でのカスハラ
去年の4月に「東京都カスタマーハラスメント防止条例」が施行されてから1年。今回は「カスハラ」の実態と対策について取材してきました。
【写真を見る】東京都カスハラ防止条例から1年 カスハラの実態と対策
カスタマーハラスメント、いわゆる「カスハラ」とは、お客さんから働く人への悪質な迷惑行為のことです。これによって働く人の心身の健康が害されたり、離職に追い込まれたりすることが社会問題となっています。
今回は、私たちの生活に欠かせない「エッセンシャルワーカー」の2つの現場を取材しました。まずは、東京23区を中心に飲食店などの「事業ごみ」を収集・運搬している、株式会社利根川産業・取締役部長の利根川靖さんに、従業員が実際に受けたカスハラについてお話を伺いました。
株式会社利根川産業 取締役部長・利根川靖さん
ごみの回収で店舗さんに行きますが、全てに駐車場があるわけではないので、路上に駐車して回収することもあります。そういったときに後ろからクラクション鳴らしたり、怒鳴られたり…直接言われなくてもいやな顔されたり。例えばちょっと鼻をつまむような仕草なども見受けられます。
カスハラから従業員を守るために
今回取材した利根川産業は、飲食店などから出る『事業ごみ』を収集しています。そのため、直接のお客さんはお店の方、つまり事業者となるのですが、事業者には感謝されるけれど、周りにいる通行人などから、暴言や鼻をつまむジェスチャーなどをされることがあるそうです。
こうした中、利根川産業では、カスハラから従業員を守るためにあるシステムを導入しています。
株式会社利根川産業 取締役部長・利根川靖さん
LINEのビジネス版でLINE WORKSというのがあり、それでドライバーさんとのコミュニケーションを取っています。従業員がなるべく1人で抱え込まないようにシステムを使って報告をしたり、こういったことがあったという話を他の従業員にも共有したりしてもらっています。
さらに利根川産業はLINEWORKSから送られてきた従業員の体験を基に、TikTok などSNSのショート動画で、こういったカスハラの実例を発信しています。動画のコメントでは、家庭ごみを収集する同業者からも共感の声が多く届くそうです。
SNSを運営する広報部の担当者は、「私たちの発信で、ブルーカラー、エッセンシャルワーカーは底辺職ではないというところを伝えていきたい」と話してくれました。
介護現場でのカスハラ事例
対人サービスである介護の現場では、密室という逃げ場のない空間でのカスハラが深刻です。全国の介護従事者で組織されている労働組合「日本介護クラフトユニオン」は、2024年に組合員を対象に、『就業意識実態調査』というものを行っており、その中の【直近2年間で利用者・家族から何らかのハラスメントを受けたか】という設問に対して、“受けた”との回答が26.8%あったそうです。
具体的にどのようなカスハラが起こっているのか、日本介護クラフトユニオン副会長の村上久美子さんにお話を伺いました。
日本介護クラフトユニオン副会長・村上久美子さん
暴言やその人を蔑むような物言いなど、かなり多いというのは以前と変わってないです。その次が身体的暴力、殴るとか蹴るとかつねるとか、そういうものが35%ぐらいですので、多かったということですね。殴られて前歯が折れた方もいたり、眼鏡が飛んでいってしまった方もいました。そういうようなひどい暴力、中にはこれ犯罪ではないかというような内容もたくさんありました。
また利用者本人だけでなく、その家族からのハラスメントもあるそうです。例えば、要介護者のケアに入っている際に、パートナーやお子さんから「思っているような介護がされていない」など、クレームのような形でハラスメントを受けてしまうことも結構あるとのことでした。
介護現場でカスハラをなくすために
こういった現状はあるものの、日本介護クラフトユニオンが調査結果を国に報告し対策を求めた成果もあり、介護現場では近年、事前にハラスメントによる契約解除の可能性を伝えるなど、対応する事業所は徐々に増えてきているそうです。
日本介護クラフトユニオン副会長・村上久美子さん
2018年に調査をおこなって厚労省がかなり動いてくれました。そのときのマニュアルにも載せているんですが、例えばその契約書や重要事項説明書に記載するとか、別紙を作るとかで「こういうことをやったら契約が解除になる場合があります」ということ必ず伝えるという。実際に私達と労使関係のある法人でも、そういう風にやってくださってるところがたくさんありまして、そういうところが増えてきてると思いますね。
今回はエッセンシャルワーカーの2つの現場でお話を伺ってきましたが、こういった現場の声が広がっていって、被害に苦しむ方が減っていくことを願います。
(TBSラジオ「人権TODAY」担当 : 工藤優作)
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