
東京・新宿のトー横など、繁華街の一角に集まった少女たちが犯罪に巻き込まれるケースが相次いでいる。なぜ、少女たちは非行に走るのだろうか。
【写真を見る】非行が低年齢化 “居場所”を求め公園をさまよう少女たち
非行が“繫がり”に…公園をさまよう「警固キッズ」
九州最大の繁華街、福岡市・天神にある「警固公園(けごこうえん)」。日中はのどかなこの場所も、夜になると姿は一変する。
どこからともなく集まる若者たち。手にはタバコ。酒を飲む姿もみられる。
公園の名前にちなみ、彼らは「警固界隈」「警固キッズ」などと呼ばれている。
公園に集まる理由について聞くと…
警固公園に集まる若者
「親に暴力されて、『出て行け、死ね』って言われたりして」
「家庭環境、同じ人が多い。居場所ないから来てる」
家や学校には居られず、公園が唯一の居場所だと語る少女たち。その体には、リストカットの痕が。
少女
「昨日しました。いじめが原因です」
20代の女性
「中学2年生から10年間。身内からの性的被害と親からの虐待、学校のいじめが全部重なっている。これ(リストカット)をすることでしか、発散方法がない」
公園に集まる少女たちが現実から逃れるためにしていたのが、市販薬などを過剰摂取する「オーバードーズ」だ。
少女
「週3、多いときは毎日。病んで現実逃避、依存してます」
薬が効いて、寝転がる少女の姿も。
公園には似たような境遇の少女たちがSNSなどを通じて集まっているが、お互いの本名は知らない。
緩やかな関係の中で、非行が繋がりになっている。
“小5で初めてパパ活” さまよう少女たちの低年齢化
警固公園で夜回り活動をするNPOあいむの藤野荘子代表(33)。
少女
「別れたの。どうしたらいい?」
NPOあいむ 藤野荘子 代表
「男と別れたぐらいで大丈夫、人生の危機じゃないから」
3年前から警固公園を訪れ、悩みを聞いている。
もともと不登校児の家庭教師をしていたが、待つだけでは支援が必要な子どもに繋がらないと感じ、若者たちの支援を始めた。
藤野さんは今、ある変化を感じている。
NPOあいむ 藤野荘子 代表
「3年前は年齢が低くても、中3ぐらいしかいなかった。今は中1、時々小学生も来ている。低年齢化している」
実際、話を聞いても…
少女
「13歳、中学1年生です」
「今、中1です。去年小学生、12歳です」
「(Q.学校行ってる?)行ってない。友達がいない、ここで友達を作る」
そんな少女は…
少女
「(Q.お金ってどうしてる?)金ですか?前まではパパ活してたんですよ」
パパ活とは、男性とデートや性行為をする見返りに、お金をもらうことだ。
――何歳から?
少女
「小学5年生の時に初めてしました。小5だったら、3(万円)ぐらい取りたい」
少年・少女の犯罪相次ぐ 「捨て駒みたいに…」美人局の実情
ここ数年、福岡市内では、少女が犯罪に巻き込まれる事件が相次いでいる。
2023年6月、警固公園で知り合った少年らが少女を使い、パパ活を装って呼び出した男性に暴力を加え、現金を奪う「美人局」と呼ばれる手口で逮捕。
2025年6月にも、17歳の少年と16歳の女子高校生が男性を暴行して現金を奪い、強盗傷害容疑で逮捕された。
公園で知り合った少女と美人局をしたことがあるという少年が、その実情を語った。
美人局をしていた少年
「女の子たちもお金に困ってる子が多いし、メンタルも弱いし、家に帰ってない子が多い。オーバードーズ、薬を買うために、パパ活案件を受けたりするのも多かった。
『お金もらえるけど、美人局やらん』って『やりたい』って感じで乗ってくる。捨て駒みたいな感じで使ってました」
警固公園周辺で補導された少年少女は、2024年は449件。3年前の2021年の289件と比べ、1.5倍以上に増えている。
福岡県警少年課 的野史孝 課長
「中身の実態がよく知りづらい。昔だったら近寄れば、警察のおじちゃんみたいな感じで距離が詰められたが、そういった部分は難しさを感じてます。
警察だけではなく行政機関、医療、NPO法人が連携しないと対応できないと今感じてます」
家族の代わりに「SOSを出せる人の存在が」 少女たちに必要なこと
16歳の頃から警固公園に通っていたというAさん(19)。藤野さんに声をかけられたことがきっかけで、今も支援を受けている。
両親が離婚し、生まれた直後から施設で暮らしていたAさんは、中学卒業後、グループホームに入所。だが、うまく馴染めず、警固公園を訪れては非行を繰り返していたという。
Aさん
「みんなでお酒飲んだり、自分と似たような人ばかりいた気がする」
当時は生活する金を得るため、犯罪に手を染めることもあったという。
Aさん
「女の子と2人で(パパ活の)募集して、その人が風呂入ってる間にお金だけ取って逃げる」
Aさんは小学3年生の頃、一度母親のもとで暮らしたことがあった。だが、日常的に暴力を振るわれ、半年足らずで施設に逆戻り。その後、うつ病を発症し、精神科の入退院を繰り返すようになった。
Aさん
「小学6年生ぐらいから(腕を)切り始めた。イライラするけど、どうしようもない。自分だったら誰にも迷惑かけない。面倒くさい、生きるの。死ねるならすぐ死にたい、今でもそうかも」
