E START

E START トップページ > 国内 > ニュース > 「僕らは捕まらない」トクリュウ元幹部が語る戦慄の実態 幹部もトップの顔は知らず、闇バイトは「駒」・・・ピラミッド型の組織構造とは【報道の日2025】

「僕らは捕まらない」トクリュウ元幹部が語る戦慄の実態 幹部もトップの顔は知らず、闇バイトは「駒」・・・ピラミッド型の組織構造とは【報道の日2025】

国内
2025-12-29 06:00

「スマホ750台を解析」 実行役50人の先にいた姿なき首謀者たち

2024年の8月から11月にかけて首都圏で相次いだ闇バイト強盗事件。 


2025年12月、大きな動きが... 


記者
「容疑者を乗せた車が、警視庁新宿署に入ります」 


首謀者と見られる4人を逮捕。すでに実行役など50人以上を逮捕していたのに、この4人にたどり着くまで、なぜ1年以上もかかったのでしょうか。


警視庁 親家和仁刑事部長
「逮捕した実行役や関係事件の被疑者などから押収したスマートフォンなど、約750台の解析を行いました」


SNSで集められた実行役は、首謀者と顔を合わせることなく、秘匿性の高いアプリで指示を受け、犯罪に手を染めていました。


こうした集団を、匿名流動型犯罪グループと呼びます。略して「トクリュウ」。私たちは今回、その幹部と接触し、驚きの実態を知ることになりました。


「やられ名簿」をネタに詐欺 リーダーは会社で“お面” 

数か月前まで“トクリュウ”の幹部だった人物に、私たちは会うことができました。


トクリュウ元幹部
「自分がやっていたのは特殊詐欺。『やられ名簿』というのがあって、家族関係や仕事、資産がどれぐらい眠っているかが書いてあるので、それをネタに詐欺をしていた」


特殊詐欺をはたらく、トクリュウグループにいたこの男性は、実行役の闇バイトをSNSでリクルートしたと言います。その数、100人以上。


トクリュウ元幹部
「とりあえずひっきりなしに応募が来る形で、こっちでも捌けないぐらい、どんどん人が集まってきましたね」


トクリュウは匿名であることを徹底していたと男性は言います。このグループの実質的なリーダーがいつも身につけていたのは…


トクリュウ元幹部
「すごい方で、ずっとお面をつけているんですよ。会社の中で。僕たちにも顔を知られたくないんだなと」


顔も名前も明かさず、詐欺行為を繰り返すトクリュウ。


トクリュウ元幹部
「お互いに偽名で呼び合っていたので、僕も本名は一回も言ったことがないですね」


かつて反社会的組織といえば暴力団でしたが、こう切り捨てます。


トクリュウ元幹部
「ヤクザは儲かっていないし、ダサいなって。ちょっと馬鹿にした感じもありました」


傷害、恐喝、賭博…資金源を断たれた「暴力団」 

暴力団からトクリュウへ。勢力図は変わりました。


元山口組顧問弁護士 山之内幸夫さん
「(暴力団は)一時はすごい儲けた時代があるんですけどね。バブルの時は」


かつて30年もの間、日本最大の暴力団・山口組の顧問弁護士を務めた山之内幸夫さん。


トクリュウとは違って、暴力団はカメラの前で姿を晒すことに抵抗がありませんでした。山口組は対立する組織と史上最悪と言われる「山一抗争」を引き起こします。


それは、組長が暗殺される事態にまでエスカレート。


山口組組員
「おれは命ある限り相手を殺す。それだけや」


罪を犯した組員は、それが組のためならば、出所後に組織での厚遇が約束されました。そして、抗争で力を伸ばした暴力団は次に「経済力」の獲得に躍起になったといいます。


元山口組顧問弁護士 山之内幸夫さん
「民間経済の中に暴力団がしのぎ(資金獲得)の手を伸ばしていった」


昭和の末期、暴力団による犯罪は傷害、恐喝、賭博が半数以上を占め、詐欺は5%にとどまっています。


【1984年に検挙された暴力団関係者】(警察白書より)
▼傷害:28%
▼恐喝:15%
▼賭博:14%
▼暴行:12%
▼窃盗:9%
▼詐欺:5%
▼その他:17%


