
身体・知的・精神障害のある選手が野球をプレー
障害者野球チームの東京ジャイアンツを取材しました。パラスポーツのひとつ、障害者野球は選手が身体障害、知的・精神障害のある人に限られ、盗塁禁止、バント禁止、バッターの代走が認められるなど、当事者がプレーしやすい独特のルールがあるのが健常者の野球との違いです。
【写真を見る】障がい者がプレーする野球チーム・東京ジャイアンツ
日本身体障害者野球連盟のもとに組織され、地方大会から勝ち上がったチームが対戦する全国大会も毎年行われています。以前は公式試合の出場選手は身体障害者だけでしたが、現在は療育手帳をもつ知的障害者なども認められています。今年11月には「もうひとつのWBC」と呼ばれる世界大会が北九州市で開催されます。
東京ジャイアンツは障害者野球連盟に加盟するチームで、2001年に設立され、過去には関東大会準優勝、全国大会出場などの成績を残しています。「ジャイアンツ」という チーム名は当時の連盟理事長から「注目されるチーム名に」との言葉があり、プロ野球チームと同じでもいいと承諾をもらって名付けたそうです。本拠地は世田谷区にあり、現在、都内や神奈川県に住む18名の選手が登録されています。
特徴は野球未経験で参加する選手や、重度の障害のある選手が多い点にあるそうです。代表の滝本浩さんにチームの特徴について聞きました。滝本さん自身、左半身に障害がありチーム最年長の登録選手です。
「東京ジャイアンツ」代表・滝本浩さん
『いろんな障害持ってる方がうちのチームいるので、身体障害でも軽い子もいれば重たい子で、足があまり動かない子とがいたりするので、その中でいろんな特徴を持っている選手たちをいかにコーチとか監督が生かしてチーム編成して楽しくのびのびできるようなチーム作りを目指しています。そういう中で、関東大会とか、全国大会にいった時にはいいプレーをしながら勝てるように頑張って、日々練習に励んでいます』
それぞれがやり方を見つけて
東京ジャイアンツの練習を見て、野球をする楽しさを第一にしていると感じました。取材した4月中旬に横浜市内の野球場で行われた練習は、東京ジャイアンツの選手8名が参加、別の障害者チームとの合同練習でした。準備運動から始め、キャッチボール、シートノックなど、健常者の野球と変わらないメニューで進みます。
選手の障害は腕や脚、半身の障害や知的障害など、さまざまです。選手のサポートについて、どんなことに留意しているか、副代表の西尾健大さんに聞きました。西尾さんは学生時代に野球経験があり、現在は特別支援学校の教師をしています。
「東京ジャイアンツ」副代表・西尾健大さん
『投げるだけ、打つだけ、捕球だけならば練習すればできるようになるんですけど、個別に配慮することが違うので、まずは安全が第一、その上で彼らが持ってる能力の中で、こうすればうまくいくんじゃないかっていうのを見つけて、支援していく形ですね。こういう時はこうするっていうのを、実演もしながら丁寧にやっていくことで、時間がかかるんですけど、彼らがだんだん野球が上手くできるようになればいいという思いで私たちはやってます』
スタッフがそれぞれの選手に細かいケアをしながら指導するのは大変ですが、選手も自分のやりかたを見つけて野球に適応し練習していました。
障害のある選手がチームで野球を行うねらいとは
練習の最後はふたつのチームに分かれ試合に近い形式で行われました。ピッチャーの投球を打つのではなく、バッティングティー(ボールを置く台)を使用してノックのように打つ形式です。
ヒットが出やすい形式で、守備面では強いボールの捕球や遠投、攻撃面では走塁がうまくいかない場面もありましたが、打者は外野フェンスに届く長打、守備ではダブルプレーなど、すぐれた野球センスを見せる選手も多かったです。
そして選手たちが全力でプレーしているのが分かりました。5イニングの試合形式で、得点は15対16のサヨナラ、劇的な終わり方でした。
なによりベンチから声が出て、笑い声も絶えないのが印象的でした。選手たちは、チームで野球することをこう語っています。
15歳の選手
『今15歳です。おじいちゃんが野球を見ていて、自分もやりたくなって始めた感じです。このチームは多種多様な障害を持ってる人がいる中で、みんなで障害を理解しながら野球を楽しむところがとてもいいなと思いました。僕自身も、まずは自分の弱みを知って、それをこのチームで改善できるようにしていきたいです』
21歳の選手
『今、21です。8年ぐらいこのチームでやってます。元々ソフトボールをやっていて、その時のチームのコーチから勧められててジャイアンツに入りました。入った頃はピッチャーがいなかったので、自分がピッチャーをやることが多くて、その面でチームの役にたったのかなとは思ってます。試合に勝ったら嬉しいですけど、試合に負けてもこのチームはいい意味で明るくて、いやすいチームだと思います。今、会社に入ってるんですけど、野球でつちかったコミュニケーション能力だったり、学んだことは会社でも生かされているなと実感して、肌で感じています』
勝敗より大事なこと
都内を拠点にするチームのため、練習用のグラウンドを確保するのが難しかったり、試合時のボランティアの不足など苦労もあるそうですが、スタッフは試合の勝敗より、野球を通じて社会性を身につけることを大切にしていると強調していました。練習や試合を通じて、選手が障害のためにネガティブになる部分を克服する力を育てることを目的にチームを運営をしているそうです。 監督の松前利明さんはこんなふうに話しています。
「東京ジャイアンツ」監督・松前利明さん
『障害者とか関係なく、野球の本質のところで楽しむことですから、勝った負けたではなく。そういう意味では子どもたちの笑顔が見れればそれでいいと思います。特に若い子が多いんで、やはり社会性を身につけること、そして、ここが学校や、家庭の次の居場所っていうふうになれば一番いいと思ってます。』
昨年の夏の甲子園で、岐阜商業の生まれつき左手の指のない横山温大選手が活躍したように、健常者の野球に障害のある選手もまじってプレーしています。東京ジャイアンツの取り組みは野球に興味のある障害者を参加しやすくし、選手層の裾野を広げるのに成果をあげていると感じました。障害者野球に興味を持った方はまず東京ジャイアンツの練習や試合を見学するのもいいと思います。
東京ジャイアンツの今後の予定
5月3日(日)三ツ池公園 軟式野球場 練習試合予定 15:00~18:00
5月9日(土)保土ヶ谷公園 軟式野球場B面 練習 15:00~18:00
5月17日(日)保土ヶ谷公園 軟式野球場A面 練習 11:00~15:00
5月24日(日)保土ヶ谷公園 軟式野球場B面 練習 11:00~15:00
6月6日(土)、7日(日)第4回 福本豊杯争奪 東日本身体障害者野球大会
(TBSラジオ「人権TODAY」担当:藤木TDC)
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