現在は生活保護を受けながら、福岡市内のアパートでひとり暮らし。その部屋はゴミであふれかえっていた。
藤野さんのNPOでは、これまで延べ5000人以上の若者たちと繋がってきた。そのうち、面談など個別支援に至るケースは200人にのぼる。
頼る身寄りのないAさんを、藤野さんはいつも家族の代わりになって支え続けている。
NPOあいむ 藤野荘子 代表
「彼女は自己肯定感も高くないし、自分が大切にされる経験をあまりしていないので、SOSを出せる人、自分を見てくれる人の存在は必要なんだろうなと毎回感じる」
少年院の収容者 減少から一転…
社会に居場所をなくし、非行を繰り返してきた少女たちが共同生活しながら教育を受ける場所、それが少年院だ。
香川・丸亀市にある女子少年院「丸亀少女の家」。
2000年以降、少年院の収容者は全国的に減少の一途を辿ってきた。だが、3年前から増加に転じ、2025年は1900人あまり。「丸亀少女の家」でも倍近くに増えている。
丸亀少女の家 須藤隆行 院長
「ここ数年、10名前後で収容は落ち着いていたけれども、2025年は1年を通じて、20名前後で推移」
年齢は14歳から20歳まで。そのうち15歳以下が3分の1を占めている。
「シラフだと生きてるのがしんどい」違法薬物にも手を染めた少女の本音
少女たちはどのような罪を犯してきたのか。特別に話を聞くことが許された。
少女(15)暴行
「暴行です。(児童相談所の)職員と揉めて胸ぐら掴んだ」
――少年院送致、言われてどう思った?
「大袈裟みたいな」
――嫌だなとかショックだなとか?
「あまり思わなかったかも。知らないところ行くの楽しみじゃないですか」
小学生の頃からいじめに遭っていたという少女(15)は、居場所のない若者たちが集まる大阪・ミナミの「グリ下」に通い、そこで知り合った仲間と非行を繰り返していたという。
少女(15)暴行
「めっちゃ楽しかったです。辛いこと考えてる暇ないから、塗り替えられたみたいな感じ」
少女(15)が書いた文章
「居場所がどこにもなかった。『グリ下』ならこんな自分でも友達ができるかもって思った」
「たくさん友達ができて、たくさん好きが増えて、すごく幸せになれた」
「よろこんでほしいから、頼まれたことは全部した」
これは、自分の過去を振り返る課題で少女が書いた文章だ。
少女(15)暴行
「一体感が生まれる、悪いことしてると。仲間意識が強まるんです。新しい子はどんどん染まっていくから危ない」
SNSで呼び出した男性を脅し、仲間たちと金を奪う「美人局」をして収容された少女もいた。
少女(18)恐喝
「最近流行ってるし、やってみようみたいな感じのノリで始めて」
――抵抗なかった?
「なかったですね、失敗したらまあいいかみたいな」
違法薬物にも手を染めていたという少女は、家庭に大きな問題を抱えていた。
少女(18)恐喝
「お母さんが覚醒剤とかで4、5回捕まってる。(自分は)施設でずっと1歳から生活してきていて、シラフだったら生きてるのがしんどいし、明日来るのが嫌だからクスリを使う」
“自分の気持ちをうまく言葉にできない”少女たちのプログラム
こうした少女たちの更生に向けて、女子少年院で取り組んでいる「アサーション」というプログラムがある。「アサーション」とは、相手のことを尊重して意見を伝えるコミュニケーションスキルのことだ。
教官
「自分の伝えたいことをうまく伝わらなかった時も、それぞれあるかなと思うんですけど」
少女1
「イライラしたとき全部言っちゃう、駄目なことでも。『逃げてんちゃうぞ』とか」
少女2
「最近担任が面接に来なくてムカついてるけど、『来てほしい』って素直に本人には言われへん。こっちも素っ気なくしちゃう、本人の前では」
自分の気持ちをうまく言葉にできず、人とぶつかったり、トラブルに巻き込まれたりしてきた少女たちに、適切な表現力を身につけさせるのが狙いだ。
新沼美奈子 法務教官
「どちらかというと非主張的、なかなか自分の思いを喋れなかったり、思っているけど言葉にできなかったり、相手を見て顔色を窺っているのはある。指導の入りづらさはすごく感じる」
小学生のすぐそばに“過激な情報” 予防教育に取り組む元警察官
地域から非行をなくすために活動する人がいる。
福岡県内の小学校で、子どもたちに語りかける元福岡県警の警察官・安永智美さん。
かつては少年を取り締まる側にいた安永さんは、若者たちを被害者にも加害者にもさせたくないという思いから、相談支援などに携わる警察の専門職・少年補導職員に転身。
安永さんは非行を防ぐためには、早期の予防教育が重要だと考えている。
安永智美さん
「寝た子を起こすなという意識を持った大人がいますけど、小学校低学年でもスマホ持っていたら、性の過激な情報に晒されているのは間違いない。早い時期からの予防教育、先制活動だと思っている」
2024年、警察を定年退職し、現在は保護司をしながら、スクールカウンセラーとして各地の中学や高校で心のケアを行っている。
増え続ける「自殺願望」持った若者 どう向き合う?