当時、彼らが大きな資金源としていたのが、取り立てや地上げなど、いわゆる民事介入暴力。市民への脅威が増大する中で、警察がこのまま黙っているはずはありませんでした。


警察庁 石附弘捜査二課長
「今回、上手く我々の考えていることが実現すれば、暴力団の弱体化が図られるのではないかと」


1992年、「暴力団対策法」が施行。「みかじめ料」の要求や取り立て、地上げを禁止し、資金源を断たれた暴力団は、窮地に立たされました。


そして抗議デモという、およそ似つかわぬ行動に出ます。


抗議デモに参加する人々
「暴力団とヤクザは違います。本当の暴力団は自民党だ」


変貌する裏社会の勢力図 暴対法がもたらしたもの 

かけ声も虚しく、その勢力はピーク時の5分の1にまで落ち込みました。


警視庁の元幹部は、暴対法の施行がターニングポイントだったと振り返ります。


元警視庁 警視 櫻井裕一さん
「暴力団員は携帯は契約できない。アパートも借りられない。そういう締め付けがいっぱいあるんですよ。銀行口座も作れない」


警視庁で約40年、組織犯罪対策に当たった櫻井裕一さん。暴力団が鳴りを潜めると、異なる性質の犯罪が増えてきたと言います。


元警視庁 警視 櫻井裕一さん
「昔はオレオレ詐欺から始まっていますよね」


オレオレ詐欺をはじめとする詐欺が急増。警察の取り締まりで一旦沈静化するも、数年前からまた増加しているのです。


その原因こそ、トクリュウです。


実行犯の振る舞いは凶暴化していきます。2023年1月、関東で窃盗や強盗事件が相次いで発生しました。襲われ、命を奪われる犠牲者も…


裏で指示を出していたグループは遥か遠く、フィリピンにいました。


ここから電話で特殊詐欺をはたらいていたのです。


詐欺グループのメンバー
「お電話このままでお待ちいただいてもいいですか。特殊詐欺対策課のほうのプッシュ回線に繋がりますので」


グループを率いていたひとりが、今村磨人被告。通称「ルフィ」。


今村磨人被告
「本当だという情報が、本当だということを確認してください。これで日当で1万出します」


彼らこそ、警察が初めて「トクリュウ」と呼んだグループです。今村被告らのグループは検挙され、壊滅に至りました。しかし、トクリュウによる事件は後を絶ちません。


トクリュウによる犯罪は、なぜ止まらないのか。理由は、その特殊な組織構造にあったのです。


僕らで捕まる人はいない」ピラミッド型の組織構造とは 

暴力団と違い、匿名性の高い組織構造こそがトクリュウの強みだと元幹部は言います。


トクリュウ元幹部
「大元が『オーナー』と言われる人がいて、その下に『番頭』。僕はその下の『第4線』という現場を統括する人間」


「番頭」と呼ばれる人物は、いつも「お面」をかぶっていたそうです。


その下にあるのは「第1線」から「第4線」でなるピラミッド型の組織構造。男性がいた第4線が、採用活動などを行う「現場の責任者」。その下に詐欺収益の回収役。詐欺電話の「かけ子」と続き、最下層が…


トクリュウ元幹部
「『第1線』が使い捨ての闇バイトで来るような子たち。切り捨ててもこっちの正体もわかってないし、完全に『駒』」


暴力団の場合、末端の組員による犯罪でも「使用者責任」を問われ、組長の摘発に繋がります。


一方のトクリュウは、組織の幹部ですらトップの顔も分からず、末端を駒として使い捨てにする。元幹部の男性は、上層部に捜査の手が及ぶことはないと話します。


ーー第4線で捕まった人はいなかった?


トクリュウ元幹部
「いないですね。僕らで捕まる人間はいないと思いますね、警察に。それだけ下にも名前もばらしていないし。僕らで捕まらないぐらいだから、もっと上の『番頭』とか『オーナー』は捕まえられないんじゃないかな。捕まるのはやっぱり『第1線』の受け子・出し子なので、僕らに被害はないだろって高をくくっていましたね」


元幹部の言うように、少年院には報酬に釣られて“捨て駒”にされた若者が大勢いました。


詐欺に加担した少年A
「目先の報酬に目がくらんでしまって」


詐欺に加担した少年B
「あまり何も考えていなかったかもしれない。『ごめんね』ぐらいに思っていました」


2024年、トクリュウが関与したとみられる事件で、1万人以上が摘発されています。


トクリュウ元幹部
「今後10年20年30年先もずっと、こういうことはあるんやろうなと思いますね。警察もどこまで追えるかわからないですけど、大元を潰さないと絶対になくならないと思います」


摘発されたメンバーのうち約9割は末端の実行役。指示役や首謀者はわずか約1割にすぎません。


「インフルにかかる人・かからない人の違いは?」「医師はどう予防?」インフルエンザの疑問を専門家に聞く【ひるおび】
【全文公開】“ラブホテル密会” 小川晶・前橋市長の謝罪会見【後編】「どちらからホテルに誘うことが多かった?」記者と小川晶市長の一問一答(9月24日夜)
「あんな微罪で死ぬことはないだろう…」逮捕直前にホテルで命を絶った新井将敬 衆院議員「この場に帰って来れないかもしれないけども、最後の言葉に嘘はありませんから」【平成事件史の舞台裏(28)】


情報提供元:TBS NEWS DIG Powered by JNN

ページの先頭へ