
発足から半年を迎えた高市政権。依然として高い支持率を維持する一方で、イラン情勢にかかる外交の重要局面、予算委員会で見せた体力面の不安、そして参議院という構造的なハードルなど、課題が次々に積み重なった半年でもあった。
政権発足前から高市氏を取材し続けてきたTBS政治部の大室裕哉記者と、この半年間における高市総理の“正念場”を振り返りながら、高市総理と周辺が見据える“その先”に迫る。
【写真を見る】高市政権発足から半年 番記者が見た高市総理の“正念場”と“与野党への変化” 長期政権へ向けた周囲の動きと思惑とは【edge23】
集中砲火の予算委に重圧の日米首脳会談―高市総理がくぐり抜けた難局
大室記者が「体力的な正念場」として挙げたのは2025年秋、臨時国会における予算委員会での審議だ。当時は衆参ともに少数与党で、予算委員長は立憲民主党の枝野幸男氏が務めていた。委員長の差配もあり、質問が高市総理に集中した。
高市総理は、大臣時代から各省庁が作った答弁書に自ら赤ペンで修正を入れるスタイルを貫いており、予算委員会が続く時期は徹夜もざらだという。日々、体力的に限界に近い状態で答弁に立っていたことが推察される。
3月12日の衆院予算委員会でも、終了後に席から立ち上がれない高市総理の姿をカメラが捉えていた。隣に座る片山さつき財務大臣と、医師免許を持つ松本尚デジタル大臣がすぐに駆け寄る様子も映っている。
この時は「風邪の疑い」だとして、委員会後に官邸で予定されていた中東の駐日大使を呼んだ食事会「イフタール」を欠席することに。持病のリウマチについて総理周辺は「気温や気圧次第で調子が変わるものの、普段は元気」と話しているが、夫の介護もしながら予算委員会に寝不足状態で臨んだことで疲れがピークに達していたと推察される。
「精神的な正念場」として大室記者が挙げるのが、3月にワシントンで行われた日米首脳会談だ。
元々この会談は、米中首脳会談を前に中国を含めた地域情勢の認識すり合わせや、新しい関税が日本に不利にならないように確認すること、さらに対米投資第2弾が主な議題だった。
しかし2月28日、アメリカとイスラエルがイランを攻撃したことで状況は一変。中東情勢が会談の最重要テーマに急浮上し、イラン攻撃後に世界で初めてトランプ大統領と首脳会談を行う立場に立たされた。同行団の一人は「日本を出発したときは宇宙戦艦ヤマトに乗った気分だった」と振り返るほどのプレッシャーだったという。
世界からも注目される首脳会談だったが、結果的に「アメリカが世界で孤立しそうな状況で寄り添った唯一の首脳」、「選挙で歴史的大勝を収めた強い首脳」の2つの要素が会談を成功に導いたと政権幹部は話す。首脳会談の同席者は「トランプ大統領は高市総理が選挙で大勝したことへのリスペクトを合計5回言っていた」、「内政の安定が外交の力になることを実感した」と話していたと、大室記者は振り返る。
半年で見えた“変化” 野党に配慮から一転…一方で党内には融和姿勢
就任から半年が経ち、大室記者がまず変化として指摘するのは「野党への向き合い方」だ。
高市総理は2025年秋、「年収の壁引き上げ」「給付付き税額控除」「首都機能のバックアップ体制構築」「ガソリン暫定税率廃止」など野党を意識した複数の政策を公約として掲げ、自民党総裁選に出馬した。衆参で少数与党という当時の状況から、総裁選でも「野党との連携」は大きなテーマの1つだった。
総理指名選挙後の挨拶回りでは、国民民主党の玉木代表のもとを訪れ「かわいい弟」と口にするなど、距離の近さがうかがえる場面もあった。
しかし2月の衆院選で自民党が過去最多の316議席を獲得し、単独で3分の2以上の議席を獲得したことで、状況は大きく変化した。
自民党が予算委員長ポストを奪還し、職権で日程を立てて審議を進め、強引ながらも衆院を通過させた。この予算の年度内成立をめぐる過程で国民民主党が要求をつり上げたこともあり、ある政権幹部は「国民民主党は信用できない」と話すようになったという。かつては連立の本命であったはずの国民民主党と官邸の間の溝は「かなり深くなっている」と大室記者は指摘している。
一方、高市総理の自民党内への向き合い方にも変化が見え始めた。会食嫌いを公言し、総理就任後も夜の会合をほとんど開いてこなかった高市総理が、4月21日に衆院予算委員会の理事らを総理公邸に招き、慰労会を開催した。
坂本哲志委員長と齋藤健筆頭理事への感謝の言葉から始まり、出席者の経歴などを事前に頭に入れ、一人一人に声をかけていたという。
これまで高市総理との関わりが薄かった出席者の一人は、「印象が変わった。女帝のイメージだったけど、気を遣う柔らかい方だと感じた。ああいう形でフランクに話せれば、高市さんの人間味も垣間見えると思った」と振り返った。
慰労会の2日後には、新人議員が集まる懇親会「鹿鳴会」にサプライズで登場し、激励や写真撮影を行ったり、5月以降には参議院予算委員会のメンバーや国会対策委員会の慰労会も予定されているなど、意識的に党内への働きかけを増やそうとする動きが読み取れる、と大室記者は話す。
長期政権のカギ握る「参院」と、動き始めた“議連構想”
長期政権を目指す上で、先述した体調のほかに、構造的な問題として立ちはだかるのが“参院の壁”だ。衆院では3分の2を超える議席を持つ一方、参院では依然として少数与党の状態が続く。当初予算も衆議院は3月13日に可決されたが、参議院では予算委員長ポストを野党が握っていることもあり、年度内成立が叶わず暫定予算を編成。無所属議員や日本保守党の賛成を得て4月7日にようやく成立した。
今後も重要法案の審議が控える中、参院での法案成立には野党の賛成を積み上げる必要があり、難しい国会運営が続くことになる。
こうした中、長期政権に向けた足元固めの動きも始まっているという。
安倍晋三元総理が長期政権を築いた背景には、保守系議員を中心とした議員連盟「創生『日本』」の存在があった。いま高市総理の周辺でも、議員連盟を立ち上げようとする動きが進んでいると大室記者は明かす。
この議員連盟を作る目的は、官邸と党の連携を強化し、高市政権が掲げる政策を推進しようというものだといい、高市総理に近い議員だけで固めるのではなく、自民党全議員に案内される予定だという。
そこで大室記者が注目するのは、この議員連盟の発起人に誰が名を連ねるか、ということだ。初会合は5月にも開かれる予定だとされているが、発起人には自民党幹部や大臣クラスのビッグネームが名を連ねると見られている。
一方で、そこに名前が載っていないことも意味を持つという。「純粋な勉強会ももちろんあるが、永田町では勉強会をただの勉強会と受け取る人はいない」と大室記者が話すように、この議連誕生が党内の政局に繋がる可能性もあるとみられる。
この議員連盟の誕生が、今後も続く高市政権の強固な基盤となるのか、新たな政局を生むきっかけとなるか、その行方が注目される。
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