今回、ある中学校のカウンセリングにカメラが入ることが許された。
この日、訪れたのは中学2年生の少女。同級生からのいじめがきっかけで、今も死にたい気持ちが湧き出てくるという。
安永さん
「今どう、夜は寝れてる?」
中学2年生の少女
「うん」
安永さん
「食事は?」
中学2年生の少女
「うん」
安永さん
「今日もちょっとコンディション計ってみてもいい?」
中学2年生の少女
「うん」
相談に来る少女たちの多くは、自分の気持ちを言葉にすることが難しい。安永さんはいつもカードを使って、その日の状態を確認する。
少女が選んだのは、どれもネガティブな言葉のカードだった。
安永さん
「こういう経験があるの?悪口を言われた?陰で?」
中学2年生の少女
「急に『死ね』とか書かれて」
安永さん
「当時相談できたの、誰かに?」
中学2年生の少女
「友達」
安永さん
「今学校に来ると、また消えてしまいたくなるという気持ち、はっきりと自分でもわからない?」
中学2年生の少女
「うん」
安永さん
「何となく気持ちがムクムク出てくるっていうことなの?」
中学2年生の少女
「うん」
自殺願望のある若者のカウンセリングは、1年半で8件と増え続けている。
安永さんは少女の状態を慎重に見極め、休むように伝えた。
「自分のことを大切にしてほしい」性的非行に走る少女への思い
少女たちの中には、虐待などの辛い経験から自分を大事にできず、性的な非行に走るケースも少なくない。
次に訪れた中学1年生の少女は、自傷行為がもとでカウンセリングを始めたが、のちに不健全な性行為に及んでいることがわかった。
安永さん
「前回、別に好きでもない人とエッチしたって言ってたじゃないですか?」
中学1年生の少女
「この前、誘われたんですよ、そいつから」
安永さん
「ほら言ったやろ、ぜったい来るよって。もう1回やらせてくれると思うから」
中学1年生の少女
「(自分は)そんなガッツリ言えないタイプ」
安永さん
「そこのハードルを上げていきたいなと思う。自分のことを大切にして欲しいから。今、性行為したらその後、どういうことが自分に降りかかってくるか、これからも一緒に考えていきたいなって思うよ」
この日、安永さんは命の大切さを伝えるため、地域にある別の中学校で講演を行った。
安永さん
「SNSの中傷・誹謗、目を背けたくなるような暴言の数々、下着を脱がして動画で晒すことまで、性犯罪も受けてました」
講演では性に関する踏み込んだ話も。
安永さん
「射精をする前に外で出せば大丈夫だと思う、それアウトですからね。妊娠はします。あなたのすべてを、この小さな命に捧げるなんてことは、中学生のみんなが背負えるのか。中学生の時しかできないことをいっぱい楽しむことが、みんなの責任であり権利なんです」
「大事な知識は無いのに性的な行動だけして、被害者になった、加害者になった。大人はびっくり。性の問題は他の非行問題と違って、すべての子供は避けては通れない。家庭からもしっかりと、幼少期から始めてほしい」
家出が増える年末年始 必要な支援とは
年が明けた1月中旬。若者たちの居場所になっている福岡市の警固公園には、多くの少女が集まっていた。
そこには、お菓子を配りながら声をかけるNPOあいむの代表・藤野さんの姿もあった。
――冬も来るんですね、警固?
NPOあいむ 藤野荘子 代表
「夏前よりは少ないですけど、いますね、常に誰か」
藤野さん
「●●ちゃん知ってる、警固の子で?」
少女
「はい」
藤野さん
「最近見た?」
少女
「児相(児童相談所)に行った」
年末年始は1年で最も家出が多い時期だという。藤野さんのもとにも、保護者や警察から毎年相談が入ってくる。
NPOあいむ 藤野 代表
「今年は一番多かった、4、5件ありました。公的機関、他の相談機関が休みが多いので、開いている『あいむ』に相談が来る」
今も公園には自分の居場所を求め、多くの若者たちが集まる。
今後の支援の在り方について、藤野さんはこう話す。
NPOあいむ 藤野 代表
「場所をなくすということでは解決しなくて、既存のセーフティネット、既存の相談窓口に繋がらない結果、家がしんどくて警固公園に来ている。ずっと見てくれる人、そばにいてくれる人が必要だと思っていて、そこに応えていきたい」
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