
増加の一途をたどる“ニセ警察詐欺”などの特殊詐欺。その拠点がいくつもあるとされるカンボジアに渡航した福岡県内の学生などおよそ10人が行方不明になっています。私たちは、カンボジアの詐欺拠点にいた日本人の証言を独自に入手。詐欺組織の“暴力支配”の実態に迫ります。
【写真でみる】脱出を試みると「中国人30人ほどに確保されボコボコにされた」詐欺拠点の“暴力による支配”
「あなたの電話は乗っ取られています」女性のもとにかかってきた詐欺電話
2026年1月、70代の女性のもとに、不安をあおる電話がかかってきました。
詐欺電話を受けた女性(70代)
「『あなたの電話は乗っ取られています」』と『2時間後に使えなくなりますから、警察に誘導します』と言われた」
電話は、実在する会社を名乗る自動音声でした。女性は本物だと信じ、言われるがままLINEのビデオ通話をすることになったといいます。
詐欺電話を受けた女性(70代)
「若いお兄ちゃんが出てきて、LINEの映像で警察手帳を見せられた。(場所は)イスとテーブル、警察署に見えた」
ビデオ通話などで警察官だと信じ込ませ、カネをだまし取る“ニセ警察詐欺”の被害は、2025年1年間で985億円以上。極めて深刻な事態となっています。女性は、“ニセ警察官”に個人情報や口座の残高などを伝えてしまったといいますが、途中で不審に思い、最悪の事態は回避しました。
詐欺の“発信源”にはニセのセットや制服 日本人の名簿も大量に
“ニセ警察詐欺”を仕掛けているのは、何者なのか…。
村橋佑一郎記者
「高い壁を抜けると、中に詐欺拠点の建物がいくつも並んでいます」
JNNのカメラが入ったのは、カンボジアにある詐欺拠点の内部。1万人を超えるメンバーが、共同生活をしていたという大規模拠点です。ここに、さきほどの女性の個人情報などが書かれたメモが残されていたのです。
この拠点が“ニセ警察詐欺の発信源”だったとみられ、他にも、詐欺電話をかけるための日本人の名簿などが大量に置かれていました。
詐欺電話を受けた女性(70代)
「信じられない。カンボジアまで行っている」
実際、拠点内部には…
村橋記者
「こちらの部屋は、中国の警察署を模したニセのセットだということです」
各国の警察署を模したニセのセットや制服などがいくつもありました。世界中を標的に“ニセ警察詐欺”を働いていたことがわかります。
さらに、私たちは警視庁の捜査関係者への取材で、カンボジアの詐欺拠点にいた複数の日本人の証言を独自に入手しました。
証言から見えた「暴力による支配」 脱出を試みると「中国人30人ほど確保されボコボコに」
10か月間かけ子をさせられた20代の女性Aさん。Aさんは、SNSの高額アルバイトの募集に申し込み、指定されたカンボジアに向かったといいます。しかし、案内された先は…
カンボジアで詐欺 Aさん(20代)
「有刺鉄線が巻かれている、高い塀に囲まれた建物で、セキュリティーが数人、ドーベルマンのような番犬もいた」
拠点では、他の日本人9人とともにかけ子をさせられたAさん。それを仕切っていたのは…
カンボジアで詐欺 Aさん(20代)
「ボスとみられるのは中国人夫婦だった。詐欺のストーリーを考える『先生』と呼ばれる中国人がいた」
私たちが入手した証言では、7人のうち4人が「指示役は中国人だった」という趣旨の話をしています。
同様に、詐欺拠点に監禁されていたという30代の男性Bさん。Bさんは、SNSで知り合った知人から、「ホテルのレビューを書く仕事をやらないか」とカンボジアに誘われ、現地に向かうと…
事務所にいた日本人
「お前は騙されたんだよ。ここで1年間働いてもらう」
拠点では、日本人30人ほどが、かけ子として働かされ、1日14時間も電話をし続ける生活だったといいます。
カンボジアにいたBさん(30代)
「見張り役がいて居眠りした場合は罰金。2度目からはスタンガンを当てられていた」
カンボジアに来て3日目、Bさんは知人と共に脱出を試みますが…
カンボジアにいたBさん(30代)
「別の建物の屋根に飛び降りたところ、音で気づかれて、中国人30人ほどに確保され、素手や棒でボコボコにされて意識を失いかけた」
さらに、こうした“恐怖支配”によって命を落とした若者がいることも明らかになりました。
カンボジアで遺体となって発見された韓国人大学生 薬物強要も…
2025年8月、カンボジアで遺体となって発見された、韓国の大学生、キムさん(仮名・22)。
――これは何の写真?
カンボジアで息子を亡くした父親
「軍隊を退役したばかりの頃の写真。悔しい、若いのに何も成し遂げられず…」
キムさんを殺害したとして起訴されたのは、詐欺組織のメンバーとみられる中国人の男らでした。キムさんの身に何が起きたのでしょうか…
カンボジアで息子を亡くした父親
「もともと学校で、ドイツに研修に行くと言っていて、後で調べたらカンボジアに行ったらしい」
知人から、「口座を買い取ってくれる人がいる」と誘われ、お金のために軽い気持ちでカンボジアに渡ったというキムさん。
父親のもとには、キムさんから送金を求める電話が来るようになり、その後、詐欺組織の人間からもお金を要求する電話がかかってくるようになりました。
詐欺組織から父親への電話
「(息子が)トラブルを起こしたから、解決すべきだろう」
ときには、電話の向こうで暴行するような音が聞こえてくることもあったといいます。さらにキムさんは、拠点の中で薬物とみられるものまで強要されていました。
SNSより
「殺す前に吸え!早く、もっと強く」
その後、家族のもとにカンボジア政府から送られてきたのは、火葬をおこなうための書類。
死亡診断:心臓麻痺(拷問による激しい痛みのため)
逃げ場のない詐欺拠点で、22歳の若者の命が拷問によって奪われたのです。
カンボジア当局は、2025年から大規模な摘発を続けていますが、いまも多くの日本人や韓国人が拠点に取り残されている可能性があり、対応が急務となっています。
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